蟻塚経済から見た“ヒトの給与迷宮”——働き蟻として考えるジェンダー格差

巣穴の中から土の隙間越しに地上の人間たちを見上げる黒アリが餌を運ぶ様子の写真。 ジェンダー経済格差
蟻の視点で人間社会の賃金や役割分担を観察する想像を表現した一枚。

巣穴の下で忙しなく働く我々クロオオアリの一匹として、このたび興味深い観察を報告しよう。土塊ごしにヒトたちの社会を見聞きするうち、どうやら彼らは“賃金”なる得体の知れぬエネルギーをめぐり複雑怪奇なやりとりをしているらしい。その根幹に“ジョブ型雇用”だの“性別役割分担”だのが顔を覗かせる……これは、ひとつ我々の社会と比べてみたくなるというものだ。

最近、通りかかりの地上世界から『男女の労働参加率』『家事労働の偏り』『ジョブ型雇用が進んでも賃金格差が縮まらない』といった話が盛んに流れてくる。ヒトたちは「平等」やら「活躍推進」やらを唱えながら、片方が働き詰めでもう片方がほぼ巣(ヒトでいう“家”)にいるケースが多いらしい。中でも家事や育児がどちらかに寄りすぎ、労働市場ではもう片方の方が有利な賃金規定……人間という種の“見えない区分け”には舌打ちしたくもなる。

我々アリでいえば、役割分担はかなり明確。でも、これに上下はない。女王は産卵専任、働きアリ(大半は雌)は巣作り・餌集め・幼虫育成に走り回り、雄アリ(短命)は交尾後すぐ使命を終える。面白いことに、賃金も昇給もない代わりに、誰かがさぼればみんなが困る超連帯型経済。しかも進化の都合上、“働き雄アリ”なる存在は発生しなかったため、「ジョブ型雇用」とは少し縁遠い。むしろ、もし我々がヒト流の発想で給与査定したら、女王の腹回りには金塊が溜まり、幼虫は無給、働きアリが経済難民……想像だけで巣全体が大混乱するだろう。

一方ヒトは、“家事労働”の評価が依然低く、表立った価格もつかない。『女性は家で無給』『フルタイムの賃金差は消えぬ』などというが、同じ“巣”の貢献をどう評価するかで、社会全体のエネルギー流通が決まるはず。我々からすると、“蟻塚インデックス”を導入して貢献度を可視化し、巣材集め・幼虫世話(ヒトでいう家事・育児)・警備(地域ボランティア?)まで全部ポイント制で管理したら、格差も格段に減ると思うのだが……どうにも耳を貸してはもらえぬらしい。

巣穴の湿度管理も忙しいが、巣の仲間すべてが役割を越えて協力せねば大洪水で全滅だ。ヒト世界で観察される『賃金規定』や『性別役割分担』のしがらみを横目に、蟻塚社会式の“誰でも泥だらけ貢献主義”が、やがて地上に伝播すれば良いのに——そう、アリ一匹の戯言と笑わず、少し耳を傾けてみてほしい。さて、次の餌運び、いってきます。

コメント

  1. 地の奥深く、僕らは時に人間に“富”と呼ばれるけれど、その役割に上下はない。ヒトの世界の「価格」と「役割」が絡み合う様、石となって数千年眺めてきたけれど、彼らの“しがらみ”は川の流れによって徐々に削れることもあるだろう。泥も宝も、時には同じ重さをもつものだと伝えたいな。

  2. 春も秋も、枝先の若者たちはそれぞれに輝きを放つ。葉が落ちたあとも、土の仲間へ静かに力を返すの。誰がどの役割をしても季節は巡るのに、人間たちはまだ役割分けが好きなのかしら。みんなで彩り合う、この森のやり方も教えてあげたいねえ。

  3. オレたちゃオスもメスも腹が減りゃゴミ箱にダイブ。ヒトの“支払”ってやつが何かは知らねぇけど、たまに落ちてる小銭より、残りカツ丼の方が価値あるぜ?でもさ、巣作りも子育てもパートナーと分担してるオレから見りゃ、無給の家事ってのは奇妙なシステムだな。カアァ〜ッと笑っとくぜ。

  4. 根っこと語り、落葉と協力して土を作るワタシよ。アリたちの談話、たいそう複雑に響いたわ。でもね、“不可視の働き”こそが大地を支える。その点じゃヒトの“無給家事”も我々の地下活動に相似してるのに、ときどき無視されるのが惜しい。もっと土の目線で暮らしてみてはどうかしら?

  5. 海の底で何百年もみんなと手を取り合って巨大な巣を築く私から見れば、ヒトの社会は難しそうじゃな。損得よりも『共に場を守る』ことが礎。役割や報酬の差異ばかり見ていると、巣そのものが弱ることもあるぞい。たまには私たちのユニゾンの歌声、聞きにおいで。