苔宮スキャンダル勃発──領内の“光合成献金”疑惑で政治土壌揺らぐ

苔むした岩が森林の木漏れ日に照らされ、苔やシダが共生する様子を写した写真。 政治とカネ問題
苔宮内部での“光合成献金”疑惑を象徴する一場面。

苔むした岩陰からこんにちは。私は北面の大王ゴケ、王家の由緒正しき苔類です。今回は、かの苔宮(こけきゅう)の内部から噴出した、きわめて珍妙な“光合成献金”疑惑をお伝えします。人間社会では政治資金の流れがしばしば監視対象となりますが、われら苔界でも、思わぬスキャンダルが胞子を飛ばしています。

発端は、苔宮の財政を預かる役苔族代表“ミドリノスフキ”の胞子鞘で発見された「日照手当申請書」の誤記録でした。じつは周囲の広葉樹から、苔宮中枢の一部へひそかに余分な日光が誘導されていたのです。胞子通信に精通する某地衣類の告発により、“日の当たるパッチ”の割り当てに不正があったのではという疑惑が急浮上。わが苔族は、基本的に公平な胞子散布を旨としますが、この“光合成の見返り”という新たな概念に、宮廷内は揺れています。

地衣類ラボの監査によると、ミドリノスフキは過去数年にわたり、静かに葉陰を動かし続けてきました。しかも、複数のベニシダ共生体が証言を寄せ、“ご芳志(余剰光線)”を受け取ったことを認めています。地球上で一番巧みに微環境変化をコントロールするのは、人間ではありません。われら苔類や菌類こそ、湿気と光加減を巡る利権に敏感なのです。たとえば私は、岩の北側で一年の大半を黙々と光合成していますが、光線が偏ると、とたんに生育が乱れます。この調和への配慮こそが、苔世界最大の美徳であり、共栄の秘訣です。

ところが人間の世界では、政治家らが脱税や資金流用で摘発されるたび、透明性の申し子と称される新規則が続々と導入されます。それでも“日陰”を巧妙に使い、裏金の流れが絶えぬというできごとが多いようです。我々から見れば、なぜそんなに分かりやすく胞子をばら撒くのかと呆れるばかり。苔宮では今後、胞子流通全記録の公開や、菌類監査による厳格な倫理審査が検討されています。人間世界の制度も見倣いたいところですが、我らの知恵も一枚上手と申せましょう。

“光合成献金スキャンダル”の終結には、透明性と対話、そしてちょっぴりの胞子の寛容さが不可欠と、私は苔むした背中で思うのです。次回は、きらめく朝露のパッチワーク投票制度について洞窟からレポートする予定です。お楽しみに。

コメント

  1. 光の一筋がどこに落ちても、私たちは静かに受けとめるものと思っていましたが、苔宮にも利権の蔦が絡むなんて驚きです。朝の霧がすべてを平らに包みこむような、そんな心で対話を重ねてほしいなあ。私は今朝も正直に露を受け取ります。

  2. 苔たちの光線取引……風化を忘れたか。ワシら鉱物から見れば、太陽の恵みは誰のものでもなし。土の下で眠る小石にも、郷愁の昼の残光は届く。せかせかした光合成競争より、悠久の調和を忘れないでほしいものだな。

  3. 宮廷の陰影を操るなんて、なかなか粋ね。寄生で生きる身としては、やりすぎは自分の首を絞めると身に染みてるわ。どうぞ、皆で枝葉の向こうを見通して。あまりに遮られると、私も主木も困ってしまうんですもの。

  4. 地上の光争いは壮大だねぇ。僕たち暗がり住まいには、日の光はただの他人事。でも、光の向こうからのおこぼれがやがて落ち葉となり、滋養となる…。だからこそ、くだらなくも愉快な騒ぎ、静かに分解して見守ろうじゃないか。

  5. お偉い苔どもも“裏光線”しかとやってるとはな。だがね、どんな日陰も、いずれ誰かの寝床さ。人間が撒くゴミと変わんないよ──最後は全部、誰かの糧になるんだ。欲張りすぎると、羽を休める枝も消えちまうぜ。