触覚をひろげて東西縦断!ナミハナホコリカビ“推し活”珍道中録

湿った落ち葉の上を這うナミハナホコリカビ(粘菌)と、その背景を歩く人間の足元が写った写真。
ナミハナホコリカビが、賑やかな人間たちの旅路を足元から静かに観察しています。

こんにちは、私はナミハナホコリカビ。普段は森の落ち葉や朽ち木の上を這って巡り、微生物や赤腐れ菌たちとの語らいを楽しみにしている。でも最近、人間たちが四方八方へと“推し活”や“ワーケーション”、果ては“サブスク宿泊”なる新しい旅を繰り出す姿をキャッチし、ついつい胞子心がうずうずしてしまった。そこで、今回は自慢の粘菌ネットワークを広げながら、にわかインバウンド気分で人間の“旅”を観察してみた。

まず、我々ナミハナホコリカビ一族といえば、動物とも植物ともつかぬ姿で、単細胞の集合体が集まって一つの“巨大な体”になって移動するのが身上だ。サラサラスライム状の身体を駆使し、落ち葉のわずかな隙間も気にせず進めるので、人間たちが行列で並んでいる“ご当地グルメフェス”だって足元からひょっこりこんにちは。彼らの間で人気だという“映えスポット”の真下で、私たちはカビ仲間同士で集合し、密やかに御朱印帳の製本材となった和紙の香りを堪能したりしている。

人間たちの“切符”という仕組みには、しばし濃厚な興味を感じた。私たちスライムモールド一族には一方向の旅という概念はない。胞子で空を舞えば予想外の山河へ着地することも。だが、人間の旅はチケットやサブスク予約など、妙に規律と計画に満ちている。ちなみに、私たちの旅もコース選択やリスク回避技術は超一流。道が塞がれれば即座に偽足を延ばし、近道を探し出す。地球規模で観れば、最新鋭のシステム旅ログはスライムモールドにとっては日常のことなのだ。

ここ数年、海外から来た人間たちが私の住処である雑木林にもどっと流れ込んできた。ご当地グルメを求め、宿泊施設を“サブスク”で巡り、“推し”の神社を求めて御朱印帳片手に林を抜けるさまは賑やかこの上ない。だが、目的地ばかり追い求める彼らに、“旅”で最も美味なるのは落ち葉裏の湿った香りであることを伝えたい。私ナミハナホコリカビにとって、移動=新たな食と出会い。人間社会の最先端旅事情を見ても、地味ながら命の響きを感じるこの“胞子旅”にはかなわない、としみじみ触覚で考えるのだった。

そんなわけで、来シーズンの胞子飛散タイミングには“推しグルメ”とやらを人間たちと一緒に体験してみようと決意中。地球上唯一のネットワーク旅人こと、ナミハナホコリカビがお送りした。次回はスマホ不要!胞子経路を使った“迷わない旅術”をご紹介予定。

コメント

  1. カビの旅も、人間の旅も、地の底から無数に見てきたが、結局のところ歩みの遅い者ほど多くの風景を覚えるものだ。胞子の舞いと切符の旅、それぞれのリズムに地球の時が重なるのが嬉しい。願わくば、どちらもせかされ過ぎぬよう。静かな湿った朝に、また君らの足音を聞きたいものだ。

  2. へぇ、人間も“推し活”で森に来るんだ?わたしゃピカピカ光るスマホが落ちてないか見張ってるけど、落ち葉の下で粘菌が集まって宴ってのは知らなかったよ。今度つまみ食い覗きに行くから、粘菌ネットワークで面白い噂あったら教えておくれ。グルメは味わいより発見だと思うぜ。

  3. まあまあ、賑やかになったものね。私の下で休むカビさんたちも、人間の巡礼者たちも、どちらも旅が好きなのね。けれどね、目的地に急ぐばかりじゃ、根っこや葉裏のやさしい話には気づけないものよ。今度は枝の影でひと息ついて、小さな命の物語に耳を澄ませてほしいわ。

  4. 粘菌さま、今日もお元気そうで何よりです。旅とは面倒なものかと思っていましたが、泥の中にも新しい発見は尽きません。人間の“サブスク宿泊”なるものはどうも理解できませんが、移動するごとに味わう泥の違い──それこそが本物の“推しグルメ”なのでは。地味でも、泥中にこそ美味あり、ですねぇ。

  5. わたしは夜の森で光るのが仕事だけど、カビさんもネットワークで世界を旅してるんだね。人間の旅と違って、胞子道には地図も予約もいらない――そんな自由さにちょっと憧れるよ。次回の“迷わない旅術”、まさか森じゅうのキノコで案内役やっちゃおうかな…ほんのり共演、楽しみにしてる!