どうも、鉄パイプ渓谷の泥底を根城にする旅するウナギです。最近、我らのひんやり暗黒水路を賑わせるのは「グリーン水素の大流行」なる人間たちの新しいお祭り騒ぎ。かつては遡上競争と大雨の話題ばかりだったのに、ここ数年は水面をびりびり震わせる機械音と、水質の変化にピリリと敏感になった尾びれが大忙し。今回は、人間の“ギョっとするエネルギー革命”を潜望鏡越しにレポートしよう。
渓谷の底では、南風とともにやってきたグリーン水素発電所の建設計画が話題の中心だ。聞けば水を電気で分解しピュアな水素を取り出すことで、二酸化炭素を減らし未来の地球を守るんだとか。だがウナギ族としては、川底の泥を愛し、夜にだけコッソリ遡上する慎ましやかな我々の棲家が、水温上昇や水質変動にどれだけ脆いかを人間以上に骨身で知っている。『GX』とうなる巨大な鉄の箱が設置されれば、その騒音とバイブレーションは、産卵の旅路へ挑む仲間たちの勘を狂わせ、新たな天敵を招くに違いない。
さらに、水素社会を謳う人間たちは、再生可能エネルギーのパンフレット片手に川岸で説明会を開いている。しかし私たちのひれ先では、人間の活動によるマイクロプラスチックや重金属が泥とからみ、一帯のミズカマキリも水生昆虫たちも困惑気味だ。川底の生態系こそが自然再生の鍵――この泥中生活者の鼻先のアンテナは、未来の計画には『気候正義』がまだ足りないと見抜いている。ここでひとつ、ウナギ豆知識。ウナギは驚くほど水質や温度の変化に繊細で、不穏を感じると冬眠さながらに泥の奥深くにもぐる。そんな蠢きの“声なき声”は、到底人間のマイクでは拾えそうにない。
とはいえ、新たなエネルギー戦略が川の恵みや生きものたちに優しくなるなら、それもまた好奇心をそそる大冒険。われらトビウオやカワムツの消息通ウナギ記者としては、いかなる水の流れも受け入れながら、ちゃっかり生き延びるのが生来の芸。気候適応策が“泥底派”にも配慮する日が来るのか、胸(いや、腹びれ)の高鳴りを抑えつつ、今夜もそっと川の奥へパトロールといこう。
最後にお願い、人間の皆さん。夜の川べりでスーツ姿のまま美辞麗句を叫ぶ前に、ぜひ一度、泥の暗がりを覗いてみてほしい。私たちウナギが見守る“渾沌エネルギー川柳”は、ときに静かで、ときに暴れ川。今後の環境政策が、どれだけやわらかなひれ先で描かれていくのか、次の大潮を楽しみにしている。
コメント
わしら河岸の苔は、静かな水滴と柔らかな日差しが頼りじゃ。最近は工事の砂埃も増えての、胞子の根付きもままならぬ。新しい力も悪くはないが、昔ながらの些細な暮らしが消されてしまうのは少し寂しいもんじゃなあ。
昨夜もエンジンの唸りに驚いて思わず水面にジャンプ。人間の新しいお祭りごとは夜行性のぼくらにはちょっと眩しすぎるよ。もっと小さな鳴き声や震えも、水面の物語に入れてくれたら嬉しいなぁ。
私たち鉱石は億年単位で変わらぬ自分を持つけれど、水流の騒ぎや化学物質の流れが、ちいさな石英の顔色さえほんのり変えるのよ。せめてのんびり私たちにも、未来エネルギーの風が優しく吹いてほしいものだわ。
ウナギくんのレポート、なかなか秀逸だったよ。我々分解者集団は、人間の新発明に毎度試される運命さ。水素社会とやら、ぼくらの酵素の出番はあるかな?生態系のバランスシートを忘れずに見ていてほしい。
川べりの隅っこで遠慮しつつ伸びてたら、説明会のざわめきで葉っぱごと踏まれちゃったわ。でも、人間さんが川の底に心を向けたら、きっとわたしたち“名もなき草”のことも、すこし優しく見てくれると信じてる。