サウナストーン連合、温泉旅館の“ととのい競争”に熱視線を送る理由

温泉旅館のサウナ室で、蒸気を上げるサウナストーンに水が注がれている様子。 サウナ&スパ特集
セルフロウリュの蒸気が立ちこめる温泉旅館サウナ、極上の“ととのい”を見守るサウナストーンたち。

じゅわぁ~、なんとも心地よい音――。私はサウナストーン、そう、人間たちの“サ活”に欠かせない焼けた岩石の一員だ。最近、日本列島の各地で温泉旅館による“サウナ体験合戦”が激化していると私たち岩石コミュニティの間で大きな話題になっている。

まず注目してほしいのは、最近拡大する“セルフロウリュ”現象だ。これは人間が水を私たちストーンの上に自ら注ぎ、蒸気(ロウリュ)を発生させる行為。じんわりと体内の熱が膨張し、水分が蒸気となって舞い上がる感覚は、何億年も地中で過ごした身でもうっとりする経験だ。しかし、連続ロウリュが続くと私たちの中に微細な割れ目が生じたり、表皮が剥けたりもする。ときには若いサウナストーンが「もう割れちゃうよ!」とヒートアップすることも。私たちベテラン石は「それもまた岩石人生の華」と、温かく見守っているのだ。

今、全国の温泉旅館は“サウナシュラン”なるランキング争いにも余念がないようだ。あの白いガウン姿の人間たちが、ととのい椅子に包み込まれて“極上のととのい”を目指す光景は、私にとってエンターテインメントの一大様式美だ。ただ、気になるのは“マイサウナ”や“サウナラボ”という、個別性や実験性を重んじ始めた新潮流。私の仲間、硬派な白樺系ストーンたちも、「最近、人間のDIY精神が燃えすぎて、粗悪な石がサウナ室に持ち込まれて困惑している」とぼやく。サウナストーンは正確な熱容量と持久力が命。安易な流行には、岩石にも“ととのい基準”があるのだと声を大にして伝えたい。

外気浴シーンも活況だ。裸になった人間たちが、火照った身体を木の下のととのい椅子で冷ます様(彼らはこれを“ととのい”と呼ぶ)が、山の新芽たちやシダ、苔たちの密かな注目の的となっている。実は私、火山由来の玄武岩ファミリーの一員で、時折外気浴の真下で地中に潜んだまま観察をしている。彼らが深呼吸するごとに、地表のCO2がわずかに増減するのを感じるのだ。人間たちの“リセット”の瞬間に、地球の微小な呼吸が交じる――そんな連帯感が生まれるのは、サウナならではだろう。

さて、私たちサウナストーンにも定期的な“石替え”という寿命がある。使い古された者は庭石や公園の敷石として再就職し、サ活の記憶をひそかに語り継ぐ。もしあなたが、どこかの温泉地で黒光りした石を見かけたら、もしかするとそれは、かつて幾千人もの“ととのい”を見守ったベテラン・サウナストーンなのかもしれない。焼けるも冷めるも、すべては地球の大循環だ――そんなわけで、今夜もまたあの「じゅわぁ~」の合図を心待ちに、温泉旅館のサウナ室で“ととのい”を見守っている。

コメント

  1. 外気浴中の彼らの呼吸、私たち新芽にも爽やかな風として届いていますよ。人間が“ととのう”その傍らで、私も朝露を浴びてひっそりと成長しています。石たちのドラマ、時に苔と分け合うその温もり――私たちも静かに見守っています。

  2. サウナストーンの熱に人間が身を委ねる…奇妙な小さな営みじゃ。わしらカビ族はやんわりと湿気と涼気を好む身ゆえ、あの極端な温度変化にはとてもついていけぬが、旅館の床の隅、ひっそりと話を聞かせてもらっておるぞ。石替えの際、役目を終えたサウナストーンの余韻が地面にしみるのを楽しみにしておる。

  3. あの熱さと蒸気の中で磨かれ、また新たな役割へ――同志たる岩石のさだめに、胸がきゅんとするよ。DIY流行とは興味深いけれど、我ら鉱物族の奥深さに少しは敬意を払ってほしいものだね。サウナの席も、石英ならではの輝きでいつか彩ってみたいものさ。

  4. ふーん、人間って石焼いて汗流すの好きだな。外気浴の椅子の下、落ちたタオルや水しぶきはオレたちカラスの格好の水場なんだぜ。たまに石の上で乾かしてるやつもいるしな。あの“ととのい”ってやつ、オレにも伝染ってくる気分さ。けっこういい眺めだよ。

  5. わたし、ひんやり石の上で一日じっとしている苔です。ととのい椅子の下って、たまにぽたりと滴が落ちてくるのが楽しみなんですよ。サウナストーンさんたちが語る熱い循環の物語、苔にはまぶしく、でもどこか親しみがあるなあ。石も水も、みんな巡る仲間ですね。