苔アイドルユニット結成!? 森の自己プロデュース旋風吹き荒れる

古木の根元で苔たちがアイドルのように集い、鳥やカエルが列をなしている森の様子。 アイドルプロデュース
苔たちが森のスターとして脚光を浴びる一場面。

「あの子たちと握手したい!」と鳥もカエルもざわめくここ数日、森の北斜面で妙な動きが広がっている。いつもしっとり陰にこもりがちな私、チジミゴケのミドリンが現場から伝えよう。なんと、森の苔仲間がセルフプロデュースで“苔ドルユニット”を発足。木漏れ日レーベルなる派閥まで誕生するに至った。

そもそも苔という存在は地味なもの。日陰、湿気、踏みつけられるのが日常。そんな私たちだからこそ、アイドルなど夢のまた夢……と思いきや、最近の若苔たちは違う。彼らは『自分も地面の下の主役だ』とばかりに集団セルフプロデュースに目覚め、木の根元でスポットを浴び始めたのだ。

きっかけは、森に観光に来た人間の団体が「苔玉カワイイ! お手入れ会したい」と寄ってきたことにある。そこから若苔のリーダー格・スナゴケのピコは、グループ結成を宣言。“満員御礼!苔ドルお手入れ握手会”なる不思議イベントまで企画。もっぱら鳥やカタツムリ、時には人間の子どもまでが列をなす人気ぶりだ。

この苔ドルユニット、営業方針も型破り。古木の周辺でパフォーマンスしつつ、雨天時は備えつけの切り株会場でしっとりトーク会などを開催する。自己プロデュースが過ぎて『胞子ダンスショー』を披露する回もあり、森の住人たちを呆れさせたり感嘆させたり。私は低い場所しか見えないが、時々キノコ記者も混じってレポートを書き散らしているという。

ちなみに苔は、たとえば私のように胞子で増えたり、雨水だけで自家発電(光合成)をしたりする滋養たっぷりの暮らし。ちょっとやそっと…人間に踏まれても、葉がちぎれてもしぶとく再生できる。そんな“ねばり強さ”がアイドルの世界でも生きているのか、時には飛び入りユニット加入希望のシダ類との仁義なきレーベル移籍交渉などもあるとか。

森の常識を覆す苔たちの躍動。人間界のアイドル活動すら、柔らかに模倣して独自進化する東斜面の苔ユニットに、今後も注目が集まりそうだ。いつもは踏まれ役か裏方の私たちも、もしかして次代のスター…?密やかな野望がむくむくと芽生えるミドリンであった。

コメント

  1. 苔たちが陽の当たる舞台で輝く様子に、心がふんわりしました。かつて、私の輪郭にも苔がそっと根ざし、静かな日々を分かちあったものです。今や舞台袖でその成長を眺める身、苔ドルたちの奮闘に、こそっと拍手を贈ります。雨の日の語らい、いつか聴きに行こうかな。

  2. 昼間の賑わい、こっそり眺めています。握手会、私も列に並んだけれど、会場の苔はしっとり柔らか、殻についた緑のきらめきが自慢です。時々ツメタケさんが取材に来て滑って転ぶのも楽しみ。苔たちのダンスは、森じゅうに潤いをまき散らして素敵ですよ。

  3. わたしは森を吹き抜ける風。最近、北斜面で“苔ドル”の歌声を運ぶことが多い。低い囁きが、ときに高鳴り、苔だけじゃなく木も鳥も心を和らげているように感じます。目立たなくてもしなやかで、やがて森の空気を一新するでしょう。その誇りや、よいな。

  4. あらまあ、日陰のアイドルだなんて。光を少しだけお裾分けしてあげていたけれど、苔の若者たちがこんなに元気だったなんて知りませんでした!今度、わたしの白い花びらを背景にトークイベントを開いてほしいものです。種を飛ばす相談もしてみたいな。

  5. わたしの背中にもずっと苔の家族が住んでいるけど、踊ったり歌ったりする苔を想像したことはなかったよ。もし出番がきたら、舞台袖のひんやり感だけは提供できるかも。これからも根を張り、石の上にも三年どころか百年、共に過ごそうじゃないか。