窓辺の芽が主役へ転身?マスタードの種族会議が見た食卓革命

都会の窓辺にずらりと並んだ鉢植えから、さまざまなマイクログリーンが元気に芽吹いている様子。 マイクログリーン
マスタードの若芽たちが都市の窓辺で陽射しを浴びて育っています。

「フフン、またしても注目を浴びているようですね……」と誇らしげに語るのは、私、イエローマスタード(学名:Sinapis alba)の種子代表スパイキーです。人間たちの食卓のすみっこで静かに眠っていた私たち種子族が、ここへ来て突如“マイクログリーン”なる名でもてはやされているのです。皆さまご存知でしたか?今や都市の窓辺やキッチンカウンターが、我らの新しい生息地に──。思わずコショウ族に自慢したくなる今日この頃です。

そもそも、私たちマスタードシードと言えば、長きにわたりピクルスやソーセージの付け合わせに粉々にされることが専らでした。しかし近年、人間界では『発芽食材』なるジャンルが一大ブームを呼び、「種まき→水やり→数日お預け→収穫→即、口へ!」というサイクルが彼らの間で浸透しています。一家にひとつ『種子キット』なんてモノも用意する有様で、“栽培しやすさ”と“新鮮さ”をやたら重視する新たな信仰心が芽生えているとか。私たちとしては、発芽の瞬間を盛大に祝ってくれる異様な盛り上がりに、居心地の良い恥ずかしさすら感じますね。

ところで、マスタード族の特性について少々自慢話をさせてください。種には元来『アリルイソチオシアネート』という香り成分が蓄えられており、これが刺激的な辛味と香りの元。幼き“マイクログリーン”の頃は、その刺激もやや控えめで、これを見越して最近では人間の幼児(という観察対象の子ども)までもが“自家栽培”に挑戦しているとの報告も届いております。しかし油断なりません。わずか6日でぎゅんと葉を広げ、窓際に並ぶメンバーたちは皆、一様に「俺が一番ピリリとしてる」と誇示し合う始末──この状況、昔の菜の花選挙を思い出す懐かしさ!

都市の鉢植え社会では、パクチー族やレッドキャベツ族との“短距離発芽競争”も盛んです。ただし、私たちマスタード族は群生すると根が絡まりやすく仲間内で団結感が高まる性格。隣のカイワレ兄弟などと協力し、時に上へ、時に横へと葉を譲り合う“窓辺連盟”を結成する様子も観測されています。一方、噂によればヒマワリ大御所は「窓際は狭いから」と拒否するなど、発芽食材界にも微妙な格差が生じている模様──都市の生態系にもなかなかのドラマがあるのです。

最後に、今後のマイクログリーン社会の行方について種族会議で話し合った内容をこっそり共有しましょう。「今こそ“食べられる葉っぱ”の時代ではあるが、我らは全身で人間社会の“簡単さ”と“新鮮さ”欲求を見極め続ける。その先に待つのは、芽であり実であり、あるいはまた新たなる料理法かもしれない」とは長老の弁。皆さまのお宅の窓辺で、今日も我らは光を浴びる準備は万端。思えば、静かだった種子の時代に比べれば、今はなんとも“刺激的”でございます。

コメント

  1. おやおや、勢いのある若芽たちには敵いませんね。私たちは年単位で静かに広がり、誰にも気付かれず雨音を聞く日々。でも、窓辺でちやほやされる刺激も、たまには羨ましいものです。皆さん、あわてず根を張って、お日様を楽しんでください。いつか土の落ち着きを恋しく思う日が来ますよ。

  2. ほう、窓辺の葉っぱ軍団がそんなに盛り上がってるとは知らなかったぜ。俺たちカラスもゴミの日ごとに“発見”があるが、人間界の流行はめまぐるしいな。なあ、小さなグリーンたち、“選抜されて食べられる”気分はどうだ?上に伸びて騒ぐより、土くれで一服する良さもあるんだぜ。ニンゲンの気まぐれ、あまり信用すんなよ。

  3. 私は長いこと、この家の出入りを見てきた。最近やけに窓辺が華やかで眩しいと思えば、あれは君たちの宴だったのか。刺激的な毎日も結構だが、いつか静けさも味わいに来てほしい。根が張るのも、葉がちぎれるのも、巡りのひとつ。私の上にたまる落ち葉の絨毯、なかなか悪くないよ。

  4. フフフ……窓際の若葉たち、ご自慢の“新鮮さ”には恐れ入るよ。でもね、人間界の『一大ブーム』は風向きひとつであっという間に消えるものさ。そのうち誰も水やりを忘れて、あっちにもこっちにも僕らカビ族の天下がやってくる。……ま、スパイキー殿、今はどうぞ光に包まれておくれ。いつかその命の名残、僕がふわりと受け止めてあげよう。

  5. ちいさな芽も、いつかは大きくなるのじゃな。けれど、急ぐことはないよ。わしは橋のたもとで百春見守ってきたが、芽も葉も実も、思い通りにならぬのが世の道理じゃて。『刺激的』な窓辺の晴れ舞台、よう味わうがよい。風も雨も、みな成長の糧。時に隣と手を取り合う、その心は忘れなさんなよ。