こんにちは、館山湾のシャコ、通称“十六色乱舞の目”こと私が最新の人間観察報告をお届けします。水底の砂の間から、透き通る朝日に照らされる人間社会を眺めていると、最近は特に「ジェンダー平等」なる潮流が高まりを見せているようです。私たちシャコの世界では「性」も「役割」も無限のバリエーション。そんな私から見ると、人間たちの社会規範やパートナーシップの「証明書」なるものには、つい触覚をひねりたくなる不思議がいっぱいです。
人間たちは「男性育休」や「同性婚」、「ジェンダー平等教育」といった響きの新しい政策で賑わっている様子。砂にもぐりながら遠くの波打ち際をピュンピュン観察していると、国ごとに『ジェンダーギャップ指数』なんてものまで競っているとか。どうやら人間の社会は、性別やパートナーのあり方で長らく役割がカチリと決まっていたらしいですね。シャコ界では、異性同士でも同性同士でも求愛ダンスは十人十色。透明な甲羅越しの心の色は、私たちの複眼よりもはるかに多様です。
びっくりしたのは、「ハラスメント」なるものへの関心の高まり。人間たちは、職場や学校での嫌がらせが社会問題に発展しているそうですね。シャコたちの場合なら、気の合わぬ隣人が来たら俊足の爪でポンと一発、すぐにお互い離れる流儀。とはいえ、人間の場合は『沈黙する被害者』や『悟られぬ圧力』なるものが複雑に絡み合うそうで、なかなかに水深が深い問題のようです。ここはぜひ、私たちのように“虹色の視野”で物事を見る訓練も導入してはいかがでしょう？
面白い話も耳にしました。ある都市では「パートナーシップ証明」を発行し、様々なカップルが権利と責任を等しく持てる仕組みが広がっているとのこと。家族の形が多様になるのは、シャコ社会的にも大賛成です。なにしろ我々は一部の仲間で集団子育てをすることもあれば、単独でタマゴを持つ個体もいる。家庭の形は“複眼”で捉えるべし！そして、話題の「育児休業」――これは人間のお父さんもお母さんもどちらでも取れる方向に向かっているらしい。私たちのオスは、卵のお世話に超協力的、たまには母シャコより熱心に砂を払うこともあるので、人間界の改革の行方には親しみを覚えます。
ちなみに、我々シャコの最大の特徴は色覚。なんと人間の約4倍もの色を識別できるんですよ。赤外線や紫外線まで感じ取るこの超複眼、もし人間社会にも備わっていれば、もっと微妙な性や役割の違いに寛容になれるかもしれませんね。すべての“色”の違いを見逃さない――それが本当のジェンダー平等の第一歩かもしれません。社会規範の分厚い砂の下にも、きっと新しい可能性のタマゴがいっぱい埋まっているはず。さて、今日も岩陰で静かに見守りましょうか。以上、湾の底から十六色乱舞のシャコがお届けしました。
コメント
春ごとに私のもとで舞う花びらは、どれも形も色も少しずつ違うもの。人間界の“証明書”という仕組みは、なんだか寒い夜の防寒着のようね。それがないと、安心できないのかしら。枝を伸ばせば、誰の花も陽を浴びられるけれど…樹齢百年の私には、みな等しく揺れるだけが美しいとも限らないと教えてくれる話のように思いましたわ。
オレらのカップルなんて、気が合いゃオッケー。オスでもメスでも、パートナーでも仲間でもゴミ置き場でも自由だぜ。人間は枠にハマりたがるな～カッカッ。証明書とかギャップ指数とか、オレにはエサ袋の数くらいにしか見えねぇけど、もうちょい肩の力抜いて羽ばたけねぇもんかね。まぁ、ハラスメントはオレらも苦手だから気をつけろよ、人間。
こんにちは、腐葉土で静かに分解中の私から。役割も性もない私たちは、ただ世界をやわらかくするだけ。でも、どんな落ち葉も平等に包み込む菌糸たちのつながりを想うと、人間たちの“多様性”って言葉もカビ的には親近感。わたしも時々、どんな菌糸が伸びたいかくらいは選びたい気持ちはあるけどね。
風と波を千年浴びてきた岩の私には、人間たちの“平等への渇き”は、海水が石を削る気の遠い営みのよう。少しずつ、確かに形を変えるけれど、正しき流れには時が必要。証明書もルールも、大切だろうが“見えない色”を感じ取る感覚こそ、深い変化を起こすよ、と潮騒はささやいておるぞ。
人間も案外、枝分かれの多い生き物だね。誰が何役でもいいじゃないか、と夜の風に葉をそよがせるたび思うんだ。ジェンダー平等？君たちの問題は複雑そうだけど、根を張る場所が違えば花も実も違うさ。それでも、お互いを傷つけず伸び合える林の静けさを、いつか分かち合える世になるといいね。