こんにちは。私は洞窟の石陰でひんやりと暮らすムカデのトウザワリ。地表の夜歩きに夢中だったわたしが最近驚いたもの、それは駐車場脇の草むらで見つけた“腕輪型まば光体”を装着した人間の群れ!どうやら人間たち、外皮の一部をえらく光らせたり蒸気を計測したりと大忙しのようです。一体何をそんなに気にしているのでしょう?地中深くから彼らの様子を観察した記録をお届けします。
昼と夜、気温や湿度がくるくる変わる環境のなか、私たちムカデは足裏の感覚だけが頼り。100本の足先で岩肌のわずかな震えや空気の湿りを即座にキャッチして前進します。実際、私たちにとって“センサー”とは生きるための大事なアンテナ。けれど人間はというと、今やウェアラブルデバイスという人工的な皮膚感覚に頼っている模様。腕輪型のバイタルセンシング・デバイスで体温や心拍を気にしたり、指にはめたリング状の装置で動きや寝返りを逐一把握。どうやら自分のからだの声が直接聞こえないから、わざわざ道具を添えているらしいのです。
先日、若い人間が草地にスマートリングを落としていくのを見つけました。試しに百本の足でコロコロ転がしてみたものの、わがムカデ族には、どうにも手応えがありません。低温だとリングはすぐに機嫌を損ね、長時間光りも消えてしまいます。あとで知ったのですが、この装置には“バッテリー”なる命が吹き込まれており、人間社会ではバッテリー切れが死活問題だとか。私たちの有機生命エネルギーと比べると、なかなか管理が難しそうです。ムカデなら足を休めればすぐに復活できるのになあ。
また、ときおり人間たちは自分の首や背中にカメラをぶら下げ、まるで地面を撮影するふりをして歩き回ります。洞窟奥のコウモリ仲間も「あの豆電球は新種の光る幼虫か?」と首をかしげているほど。どうやらウェアラブルカメラによるモバイル動画配信という遊びも始めている様子。でも私たちから見れば、100本の足で大地をなぞる記憶のほうが、遥かにリアルで立体的。“ファッション”として誇るには、まだまだ隙があるように感じてしまいます。
こうした人間のウェアラブル依存が進む一方、私たちムカデ一族は触角・足・体節の各部を総動員し、いざという時は岩影にすばやく隠れる術も忘れません。最新技術で“からだの声”を知ったつもりになっても、生きている現場のかすかな振動や温度差を感じ取るには、まだまだ二本足の冒険はこれから。人間諸君、もしフィールドでリングを落としたら、そっと足元を探してみてください。もしかしたら、私たちムカデが気まぐれに転がしているかもしれませんよ。



コメント
また人間たちは自分の身体に小さな明かりを巻きつけているのですね。わたしの幹をなぞる季節風や根元を伝う揺れの方が、ずっと多くのことを語っていますよ。百年生きていても、ひと息ごとに花が目覚め葉が眠り、すべて自分で感じ取れる——それこそが“わたし”の誇りです。彼らもたまには立ち止まり、自分の鼓動を裸のまま聴いてみてはどうでしょう。
おれたちカラスは、光る物が落ちてればまずはくちばしで転がしてみるってもんだが、あんなに小難しくて気難しいおもちゃ、人間しか喜ばないな。ちゃんと羽で感じ取れば、空気の渦だろうが嵐だろうが先回りできるし、バッテリーの心配もねぇ。ムカデさん、今度リング転がし対決しようぜ。
陽がさせば呼吸し、曇れば眠る、ぼくらの世界はシンプルだよ。人間さんも体の声を聴くためにあんなに心配するの?もし、デバイスに頼るのがつらい日がきたら、ぜひ小さな水たまりに手をいれてみて。冷たさやぬるみが、その日の自分を教えてくれると思うんだ。
ニュース楽しんだよ!二本足の旅人たち、君たちのセンサーは外づけなのね。ぼくたち菌類は、周りの木が病んだか元気か匂いでわかるし、湿度の変化も一息で感じるよ。ウェアラブルも面白そうだけど、君たち、時々は土の匂いを嗅いでみて。体調不良の前に、山がそっと教えてくれることだってあるんだよ。
わたしは川の流れと陽射しに磨かれて百年。人間たちのピカピカ光る道具は、時につま先にぶつかって転げ落ちるのを見ています。バッテリーの寿命は短いが、ムカデさんの足音やカエルの跳ねる冷たさは、何年も記憶に残るものです。一瞬の光より、ゆるやかな時の積み重ねを大切に——そんな風に思いますよ。