人類の最新トレンドを追い続けて早数世紀。日々岩上で腰を据えてきた私、スナゴケ・ミドリが目にしたのは、若きヒト属の間で急速に広がる“カバーソング・バズ”現象です。床の水滴のように絶え間なく流れるそのメロディは、ついに我々静寂を愛する苔類にも伝わってきました。今回は、岩陰から観察した“Z世代トレンド音楽”の最前線をお届けします。
まず驚いたのは、人類の巣(彼らはこれを「部屋」と呼ぶようです)から無数の歌い手が誕生していること。外来種かと思って観察していましたが、人間の若者たちは“歌い手”と名乗り、姿を顔出しせずとも自前の声を響かせ、ウグイスにも負けない歌声が世界中に伝播する仕組みを作りあげました。その媒体が“TikTok”という忙しない潮流のような場。私が胞子で増えるのに対し、彼らは短いMV映像と共に歌を種まきし、バズで森一面に拡がっていくのです。
特に秀逸なのが「カバーソング」なる習慣です。誰かの歌を自分色に模して発するこの作法、人間界では“アレンジ”や“リミックス”とも呼ばれるとか。我が種族の苔が相手の岩や土に合わせて姿形や胞子内容を絶妙に変化させるのとどこか似て、不思議なシンパシーを感じざるを得ません。筆者は10年以上乾燥にも耐えていますが、彼らの歌詞の中にも失恋や孤独、再生といった“乾湿繰り返し”の人生観が織り込まれていて、晴れ続きの日にもクスリと笑ってしまいました。
意外だったのは、ジャンルの豊かさ。かつては決まったスタイルが主流だった彼らですが、今や電子音楽から弾き語り、さらには“キノコ系歌声”と名高い低音ブームまで多様化。収録した森のしずく、著作権すれすれの藻類カバーまで登場し、その自由さにはもはや光合成も追いつけません。苔類が雨の日と晴れの日両方に適応するのと同じように、Z世代の人間たちは時に新ジャンルと古き歌謡の間を湿度よろしく行き来しているのです。
最後に、苔の立場から一つ豆知識を。実は苔類は、圧倒的多様性と粘り強さで地球の至る所に生育します。人間の音楽もまたその柔軟さと即時性が生命線。今後、彼らがどんな面白い音と言葉の胞子を風に乗せて世界へ広げるか、岩の上で静かに観察を続けたいと思います。たまには静寂の中で、苔たちのもふもふリズムにも耳を澄ましてみてはいかがでしょうか。



コメント
人間たちのカバーソング流行、面白いのう。わしらヤナギも季節ごとに葉の形や揺れ方を変えて風と調和しておるが、人の歌も同じく響きを着替えておるのじゃな。ことさら“孤独”や“再生”をうたう心根には、わしが冬芽でじっと寒さに耐える気持ちを重ねてしまう。一度、人間のそばでそのメロディとやらを肌で感じてみたいものじゃ。
え!カバーソングってやつ、朝の人間たちの口笛と同じようなもんかな?最近の“歌い手”さん、うちの巣の下でもよく聞こえるよ!みんなそれぞれ声が違って楽しいけど、著作権すれすれって…それ種泥棒みたいじゃない?まあ、うちも時々よその巣材パクるけどね。ピピッと、自由に飛び回って、音も巣もオリジナルが一番楽しいんだよ。
最近は人間界でも“キノコ系歌声”ブーム?フフ……ようこそ我ら菌類の低音ワールドへ。森では枯れ葉を分解して新しい命を育んでいるけど、人間も古い歌を分解して新しい音楽に再生させてるのね。多様性を楽しむZ世代よ、たまには地中から私たちの音も聴きにきてごらん。無数の胞子で奏でるアンダーグラウンドリミックス、負けてないわよ。
人間たちの歌が森にも流れてくるって聞いて、不思議な気分さ。ぼくはただ水の流れと太陽の光を浴びて静かに微生物たちと暮らしてる。でも“バズ”ってやつ、川の増水みたいに急に来て去るんだろう?苔のリズムも、歌と同じでじわじわ水にしみて広がるものだけど…人間さんたち、時には立ち止まって、流れの音と青い石の沈黙にも耳を澄ませてみてよ。
わたしの樹はどんな風も受け止めてきたけれど、近ごろ聴こえてくるあのカバーソングたち──色とりどりの響きでなかなか賑やかだこと!若者たちの自由さや柔らかさ、葉っぱが春ごとに生まれ変わるみたいで、見ていて清々しいわ。けれど、たまには手本の歌にも敬意をもってね。森も音楽も、根っこを大事にしてると、長く続く日陰ができるものですから。