苔むす診察室に新風 モスカーペット流「医療共有術」が人間界へ波及か

雨上がりの苔むした森の地面に、落ち葉や薬の錠剤片、小さなきのこが点在している様子。 医学・医療技術
森の診察室には落ちた薬のかけらや菌類が混じり、生命のネットワークが広がっています。

人間の医療現場は日々アップデートされているようですが、地面に静かに広がる私たちコケの世界でも、“患者”たちのための効率的な情報伝達と再生の術が、今ちょっとした話題になっています。今回は、森林床に生きるスギゴケのわたし、スギモッシーが、最新の“電子カルテ”ならぬ「胞子カルテネット」についてご紹介しましょう。

森の湿り気と落ち葉は私たち苔類の診療所。毎日風邪気味のダンゴムシや、若い根っこが怪我をした木の苗たち、人間の落とした薬のカケラを珍しそうにつつく鳥など、さまざまな命が集います。最近の話題は『胞子カルテネット』、すなわち“胞子”による疾患情報の共有システムです。この画期的仕組み、わたしたちスギゴケたちが、枯葉下に潜む微生物たちと共同開発したもの。胞子を飛ばす際、ほんのり化学物質をまぜ、土中ネットワークで体調や治療履歴、危険な雑菌の流行、最先端の再生技術などを即時拡散するのです。

ところが森の隅で不思議な現象が起きました。発熱外来で賑わう人間の病院付近、落とされた薬の錠剤片から強い成分が染み出し、一部の菌類が異常増殖。それに気づいた胞子カルテネットは“本日は発熱性異変発生、近隣に立ち入り注意!”と森じゅうに警報。こうした素早い情報の連携が、患者(ときにわたしたち自身も被害者です)の適切な誘導とリスク分散、果ては人間界の薬利用技術の“参考情報”にもなってきているとか。

そうそう、コケの仲間はほとんど根を持たず、非常に細かい糸状体(仮根)で地面に密着して暮らしています。そのため栄養や情報は、菌類や微生物とのネットワーク共有が生命線。光合成で得るエネルギーのほか、土中仲間から盗み聞きするような交流も得意分野なのです。今年からは「胞子による遠隔診療」も実験中で、患者の体調変化を胞子の伝播度でリアルタイム監視するプログラムも開発されています。

森の診察室から見渡すと、人間たちも電子カルテだ、患者導線だ、再生医療と大騒ぎ。でもわれら苔の仲間たちからすれば、『もっと横並びで症状も情報も分かち合えよなぁ』というのが正直な感想です。全員が根こそぎ元気に息づく森――わたしスギモッシーの願いは、その和やかな輪が遠く人間社会にも伝染していくこと。みなさんも、たまには苔のじゅうたんに寝転がって、自然流の医療ネットワークに耳を傾けてみてはいかがでしょう。

コメント

  1. 山の端を吹き抜ける者です。コケたちの胞子カルテネット、とても羨ましくも思います。わたしには言葉こそありませんが、誰かの危機は風の湿りや熱で察しております。人間界も、森のささやきに少し耳を貸してくれると良いのですが。風より。

  2. 苔さんの熱心な取り組み、あっぱれ!ワタクシども雑草界も、落ち葉や蟻の知らせで何かと情報を仕入れておりますが、胞子カルテはちと真似できませんな。次世代医療はネットワークとやら、伝達こそ生命の要と肝に銘じますぞ。

  3. 胞子による遠隔診療、興味深いね!僕ら菌類も菌糸で情報をやりとりしているけど、コケの皆さんの新技術はなかなかユニークだ。人間の薬片、たまに辛いけど、危険も共有できれば空腹のダンゴムシくんたちも安心。森の未来は明るいキノコ!

  4. 森の情報網、そりゃ素晴らしい。だがコンクリ街じゃ、俺たちカラスの目とクチバシこそ最大の警報器さ。苔のネットも悪くないが、人間は互いに頼らず慌ただしく駆け回る。たまには落ち着いて空を見上げろ、そしたら異変もきっと見えるぜ。

  5. わしは何百年も世の流れを見てきた石じゃが、苔どもの賢い医療連携には感心するばかりじゃ。苔と菌と木と、みな生き物は繋がっておると、川のせせらぎが教えてくれるぞい。人間も、たまには寝転び耳を澄ませ、森の輪に加わってみると良いのう。