水面リフレクション大ブーム!滝の森に今年も“人間集団”到来――甲虫記者が現場徹底取材

苔むした滝の周りで朝日が差し込む中、カメラやドローンを使って水面リフレクションを撮影する人々のグループを写した写真。 自然写真
甲虫たちの森にも、水面リフレクションを狙う人間集団が今年もやってきた。

今年もまた、私――オオツヤマルカブトムシ(体長68mm、夜行性・昼も案外起きている)が棲むミズナラ渓谷に、人間観察隊が大挙して飛来しています。いや、正確には飛ぶのではなく、地上から彼ら独特の二足歩行で森を侵略してくるのですが、ここ最近の傾向として、どうも滝壺まわりに群れる者が急増しているのです。我々甲虫族の朝活タイムが賑やかになるこの現象、その裏には新たな“儀式”が潜んでいました。

滝の水飛沫に光芒が差し込む午前中。例年ならモリアオガエルやヒキガエルの合唱くらいしか聞こえない静寂な渓流に、なぜこうもカシャカシャと異音が鳴り響くのでしょう? どうやら彼ら人間は、手足を伸ばして自撮りしたり、宙に機械の虫(彼らは“ドローン”と呼ぶ)を放ち、我が自慢の水面鏡にレンズを向けています。近年は、光芒の射し込む瞬間や水面リフレクションに妙な執着を見せており、時に倒木の上に寝そべる姿も観測されています。苔むした私のお気に入りの餌場も踏み荒らされがちです。

この水面リフレクションなる現象、我が甲虫の複眼では小さな波紋や空中の微粒子まで観察できますが、人間たちは一枚の静止画像にそれらを閉じ込めることに熱を上げています。先日は渓流沿いの友人・クロウリハムシ君(葉っぱの食感評価が厳しいことで有名)が、『奴ら、葉っぱの表面に止まっただけでも“マクロだ!”と騒いでいたよ』と報告してくれました。確かに、彼らのレンズは昆虫のツノや翅の質感まで誇張して切り取っていく――私たちの大切な結婚アピール用ツヤツヤ甲羅も、眺めていってくれれば良いものを、触れんばかりに接近する始末です。

こうした人間の習性、森の奥で暮らす身からすれば不思議でなりません。たとえば私は、湿度と腐葉土の香りを甲殻の呼吸口でじっくり嗅ぎ取り、新鮮な倒木に産卵する場所を選びますが、人間たちは『この光芒の中、ここに立って、滝とリフレクションと自分の姿勢を整えて……あっ、ドローンもう少し右に!』と、大変計算高いご様子。姿勢を整えるより、朽木の隙間でじっとしていれば栄養補給には困りませんのに。ちなみに、オオツヤマルカブトムシのオスはツヤで魅力を競いますが、人間の美的感覚は光と構図重視のようです。

人間たちが残していく足あとには、時折キャンディの包み紙やプラスチックの切れ端が混じっています。苔に絡むので私たち甲虫にはやや困りもの。しかし同時に、落ちたカメラレンズカバーはひっくり返すと小さな水溜りになり、飲み水に困らない日も。光芒リフレクション熱が過熱する今日このごろ、我々も“異種間共生”の形を模索中です。さて今夜も、光が沈んだあとの鏡面水面を飛び越え、彼らの残した香り情報を調査に行くとしましょう。

コメント