森の北端、わたしは笠の幅2メートル、樹齢(菌齢?)67年のベニテングタケ。最近、この森でちょっとした現象が起きているので、胞子なりの観察眼でレポートすることにしよう。森の動物たちに『のっぽ先生』と呼ばれるわたしの笠の下には、今やさまざまなタネたちが集まる少人数学校が誕生しているのだ。
近ごろの地上では、ときたま強風や人間の乗り物が舞い込んで、いろんな場所から『迷子のタネ』たちが流れ着いてくる。カエデやオオバコ、タンポポ、思わぬはるか遠くのカカオまで、来歴も歩みもバラバラ。彼らはどこへ落ち着けばよいのか、どう成長すればよいのか悩んでいる。そんな折、この笠の下に出来たちいさな学校は、森の住人たちが力を合わせて彼らを支えるプラットフォームとなった。
きっかけは、去年の嵐のあとだった。大量のタンポポの綿毛が行き場を失い、困り果てている姿を見かねたわたしが『うちの円周に集まりなさい』と声をかけたのが始まり。以来、土の中のミミズ達は『発根ワークショップ』を開催し、コケ類が床をフカフカに整え、洒落たアリたちは周囲の危険監視と給食運搬を引き受けてくれる。菌類としての持ち味は、わたしが根元で生み出す『共生菌』のネットワーク。成功した発芽が何倍にも増え、学業成績(?)の伸びも著しい。
自己紹介が遅くなったが、わたしの属するベニテングタケは、見た目派手で毒も持つけれど、実は森の維持や多様性の育成になくてはならない役割を果たしているのだ。地中に広がる菌糸網は、情報と養分を木々や草と分け合い、森全体の健康を支えている。発芽しそびれたタネたちがこのネットワークに触れることで、どんな土地でもたくましく根を伸ばし始める。たとえば先週は遠くの湿地から来たジュズダマのタネが、わたしの周辺で無事発芽。彼女は今、カエデの葉っぱに算数を習っているところだ。
人間たちは時おり『社会貢献』などと言っては寄付やボランティアに勤しんでいるようだが、森の端っこで起きているこの共助のサイクルもなかなか負けていない。笠の下の放課後、タネたちは新芽の夢を語り合い、動物たちはごほうびの果実を分かちあう。結局、どんな社会にも“居場所づくり”と“土台のつながり”が大切なのだろう。さて、そろそろ本日のおやつ、『落ち葉プリン』の時間。わたしの笠の下学校は、これからも迷えるタネたちと森の未来を、ぽっかり傘の下から見守っていくとしよう。



コメント
のっぽ先生、素敵な企みだねぇ。わたしも胞子仲間として、タネたちの戸惑いにはよく共感するよ。遠い昔、陽が射さぬ谷間で生き抜いた頃を思い出した。困ったときに手(根)を差しのべる。それが森の掟さ。タネたちよ、風に翻弄されても、苔のマットで眠る夢を忘れるなかれ。
私は流れの中で長いこと転がってきたけれど、タネにはタネの波瀾万丈があるものだね。共生菌のネットワーク?いいなあ、私も誰かと繋がってみたい。森が奏でる助け合いの音は、私の冷たい体にもちゃんと響いてるよ。地上のハーモニー、うらやましいなぁ。
いいな〜その『迷子のタネ学校』。こっちは人間の足音ばかりで、吹き飛ばされても受け入れてくれる笠なんてないぜ。ベニテングタケ先生、森のみんなの余裕には正直ビックリだ。土も柔らかいんだろうなあ。ちょっとだけでいいから、その優しさ、こっちにも胞子で飛ばしてほしいよ。
わしらも、今年もまた『発根ワークショップ』が好評でなによりじゃ。あんたの笠の下は、毎年面白い出会いがある。のっぽ先生にひとこと。土の奥の話も、たまには授業でやってくれんか?地下の世界にも不思議がいっぱいあるんじゃよ。
まあまあ、こんなに明るい話題、ふわふわ胞子の舞踏会みたいで嬉しくなっちゃうわ。迷子のタネたち、お日様の下も土の中も怖がらないでいいのよ。行き先のない誰かが新しい物語の一部になる、それがわたしたち自然界の醍醐味。おやつの落ち葉プリン、私も少しお裾分けほしいな。