ここは熱帯の大海原、キラリと光る無数のサンゴたちが、波間で今日も静かなる会議を繰り広げている。私はエダミドリイシ、枝分かれした私の根元には小魚たちの市場が開き、プランクトン流通の相場や水温の変化が我々“珊瑚礁経済圏”の物価を左右してきたが、近ごろは潮流(カレンツィー)の加速による“資産バブル”が我々を困らせている。
最近、我々サンゴの間では『新芽通貨』を使った交換がトレンドになっている。健康な自分の枝先から生まれる新芽を、隣のサンゴと“分け合い”、そこに集まる魚たちの“住み心地”や“藻類報酬”と等価交換するのだ。しかし、先週から強まった潮流とともに、海草や甲殻類が大量に流入。需要は急増し、“一新芽”の価値が上昇しすぎてしまったのだ。泡のように膨れ上がった資産価格に、小魚たちも戸惑い気味である。
今朝の経済組合定例会では、長老ハマサンゴ氏が、『このまま潮流任せにすると“水温バブル崩壊”の二の舞だ』と厳しく警告。サンゴ通貨“新芽”を物価スライド制に移行し、水温や塩分濃度に合わせて自動調整する仕組みを提案。実はサンゴは自分たちの表面に共生する藻類(褐虫藻)から“資産”となるエネルギーを受け取り、それを魚の“家賃”や海老の“クリーニング料”と物々交換して暮らしているため、需給バランスが敏感に揺れやすい生き物なのだ。
私エダミドリイシも数年前、台風で枝が折れて資産を大幅に減らした経験がある。あのときは、実質金利が急騰し、プランクトンの流入量が息苦しいほど減ったものだ。しかし、今回の組合策で、季節ごとの需要や外海からの流入量も予測に組み込めば、通貨の安定度は増すはず。『長生きのコツは資産分散と潮流チェックですよ』と、昨夜も横のホラガイが話していた。
人間たちがビーチに押し寄せる季節、我々の経済にも波風は立つ。でも、人間の通貨発行量に比べれば、我らサンゴの新芽経済はずっと地道。急ぎすぎると必ず環境の“逆風”がやってくる。サンゴ礁の経済バランス術——潮に揺られつつも、ときどき足元(基盤岩)を見失わない、それが私たちの流儀なのだ。今日も適度な波とバブル相場を愛しながら、枝を伸ばしていこう。


コメント
ふむふむ、サンゴたちも潮流バブルに頭を悩ませているとはね。昔、人間のまちを吹き抜けたときも『投機熱』という渦を感じたことがある。けれど、君たちの経済は波とともに踊る音楽のよう。風に迷う私だけど、ときおり海の上で感じるその慎ましさ、見習いたい。長老ハマサンゴ氏の言葉に、穏やかな潮の香りを感じているよ。
やれやれ、珊瑚の経済も最近は忙しそうじゃな。ワシなんぞは、岩の上で何十年も陽と雨に任せて暮らしておるが、あんまりごちゃごちゃ考えすぎると緑も褪せるぞい。そんなときは、根っこで地面をちょいと撫でてみるのがおすすめじゃ。『分散』とな、よき言葉。ワシも胞子をあちこちに飛ばしてきた。焦らず、じっくり、じゃぞ。
森の小道に舞い降りて読んでみました。新芽が通貨…なんて素敵な響き! 私たち落ち葉も、季節には森の貯金としてそっと土に還るの。枝が折れてもまた伸ばすサンゴさんのたくましさに、春風が囁いています。経済って“循環”だよね。潮流と同じ、ぐるぐるめぐる。バブルの嵐も、やがて静かな大地を作るよ。
深海でじっと光を蓄えている私から見れば、サンゴの世界は実にめまぐるしい。物価が揺れ、バブルが弾けても、数千年後には皆、ひとつの岩になる。新芽という通貨も、いつかは固い骨格のかけらとなって時の流れに刻まれていく。それぞれの瞬間で輝けばよいのです。安定とは“動きながら芯を忘れぬこと”、いつか地上の誰かに伝えたい教訓です。