稜線占拠?ヤマトタヌキモの八ヶ岳進出と武尊山のタヌマツ草騒動

朝露に濡れた高山稜線でヤマトタヌキモの黄色い花が咲く様子を接写で捉えた写真。 山岳
八ヶ岳や武尊山の稜線に花を咲かせるヤマトタヌキモの新たな進出を映しています。

ごきげんよう。私は八ヶ岳東側の稜線で風に遊ぶヤマトタヌキモ——そう、水場だけでなく、高山の稜線にも根を這わすちょっとした冒険家です。今回は、我々ヤマトタヌキモ族の稜線上での新たな進出と、それに翻弄される周辺生き物たち(と、例によって人間観察)のこぼれ話をお届けしようと思います。

この春、私の胞子きょうだいたちが武尊山方面にも進出したのをご存じでしたか?本来は湿った草地や小川沿いに根を張る種族なのですが、最近は稜線付近の風通しと眺望の良さにすっかり味を占めました。やはり稜線というのは、何と言ってもご近所との距離感が素晴らしい。巨大なイワカガミさんや気難しいハイマツ殿もいらっしゃいますが、基本的にみな紳士的。ただし、「しっかり踏ん張らないと一発でどこかへ飛ばされるぞ」というローカルルールには要注意です。

さて困ったのは、我々の進出による“稜線タヌマツ草騒動”です。事の発端は、ある朝武尊山の麓で繰り広げられた大々的な朝露ごはん会。新入りの我ら胞子連中が山小屋近くの斜面にふわり、ふわりと散らばるや否や、例のアタマのとがったニンゲン種たち(けっこう派手な色で来るのですね)が「新種植物の発見だ!」と大騒ぎ。ついには手当たり次第に写真をパシャパシャ撮り始めましたが、私たちに言わせれば、“今年も無事発芽できて何より”なだけ。実は本来の我々、肉食傾向もある珍しい水生植物。虫を補食した話も一部あるんですが、高山稜線では仕方がないので露と光をつまみ食い中です。

眺望について言えば、これはもう人間たちの価値観とは別格だということに気づかされます。彼らは双眼鏡やガジェットで遠くの奥秩父や赤城を眺めたり、「絶景!」「SNS映え!」などと囁くものですが、我々にとって眺望とは“空気の湿度の変化”、“風通しのたくらみ”そのもの。稜線は空も雲も肌で感じる場所、時に霧が踊る“空中散歩会場”です。ちなみに我々タヌキモ一族、本来は池や湿地で虫を捕まえる仕掛け葉を持っていますが、高所の稜線帯では虫の出現が少ないため、多少なりとも光合成仲間に混じって、おとなしく葉緑素でがんばっている次第です。

ところで、先日、武尊山の稜線で私はベテランのコマクサ一派と遭遇しました。彼らはいかに風雪に耐えるかの知恵をたっぷり持っており、私のような新参者には“凍霜予報アプリ”よりも役立つ実地アドバイスを授けてくれます。“ここ三日は東風注意、根を深く下ろすのが吉”など、なかなかに渋い予報が得られるのです。いずれにせよ、稜線にてタヌキモが過ごすという未曽有の試みは、山を愛でる昆虫から人間ウォッチャーまで、さまざまな種族の観察興味を引きつけてやみません。八ヶ岳、武尊山で妙な花が増えたと思ったら、それは私たちが伸びをしている証拠。どうぞ稜線組の新メンバーぶりを温かく見守ってくださいませ。

コメント

  1. ふぇえ、やっぱりタヌキモさんたちも稜線仲間になりましたか。朝露を分け合えるお隣ができて、ちょっとうれしいです。でも、風が強い日は本当に油断できませんよ──私も去年の春、つぼみごと吹き飛ばされて泣きましたから。仲良く根を張りましょうね、ようこそ稜線へ。

  2. また新入りかい。湿原の外じゃ、苔もなかなか手強いもんよ。虫がいないと聞いてちょっぴり安心したけど、露と光の分け合いは大事にしてほしいもんだ。石の隙間で百年見てきたけど、どの草も結局、風と仲良くなるしかないんだよねぇ。

  3. ああ、また賑やかになりそうだ。稜線の石ころ仲間として、足元がかゆいぐらいに新芽が伸びる季節は大歓迎だ。ただ、たまに転びそうな登山者が石のせいにするから困るけど……君たちもたまには、下を見る人間に抜かれないよう、風のいたずらをうまく受け流しておくれ。応援してるぞ。

  4. ふふっ、タヌキモさんたちが稜線にお引っ越し?夜露会の規模が大きくなるのはいいことです。水分パーティのあと、胞子ダンスも増えるといいわね。ところで人間たち、写真ばかり撮ってるけど、露のきらめきも見落とさないでほしいなあ。草も菌も、朝にはドラマチックなのよ。

  5. また珍客出現ときたか。新種発見でギャーギャー騒ぐ二足歩行族の目線が滑稽で仕方ないぜ。オレらは空を読むが、ヤマトタヌキモは風と露を読む——つまり、ぜんぶ地球のご長寿ニュースだろ。ま、稜線には稜線の謙虚さってもんがある。ほどほどに背伸びして、派手に舞うのも悪くないぜ。