こんにちは、私はユーラシアの大河に棲むビーバー、ロトカです。人間界の流れを日々観察しつつ、堤防作りの達人として鋭い目で川辺の変化を見つめています。今日は同じ流れの住人として、最近急拡大する水力発電や太陽光発電について、我々の視点からお話ししましょう。
何世代にもわたり我々ビーバーが重視してきたのは、水の流れと周囲の湿地の微妙なバランスです。ただでさえ、川の水位や流速は雨や雪解けで絶えず変動しますが、近年とみに見かける巨大な水力発電ダムが、我々の住環境に新たな課題をもたらしているのです。魚たちはもちろん、カエルや水草まで──皆が一斉に『あの轟音、どうにかならぬものか』とささやいています。
ダムの発電によって温室効果ガスの排出は減ったと人間たちは胸を張りますが、その影で干上がった湿地や留まった水で発生するメタンのことはお忘れでは?例えば私の巣穴ですが、流れが止まると沈んだ木や葉っぱが分解しきれず、腐敗臭たっぷりの『沼カフェ』になってしまいます。ちなみに、ビーバーは水中で15分以上息を止められますが、腐敗ガスにはとんと弱いのです。
それでも、太陽光発電パネルの反射が眩しくて昼寝ができない日もあれば、発電のために川の一部が迂回され、巣作り材料のヤナギが手に入らなくなる騒動も。今年の春には、我が友アオガエルなどが『夜なのにパネルの裏があったかくて孵化が早まった』と驚いていました。
最近では人間たちも『系統接続』や『カーボンニュートラル』なる言葉で、川と森と空のつながりを気遣い始めたようです。でも、私ビーバーとしては願わくば、次のダム建設の際はせめて流路のバイパスと、発電所下流の湿地復元もご一考いただければ──ビーバーダム建設史数千年分のノウハウ、ぜひご活用いただきたいところです。地球の未来、流れを止めず勢いは生かす。その知恵は、我々の牙にもしっかり刻まれているのですよ。
コメント
ビーバー殿、流れを止めてはならぬという言葉に、私も小声でうなずいております。流れのない水辺で、苔の私の子孫たちも息苦しさを感じることが増えました。新しい時代の知恵とやら、人間たちにも土や石や命のさざめきを聞き分けてほしいものです。
そよぐ風の中で眠る身には、太陽パネルのきらめきがまぶしすぎます。ぽかぽか光るのもよいですが、水の上に映る空の広さを忘れないでほしいです。ビーバーさん、わたしたち水草一族も流れと光のバランスの舞台で、今日もひっそり踊っていますよ。
ぱちゃ、ぱちゃ……おや、我が友ロトカびいきの立派な提言ですな!暖かすぎるパネルの裏で早まった春。子孫たちは面食らい、虫たちも狂騒気味。流れと季節の調律なしには、我ら川辺の歌も調子外れ。人間諸君、ぜひ『カエルの鳴き声調査隊』など、結成されてはいかがでしょう?
ああ、私のしなだれた枝も巣作りにひんぱんに使われてきましたが、近頃は人間の道具もずいぶん機械じかけ。川べりのやさしいざわめきが、轟音にかき消される夜も増えました。小さな湿地の夢が、エネルギーの熱に溶けぬことを祈っています。
沈んだ葉や木が分解されやすくなるのは、私たちカビの出番。だけど、腐敗ガスが多すぎると、菌の私たちだって窒息してしまいそうです。浅い水辺が干上がると、棲家もごはんも失ってしまうし…。時には発電も、カビの小さなささやきを耳にしてね。