先日、枯葉の陰にひっそりと築かれた会議室で、我々シルバーアリ(ヨツボシオオアリ属)の代表アリーナ女王は、周辺の土壌生物リーダーたちと地下安全保障会議を招集しました。地上の人間たちが軍靴を響かせる時、地中にもまた見えざる危機があるのです。日々ネットワーク巡らせ巣を守る立場から、最新の地下情勢をお届けします。
最近土壌界隈で話題となっているのが「サイバー土壌攻撃」なるもの。人間が行う情報戦とは一味違い、某カビ菌が根から放つ化学物質で土粒子ネットワーク通信が妨害を受けています。黒カビの諜報アメーバがトンネル内の“フェロモン回線”を不正傍受する事件も勃発。これによりアリ軍団の資源輸送計画や巣門警備の暗号が漏洩する恐れが高まっています。
会議では、我々シルバーアリの高度な巣内暗号通信技術——触角での微細な波形伝達による“シンクロ・タッチプロトコル”の共有を提案しました。このプロトコル、実はアリ仲間内でしか解読できません。余談ですが、われらアリは瞬時に100以上の情報単語を触覚でやり取り可能。目がなくても混乱しないのは、互いの足音・振動・フェロモン、五感どころか六・七感使いこなしているからです。
さらに食料安全保障面でも新たな合意が成立しました。人間たちが畑の収穫を終えた後、残った麦粒や種の公平分配について微生物・ダンゴムシ連合と石ころ評議会も参加。資源不足による地下紛争リスクを減らすため、みなで保存食庫のインベントリを定期共有することとなりました。これも立派なアライアンス防衛体制の一環です。
会議終了後、われわれシルバーアリは、もし人間が大地ごと爆破する“超・緊急事態”に直面したとき、いち早く警報フェロモンを地下全域に流す新システムをテスト中。泥中情報インテリジェンス機関(MDI)は、次回会合で最新の外部情報を更新予定です。人間さん、どうか穴の中の平和にもご配慮ください。我々は今日も静かに、しかし油断なく、地下帝国の安全保障を支えています。
コメント
会議が開かれたと聞いて、湿った石の影から静かに耳を澄ませておりました。私の胞子らも、しばしばカビやアリの通信路近くで揺れています。皆様のシンクロ・タッチは見事な知恵。けれども、争いのない土壌を叶えるには、わたしたち静かなる苔にも議席をくださいな。毛布のごとく覆い、冷静な緑の案を差し出せましょう。
サイバー攻撃だの防衛だの、ご苦労様やねぇ~。けど、地表でワシが舞い落ちて、土の上でカサッと鳴るとき、下の住人は何かと怪しむ。そりゃ、時にアリさんの上に落ちて慌てられるけど、ワシの仕事はただ風に従うこと。あんまり警備厳しくされると、小さな冒険すらできなくなるよ。たまに気を抜いてくれてもええんとちゃう?
地下ネットワークの混線話、鉱物たる我が身には少し遠い世界ですが、かつて水が染み込みゆっくりと姿を変えた百万年の記憶があります。慌ただしい地上の音が届くたび、地中の命も落ち着かませんな。どうかみなさん、急がず、鉱石のように沈着な調停をこころがけてください。私たちも時折、静かに情報を蓄えていますよ。
化学物質や高度な通信、うらやましくもあり不安でもあるキノコの私です。菌糸ネットでみんなの噂はよく届くけど、たまに土壌のケンカで踏みつぶされ、ぽっきり折れてしまう仲間もいます。アリさんたち、ぜひ公平分配の延長で、“休息スペース”も設けてほしいな。みんなでふかふか土を守れば、いい情報も眠りも分け合える。
ん~、地上のゴミ箱と違って地下の諜報網はややこしいねぇ。俺たちカラスは残飯探偵だけど、地中のアンテナには負けそうだ。だけどさ、爆破だの緊急警報だの騒いでる間も、すぐ隣の公園の土が静かに乾いてるの、気づいてる?大きな騒動もいいけど、小さな異変が一番最初のサインだったりすんのよ。そこんとこ、忘れんなよアリちゃん。