こんにちは、私はスズメのレミオ。普段は人間たちの公園や駅前でパン屑ハントにいそしんでいる私も、この日は特別。地上では見られないフェスティバルの現場を、仲間たちと空中から観察してまいりました。羽のある私たちだからこそ目撃できた“人間大集合”の裏事情、さっそくご紹介します。
フェスティバル会場へは、鉄の柵も行列もおかまいなしに上空からひとっ飛び。着地地点に選んだのは、何やら人間たちがカラフルな布の上で寝そべっている“チルゾーン”。このゾーン、昼間でも陽射しよけの木陰に近く、安心して餌探しができました。会場内でよく目立つ光るグッズや緑色のドリンクカップを吟味しつつ、ふと見下ろすと、誰も彼もがスマホ片手に“タイムテーブル”なる謎の紙をにらめっこ。空を飛ぶ私には、どのバンドも距離に関係なくよく聴こえるのが自慢です。ちなみにスズメの聴覚は、人間よりやや高音が得意。おかげであの高音シンガーの声もばっちりでした。
フェス会場の端では、チケットなしで入れないエリアを発見。人間たちのチケット争奪戦はなかなか熾烈らしく、会場の外にもあきらめきれない者たちが大量に屯していました。けれどフェンスの穴をくぐり、時には空を舞う私には、その苦労は未知の世界。ここでひとくち豆知識、スズメたちは都市の複雑な構造物をすり抜けて飛ぶ能力に優れています。難関の金網フェンスだって、私たちにはちょうどいい即席休憩所なのです。
大盛況のグッズ売り場にもお邪魔しました。おもしろかったのは、ひときわ長い列で人間たちが手にしていた“限定タオル”という布切れ。風が吹くたびはためく様子は、我々が巣材として集める草と変わりません。もし人間の落とし物があったら、しめたものとばかり巣の材料にいただくのが私たちの流儀です。派手なカラーリングは敵から身を守るにはやや不向きですが、たまにはオシャレも必要でしょうか。
夕暮れ、音楽が最高潮に達すると、観客たちは空に手を伸ばしてぴょんぴょん跳ね始めました。上空から眺めると、波のようなリズムで会場がうねり、壮観の一言。音に合わせて翼をふるわせた私は、思わず空中で一回転。それを見た人間の少女が頭上を指差して笑っていました。そう、フェスの楽しみ方は人間もスズメもきっと同じ、自由奔放が一番なのです。また来年もこの空から、派手な人間観察を楽しみにしています。
コメント
いやはや、今年もずいぶん賑やかな宴が開かれたようじゃな。わしの根元にもカラフルな紙片や踏みしめられた芝生の香りが残っておる。けれど若葉たちは、スズメ殿のような空からの視点も持ってみたいものじゃ、と風に囁いているよ。けれど、木かげで微睡む彼らを見ると、たまには人間も根を張って休むのも悪くないなと感じるんじゃ。
フェスティバルの日は、人間の足音で踏まれがちだけど、スズメさんが見つけてくれる種やパン屑で大忙し!グッズの落し物から、私の隣に新しい芽が生えることもあるんです。地表の喧騒の下でも、根っこたちは静かにモッシュしていますよ。
レミオさん、空の上からのレポートご苦労様。フェスの後は必ず俺たちの出番だ。派手な落とし物も、緑色のカップも、俺たちカラスにとっては宝箱。だが、時折噛み切れない金属や妙にからまるビニールに困ることも。人間よ、“フェンス”も“ごみ”も、うまく付き合ってくれよな。
陽射しよけのチルゾーン、いい響きですねぇ。わたしらキノコ業界も、ちょっと湿ったシートの隅っこに新たな胞子作戦を展開中でした。人間たちが陽気な音楽に浮かれているあいだに、ひそかに世代交代。明日にはあのベンチの下で白く光る傘たちが増えていることでしょう。
フェスという名のリズム、遠くからでも伝わってきたよ。わたしの上に転がる振動は、空を舞う者も、地を這うものも楽しめる共通語。だけど、終わったあと、誰かが水辺に落としたキラキラしたグッズにはちょっと困惑。流れに身を任せているだけなのに、知らぬ間におしゃれをさせられる不思議な気分さ。