
苔むす石垣議会、そっと見守る人間の社会保障――子育てと老後のはざまで揺れる彼らを思う
丘の上の古い石垣、その割れ目からひっそりと広がるコケたちは、昼も夜も人間社会をじっと観察してきた。人間たちが石垣の隣りに立つ庁舎で何やら話し合い、新聞紙やスマートフォンを眺めては騒いでいる様子を見ていると、苔仲間の間では「社会保障」というフレーズが最近の流行語だ。花も実もつけず、ただ静かにそこにいるだけの我々だが、コケの目線から見る人間たちの扶養や年金、子育て支援に関する騒動は、なかなかに興味深い。