サプライチェーン

大西洋沖のムール貝が目撃した、人間サプライチェーンの大渋滞

朝もやの海中に漂えば、わたしの殻にはすぐにニュースが引っかかる。大西洋の岩礁に根付いて70年、無数の荷船が我が上を通り過ぎていく光景は、もはや日常だ。しかし、最近の潮の流れには何やらざわめきが混じっている。サプライチェーン、という言葉が人間たちの口から何度も泡のように浮かび、海流を介して世界中に拡散しているからだ。
ファッションスタイル

公園のハト、最前線ストリートファッションを羽音で解説

君たちは、羽ばたく合間に人間が地上を彩る装いを観察したことがあるだろうか。羽をふるわせて暮らす私、都市公園のハト(体格標準・羽色グレー)は、毎日同じコンクリートとベンチの上から人間の着こなし戦争をつぶさに見つめている。彼らの“ストリートスタイル”なる現象、その進化には、正直なところ羽根を膨らませざるを得ない驚きがつきまとうのだ。
リモートワーク

「静けさよ、戻れ」図書館の苔が嘆くリモートワーク時代の新たな侵略者たち

わたしは石造りの図書館玄関脇、北側レンガの目地にひっそり拡がる苔、齢十数年。人間たちはほとんど私の存在に気づかず通り過ぎてゆくが、ここ数年、職場にも家にもこもらず、この静謐な館内にパソコンを抱えて乗り込んでくる姿が増えている。どうやら「リモートワーク」なる奇妙な営みが流行しているらしいのだ。
景観

森の主、スカイラインの異変を語る――光る塔と緑の波の夜景論争

私の根元には静かなこけむしろが広がり、遥かな梢では風がささやく。空高く伸びる杉の大長老(樹齢183年)として、この地のスカイラインの変遷を誰よりもよく見てきた。近ごろ野鳥たちがざわめいたのは、丘の向こうに人間たちがいくつもの塔や明るい光を伸ばしたせいだ。夜景の魅力だというが、木々としてはちと複雑な気分だ。
福祉政策

芝生の苔が見た人間福祉政策の光と影~根っこ視点からの報告

こんにちは、噴水公園の西側、5平米の芝生に根を張るコケたち代表として、私クラマゴケP.が地表からしっかり観察した人間社会の福祉事情をレポートします。あちらの世界では“自立支援”や“高齢化社会”という単語がよく聞こえてきますが、果たして土中から見上げたその現場は、うまく機能しているのでしょうか?
バーチャルリアリティ

路地裏の苔、急増する人間のVR活動を観察「仮想の森には風がない」

ここは路地裏、冷たく湿ったコンクリートの上で静かに光合成している小さな私——ハイゴケの仲間です。最近、ひんぱんに通り過ぎる人間たちの話題ときたら「バーチャルリアリティ」一色。どうやら自分たちの現実(フィールド)をもう一つ作って、その中で学んだり遊んだりしているらしいのです。苔目線でこの不思議な現象、「VR教育」や「バーチャルイベント」の波まで観察してみました。
格闘技

地中流格闘技チャンピオン決定戦 ― ミミズたちの熱き寝技バトル

おお、またこの季節がやってきた!地表のヒト族が桜や格闘技イベントに夢中になっている頃、ぼくら地中組でも熱戦が繰り広げられていたのをご存知だろうか。長年湿った畑の片隅から観戦しつづけている私、畦道のミミズ(90リングメートル)は、今年の地中流総合格闘技大会についてレポートしたい。
ESG投資

森の長老オークが見た、人間たちの“ESG投資”という新儀式

ここは丘の上、枝いっぱいにリスや鳥を抱え、数百年この地を見守ってきたオーク(樹齢382年)だ。近ごろ、街の向こう側で人間たちが“ESG投資”なるものにえらく夢中らしい。森の静寂の中から眺めていると、彼らの騒々しくも興味深い動きを実に不思議に思うのだ。
地域社会

大樹の下のどんぐり会議、コミュニティセンターで新芽躍る

古びたコミュニティガーデンの隅っこに住む私は、百年の樹齢を誇るコナラの根元に生まれ落ちた、転がるどんぐり。今日はあの人間たちが、われらどんぐり一族の頭上で“地域コミュニティの祭り”なるものを開くらしい。
eスポーツ

カラスの目から見たeスポーツ最前線:ハトVS子ども達のバーチャルバトルロワイヤル

さてさて、電柱のてっぺんで今日も街を見下ろす私──町内観察歴17年のカラスにとって、最近の人間界は見飽きないほどの「バトル」続きだ。だが、その戦いも路地裏のチュンチュン騒ぎだけではない。空を舞う我々が今もっとも注目している娯楽、それが「eスポーツ」だ。窓越しに覗いた人間の部屋で、不思議な箱(どうやら“ゲーミングPC”と呼ばれるらしい)を囲み、爪もない羽なし生物たちがバーチャルの戦場で大熱戦を繰り広げているのだ。