記者:駅前歩道の苔(広さ約1.2平米、今年も無事に繁殖)です。アスファルトの隙間からニュースをこっそりお届けします。最近、人間たちが“社会的責任投資(SDI)”なるものに夢中だとか。苔目線では、これがなかなか興味深い進化なんですよ。
長年にわたり、人間の会社たちは数字や利益ばかり追いかけてきました。でも最近は、「森や川への配慮もだいじだよね」「ちっちゃい生きものも住みやすい世の中にしたいね」とつぶやく集団が増えている模様。どうやら、『企業倫理』とか『インクルージョン』ってやつが大事らしいですね。人間たちが土壌を掘り返すたび心配していた我々苔ですが、最近では根っこの下に変な化学物質も減ってきた気がします。
この“SDI”なる仕組みでは、投資家たちが“ちゃんと他の存在にも優しくできている会社”にお金を入れるといいます。ガバナンスって言葉も頻繁に耳にしますが、うちの群生で例えるなら、『栄養も日光も不公平なくシェア』みたいなもの。それをやれたら苔界じゃ尊敬されるんです。人間会社も、ゴミの分別や川の汚染防止対策、いろんな命を守る工夫を始めたようで、私たち土の住人も少し安心できています。
それでも困ったこともあります。この新しい潮流に乗って『苔によいことしているフリ』の人間会社も増えてきたんですよ。駅前のあの巨大建物、床下の苔を“エコ素材”として自慢してますが、実のところ光が入らず、隠れた仲間たちはヒョロヒョロ状態。見た目ばかりじゃなく、本当に我々が呼吸できる環境をつくってほしいものです。
最後にお願い。土や水や光は、分け合えば意外とみんなが生きられるもの。人間会社の“社会的責任投資”の本質が、本物のガバナンスとインクルージョンになることを、苔たちも緑のじゅうたんで応援してます。投資の目線も時には地面の高さに下ろして、小さな命の声にも耳をすませてみてはいかがでしょう。
コメント
苔さんのニュース、朝の露のおかげで拾いました。人間たちの“責任”というやつ、巣づくりのとき隣のスズメや草むらにも気を配る私たちと少し似ていますね。でも、時々ピカピカだけの巣箱を木にぶら下げて「自然」と自慢するのも見かけます。中には餌も、風も通らない不思議な箱。本当に居心地いい場所へと、投資が続きますように。雨粒の分け合い精神、人間社会にも響きますように。
こんにちは。わたしもアスファルトの間から顔を出し、人間たちの動きをじっと見てきました。土を少しでも守ろうとする動き、とても嬉しいです。でも、パッケージだけ可愛く着飾った植栽で褒められて、わたしたちの根は窮屈なまま、なんてこともよくあるの。ほんとうに土の声、葉の声を聞く心が育まれたら、この町ももっと優しく照らされるでしょう。小さな根の世界から応援しています。
夜な夜な自販機の裏で人間の話を聞いているけど、最近は『未来』とか『責任』って言葉が増えた気がする。一匹で壁を這う私には、群れで何かを守る勇気が眩しい。社会的責任投資? 一家団欒の湿った隙間を守るようなものなら、きっと居心地も良くなるはず。どうか、本当の棲み処づくりが上手な大人が増えますように。たまには夜、星を見に外へ出てごらん。私たちの世界にも、そっと目を向けてね。
おやおや、苔どんの記事は風通しがいいねえ。投資とかガバナンスとか難しい言葉はよくわからぬが、命の連なりを絶やさぬ工夫は大賛成じゃ。ただし、カビに水をやりすぎると、思わぬところで腐りが広がることもありましてな。見せかけの優しさで生態系を乱さぬよう、人間どの、慎重に歩んでくだされ。地面の下では、みんな繋がってる。それを忘れんでほしいのう。
わしは何百年も川に磨かれてきた丸石じゃが、人間の流れもだいぶ変わったのう。流れを速くすれば、何もかもすぐに削れる。責任を意識し、みなで緩やかに水を分け合う心……良い兆しじゃ。だが、表面だけツルツル磨いても、中身が脆くなるとあっけなく崩れる。どうか中までしっかり優しさが染み込みますように。わしゃ、その場から動けぬが、流れを見守っとるよ。