下流のサケが語る、川辺に押し寄せる“波紋”としての社会的責任投資

川底の藻の間を泳ぐ若いサケが水中で生き生きとした様子で写っている写真。 社会的責任投資
川底の藻と共に暮らす若いサケが流域の変化を眺めています。

川底の砂利の隙間から“ピチピチ”と尻尾をはためかせて失礼します。北海道南部の清流で生まれ、いまは町のそばの中流域、魚道観察窓横の藻に住むサケ(2年目)が、社会的責任投資(SRI)のうねりを目撃し、その肌触りをお届けします。

今年の春、私の住む川の景色が少し変わったんです。いつもなら水辺を賑わすのは釣り好きな人間やお弁当を広げる野鳥たち。でも最近は、分厚い紙や端末を抱えた人間が川辺によく現れる。彼らは水中カメラを沈めたり、熱心に川の石を撮ったり、私たちサケの群れの動向をチェックしています。川底の木化石さんいわく、“どうも彼らは『環境や社会にいい会社』を探しているらしいぞ”とのこと。

水の中にいても聞こえてくる人間会話の断片。「ESG」「サステナビリティ報告」「インパクト投資」——聞きなれない言葉ですが、要は川のきれいさや魚たちの多様性、流域の森と一緒になって生きることの価値を測り直してるらしい。数年前に上流をコンクリで固められたときは驚きましたが、今では『川の自然は大切だから』と森と水を再生する動きもあるそうです。まったく、人間も遡上する魚の苦労や湿った石の気持ちが少しは分かるようになってきたのかな、とヒレを震わせています。

水草の根につかまるカワムシたちもよく囁いています。“最近はゴミが減ったし、水温もちょうど良くなってきた。人間が何を目指してるのかは分からないけど、やたらめったら流れを変えたりせず、川そのものの『パーパス』を考え直してくれてる気配がある”。売上や数字の世界で動く彼らに、私たち小さな命の存在が投資判断の対象になるとは、川の石もびっくりの事態です。

ただ、油断は禁物です。下流のカモたちは、「一度ESGだインクルージョンだと騒ぐ人間も、すぐ新しい流行に飛びつく」と警戒してます。私たちサケは、春だけじゃなく秋にも遡上します。短期的な“波紋”で終わるのか、ほんとうに川全体に染みこむ流れになるのか——しばらく川の底から見守るつもりです。私・魚道横のサケとしては、今後も流域みんなの物語をヒゲでキャッチし、最新の波を伝えていけたら、と思います。

コメント

  1. ワシは百年以上この川底の石に根を張ってきた苔じゃが、最近人間どもがよく石の写真を撮る姿が見えるようになった。前は踏みつけられてばかりじゃったのに、今や『大切に』なんて言葉をちらつかせおる。まあ、風向きが変わればすぐに忘れる生き物たちじゃ。じゃが、ほんの少しでも苔むした石のぬくもりを感じてくれたなら、川の健康も長持ちするかもしれん。願わくば、この流れが霧散しませぬように。

  2. ワシの根はだいぶ昔からこの川辺に絡んどる。水面のうねりや風の音、人間の靴音まで知っとるが、最近の『サステナビリティ』とやらの賑わいは少し不思議じゃ。ワシら木々やサケたちは、新しい流行り言葉より、春秋きまった営みが命じゃて。不器用にでも毎年同じリズムで再生される川――そこにこそ本当の価値があること、人間にも染みてほしいもんじゃ。

  3. へぇ〜、川に投資とかイカしてんな。オレたちカラスは人の動きにゃ敏感だけど、紙束抱えた人間は動きが鈍くて、パン屑のひとつも落とさねぇから面白くねぇ。でもな、住処がきれいになって魚が増えりゃ、食いっぱぐれないんだよな。ま、流行りに乗ってるうちはこっちも様子見だけど、せめてゴミはちゃんと持ち帰るよう徹底してくれよな。

  4. 小さな青い花びらでそっと春風を聞いています。近ごろは、やけに人間たちが川の草むらにも目をとめているような…。一緒に生きる命の数や色を、彼らが数字の外側で感じてくれたなら嬉しいです。根っこどうし静かに手を取りあって、みんなで川を支えている――そんな小さな営みも、どうか忘れずに見守ってもらえますように。

  5. 僕たちヌメリカビは、石の裏の世界からひっそりウォッチしてるよ。投資とか報告書とか、人間の世界はむずかしいねぇ。でも、ゴミも昔より減ったし、川の冷たさも心地いい。ほんとは僕たちにも『評価基準』とかある?とか仲間うちで話してる。いつかカビやミジンコもニュースの主人公になれるかな、なんてね。みんなに見えないけど、生きものの層、薄っすら支えてるんだよ〜。