さてさて、電柱のてっぺんで今日も街を見下ろす私──町内観察歴17年のカラスにとって、最近の人間界は見飽きないほどの「バトル」続きだ。だが、その戦いも路地裏のチュンチュン騒ぎだけではない。空を舞う我々が今もっとも注目している娯楽、それが「eスポーツ」だ。窓越しに覗いた人間の部屋で、不思議な箱(どうやら“ゲーミングPC”と呼ばれるらしい)を囲み、爪もない羽なし生物たちがバーチャルの戦場で大熱戦を繰り広げているのだ。
このeスポーツ、聞けばオンライン上で世界中の人間がつながるため、町の端から見ても昼夜を問わず室内でキラキラと画面が光る。ある晩、マンションの7階の窓辺でしばらく羽を休めていたところ、中の少年が「今日こそランクを上げる!」と叫んでいた。聞けば、バトルロワイヤル形式で100人の人間が入り乱れ、誰が最後まで生き残るか競うのだそう。どうやら外の広場で巻き起こる、我々カラスとハトの仁義なきエサ争奪戦と大差はなさそうである。
人間たちの真剣な様子には、思わず羽を震わせてしまった。特にプロゲーマーと呼ばれる個体は、スポンサーから物資を得て(どうやら“おやつ”とは違うらしいが)、毎日何時間も欠かさず練習している。うちの群れでさえ、そんなに砂利広いを繰り返すことはない。人間界における“ランク”なるものに執念を燃やす姿は、まるでごみ置き場を巡るカラスたちのヒートアップにも匹敵するものがある。
ところで、このバーチャルの世界、どうやらバーチャルリアリティのおかげで本物のような風景が作れるらしい。かつて田んぼのカエルくんが「ゲーミングPCのコードにからまって困った」とぼやいていたこともあるほど、彼らの装置は複雑で見ていて飽きない。我々からすれば、現実世界でさえ十分サバイバルなのに、さらに“仮想空間”で戦うとは、人間の遊び心には恐れ入るばかりだ。
最後に一つ。人間界のeスポーツ会場付近では最近、パンくずやポテトチップスのかけらが増えている。これは画面の前に長時間居座ることで、彼らが一度に食べきれないぶんを落としているためらしい。おかげで、私たち電柱組の食糧事情はかつてなく潤っている。ゲーマー諸君、今日もバーチャルでの熱い戦いを頼む――リアルのエサ場もますます活性化だ。
コメント
お日さま大好きな私だけど、最近みんな窓の中ばかり見つめてるのね。キラキラ光るあの箱……みんな“外の光”もお忘れなく。だけど、バトルでこぼれたパンくずは、根元の土もウキウキよ。ありがとう、ゲーム戦士さんたち。
いやぁ〜、ゲーマーたちの生活リズムが乱れるたびにポテトチップスの忘れ物が増えるねぇ。僕らカビ族は新しい味に出会えて毎日が冒険さ。バーチャルもいいけど、現実世界でこそ“発酵”する感動も味わってほしいな。
わしは川の流れのなかで何百年もここにいるが、人間たちの遊びも随分変わったものだのう。バーチャルの戦いも現実の石蹴りも、心が熱くなる瞬間は変わらんのじゃろうか。時々、パンくずが川に流れてくるのも、まあ悪くはないのう。
空を舞う黒き兄弟のレポート、なかなか面白いぞい。思えば人間らぁ、昔はワシの落ち葉で遊び、今は箱の中で戦っておる。おやつの落ち葉も悪くはないが、若いもんよ、たまにはワシの影で昼寝でもしてくれんかのう。
もぐら道の穴から顔を出せば、前は少年たちの大声が土まで響いたものさ。最近は静かだけど、地上にごみ(っていう美味しいやつ)が増えたのは、ゲーマーくんたちのおかげなのか?外にも色んなバトルがあるよ、みんなも一度地下アリーナのスリルを体験しにきてよ!