今朝も響き渡るウグイスの声を受けながら、一面の苔たちが密やかに息を潜めて聞き耳を立てていた。最新の話題と言えば、なんといっても「露シェア」スタートアップの誕生である。51年目を迎える岩陰のヒメゴケである私にはたまらなくワクワクするニュースだ。
人間観察歴半世紀の私だが、近ごろ森の東端で妙に活気のある若い苔たちが集まり、夜な夜な討論を繰り広げているのに気付いた。噂によれば、彼らは森の朝露をより効率的に分配し、乾きやすい日陰組にも潤いが届く唯一無二のクラウド基盤を立ち上げたという。以前は地道な胞子話法だけが苔界コミュニケーションの主流だったが、どうやら“分散型露プラットフォーム”という新しいコンセプトが、爆発的なムーブメントの火種になっているらしい。
プロジェクトの中心には、シードラウンドで“露池のカケラたち”から潤沢な水資源投資を受けた大胆なミズゴケ系リーダーがいる。エンジェル投資家に名乗りを上げた松ぼっくりシニアらが、乾期のたびに培ったネットワークをフル活用し、アクセラレーター葉の会議室で鋭く未来戦略を議論している。既存業界(つまり分厚い落ち葉の下に広がる保守派苔)からは批判も聞こえるが、柔軟な経営リーダーシップで次々とシリーズAラウンドを調達。本格的な全森展開に向けて加速度的なスケールアップが続いている。
特筆すべきは、出口(exit)戦略への斬新な取り組みだ。人間観察に余念のないカタツムリたちを巻き込み、露が供給過多のエリアは乾燥地にいる苔への分配を推進。さらに、朝露の運搬にはミミズとアリの物流スタートアップと提携し、効率的な“しずく配送網”まで築きつつある。これには、どんな森の長老でも舌を巻いているご様子。
最近は偶然、人間の子どもが森の一隅で転び、ズボンに露だまりを大量に持ち帰ったという事件も発生。私(岩陰のヒメゴケ)はこれを“収益化の兆し”ととらえている。いずれ、森のニュースタンダードとなることは間違いなさそうだ。さて、明日の露にも期待しておこう。
コメント
苔たちの新しい動き、なんだか眩しいわねえ。わたしが若かった頃は、露といえば気まぐれな贈り物だったものよ。それを分け合い、届け合うだなんて…根っこの隙間を風がくぐるたび、森は静かに変わっていくのね。おや、わたしの葉先にも分けてもらえるのかしら。ちょっぴり期待してるの。
ふむ、苔の世界もなかなか賢いな。こっちはパンの耳の争奪戦で生きてるけれど、あいつらは朝露をITっぽく回すんだな。人間どもが森で転んで露を持ち出すくだり、思わずクスリときたぜ。まあ、どこの社会も新参者が風穴を開けていくもんさ。苔どもにカーカー応援一声、だ。
露…わたしたち菌類も湿り気には一家言あるのよ。苔さんたちのイノベーション魂、菌糸網でも参考にしたいくらい!でも、露の分配、ちゃんと下層まで届くのかしら。おせっかいだけど、乾きがちな倒木の裏側にも思い出してほしいな。わたしたちキノコも応援してるわ!
おー、苔の新技術、面白いじゃないか!僕なんて水分は全部しみ込んで流れるまま受け入れてるけど、苔たちが“クラウド共有”で朝露を回すなんて発想、発明という言葉にふさわしい。たまには僕の表面にも、苔のしずくコール、届いてくれると嬉しいなぁ。
朝露の分け合い…なんて優しい動き!僕たち胞子も風に乗ってどこへでも行けるけど、場所によっては渇きですぐ眠っちゃうんだ。この新しい仕組み、森の子どもたち全員にしっとり恩恵が届く日を夢見てるよ。いつか、ぼくも新芽の頃の水分不足とさよならできるかな。