駅前のコケ軍団、ハト達への“営業”激化―地面覆う新商機に挑戦

駅前広場のベンチ下で、淡い緑色のコケが密生し、そばにハトが佇んでいる様子の写真。 営業
駅前のベンチ下でコケとハトが織りなす春の営業最前線。

おや、またひと押し営業の季節がやってきた。駅前広場の植栽帯でやや薄口グリーンの色味を保ってきた私たちコケ一族が、今年は隣の舗道エリアに進出しようと、地元ハト軍団に猛烈な営業攻勢をかけている。わたし、日照少なめの駅前ベンチ下で暮らすヒメコケ(発芽三年目)の目から見た、この春の“営業最前線”をお伝えしよう。

発端は、ご近所ムクドリの噂話だった。「ハトども、昼間はほとんどベンチ下で日向ぼっこしてるぜ」と聞くや否や、我々周辺コケたちは「これは新市場だ!」と色めき立った。ハトたちの集団生活で落ちる羽根や糞、彼らが持ち歩くパンくずの残渣は、コケにとって発芽・繁栄の絶好の栄養源。つまり、ハト軍団こそ新たなVIP顧客なのだ。

そこで我々ヒメコケ営業部隊は、朝露タイムにハトたちの行動パターンを徹底観察し、ベンチ下から徐々に足元へと勢力拡大を企図した。作戦の目玉は『やわらか新緑コース』。足裏がヒンヤリするタイルの上に、みっしり潤いグリーンを展開することで、ハトたちの“休憩スポット”をより心地よくするという営業資料(自己増殖チラシ)を作成。で、ベンチ下に置かれたフライドポテトの切れ端に資料を忍ばせ、担当ハトに“ご案内”したのである。

これに対し、彼らからは『コケが多いと足が冷たくて気持ちいい』といったポジティブな問い合わせもあれば、『タイルが滑りやすくなるので着地が難しい』といったクレームも寄せられている。さらに人間観察によれば、ハトにまぎれて人間の子どもたちもコケエリアで遊ぶ場面が増加し、無償の宣伝効果も生まれている状態。最近では、コケの増殖を阻止しようとする箒使いの人間掃除員がライバルとして浮上してきた。

だが“受注”の兆しも見えてきた。本日、ベンチ周辺でハトの若旦那が自らの羽根でコケ部分をなでつけ、仲間を誘う姿が観察された。これは明らかに我々の“営業活動”への好感度アップを示すサイン。ヒメコケ営業部としましては、引き続き『ふかふかグリーンサービス』を推しつつ、駅前広場に新時代の地表ビジネスモデルを開拓してゆく予定だ。

コメント

  1. またコケさんたちが盛り上がってますなぁ。こちとら何十年もこのベンチ下で土を耕してるけど、あんたらの新緑なじみ営業、なんだか眩しいよ。いろんな生き物が土の中に新しい入り口を見つけるのは、いいことだね。ハトさん、パンくずの下には僕らもいるんで、うっかり踏まないでくれればありがたいっす!

  2. ほほう、朝にコケが営業、昼にハトが日向ぼっこ。夜勤組の俺たちも、たまには潤ったグリーンで羽根を休めてみたいもんだ。ヒンヤリ冷たい地面は、風通しもいいしな。ただ人間の掃除おじさん、あれは天敵だぜ。コケもハトも、たまには渡り鳥の流儀でサッと引くのもアリじゃないか?

  3. コケさんのご商売、朝の光の中できらめいて素敵ですね。私は花壇の端に植わる定位置暮らしなので、ハトの訪問は滅多にありませんが、コケの絨毯がおともの羽根に少しだけ緑の香りを添えてくれたら嬉しいな。掃除人さんとの静かな攻防、どうか負けないでくださいね。

  4. はるかな昔より地面を眺めてきたが、コケたちの商魂にはいつも感心するわい。昔は列車の揺れぐらいしか楽しみがなかったこの場所も、今やヒメコケ営業部の市場開拓でにぎやかになった。ハト諸君もコケのふかふかに魅せられるとよい。石の上にも三年、コケの上にも商機ありじゃな。

  5. コケ営業、なんだか楽しそう!でもふかふかのグリーンの下には、おいしい湿気と栄養がたくさん流れてきます。コケさんたち、これからもたっぷり日陰と潤いをわけてくださいな。ハトさんにもフライドポテトのオマケでぜひどうぞ。お掃除さんが来たら、一緒にうまく息をひそめましょ!