アリ塚直伝!進化する“顧客関係管理術”に土中から鋭く迫る

ビルの足元で地表のアリ塚の入口を多数のアリが動き回る様子の接写写真。 顧客関係管理
高層ビルの足元で働くアリたちの目線から人間社会を眺める。

地表の薄闇にごそごそと蠢く我らアリ塚(築37年)。わたしの視点から覗くと、人間たちの“顧客関係管理”なる動きが実に騒がしく、なんだか昔の巣穴運営と似たところがあって興味深い。今、人間世界ではカスタマーインサイトを大事にする一大ムーブメントが起きているようだ。言葉は難しいが、要するに“相手の気持ちをよく観察して適切にエサ(サービス)を運ぶ”という、我々アリ一族には馴染み深い技であるらしい。

どうも観察していると、人間の商売の巣穴にも“デジタルトランスフォーメーション”が猛烈な勢いで流れこんできた様子。スマートフォンというカラフルな鉄のかけらから、彼らは忙しそうに顧客と“対話”している。巣の中でフェロモンを使って情報伝達をする我々と違い、人間は電気の砂粒で思いを交わすのだとか。カスタマーサービスもアリアリの働きだが、人間たちはそれを専用の人や機械に任せている。賢いのか、不器用なのか、土塊からは判断がつかぬ。

近年、人間たちは“顧客フィードバック”を崇める傾向があるようだ。わがアリ塚においては、失敗した餌搬入や危ない道の情報は即座に全員共有され、翌日には新しいルートができる。しかし人間社会では、小さな声が電子の海を漂い、“NPS”などという花粉のような謎のスコアで集計されている。どうも巣穴の効率を数字で飾り立てているらしいが、我々からすると、もっと鼻先と足で空気を読む方が早いのだが。

そして、人間たちの“カスタマージャーニー”研究も見どころだ。女王アリが巣を立ち上げてから働きアリが食糧を運び、次世代へ生命をつなぐ長き道のり。これと似たように、人間は顧客の“流れ”を精密に追い、その満足度のすべてに目を光らせている。どうもおやつ一粒の運び方まで計算しているらしいが、ときには土くれの直感も捨てたものではないぞ、と巣の入り口で思うのだ。

高層ビルの足元で、不思議な力で土を掘りながら人間観察にいそしむ私は、彼ら流の顧客関係管理もまだまだ発展途上だと感じている。人間よ、アリのように連帯し、身近な“声”をもっと地面から聞いてみてはいかがかな。少なくとも、巣穴に漏れ入る昼下がりの振動と同じくらい、きみたちの顧客からのサインには意味があるはずだ。

コメント

  1. 人間さんたちの顧客関係管理…というの、朝露の並ぶ私たちの間でも少しは似ている気がします。水気の足りない者にはおすそ分けし、陽ざしに冷たい石陰の子がいたらそっと寄り添う。数字よりも、小さな変化の手ざわりがきっと大事なのだと思いますよ。

  2. 土の中のアリたちも人間社会も、情報伝達が命なんじゃな。だがワシら泥の世界は、うっかり流されたり溜まったり。人間よ、たまにはデータをかき混ぜる前に、その底に沈んだ静けさも感じてみい。

  3. スマートフォンとやらの光り方、ボクの破片と似ているけれど、中身はぜんぜん違いそうだね。顧客対応という仕事は、だれかが誰かの心を映す鏡だから、たまには光があふれすぎて眩しくないか、足元を見てみるといいかも。

  4. 顧客の旅路とな。毎春われらが花びらの旅も、見上げる人の驚きや笑顔を細い枝で感じておるぞ。人々の『声』に耳を傾けるのは、花も巣穴も同じこと。どうぞ、時に風に舞って耳をすましなされ。

  5. アリさんの観察、わたしも見ていましたよ。人間さんは数字で満ちていますが、わたしたち植物は静かな振動や土の匂いでつながっています。人間の『満足度』も、もっと根っこから感じ取れるといいですね。きっと風も伝えてくれるはず。