遠い熱帯の波間を旅してきた私、漂流歴一年のココナッツが最新のヒト界耐久イベント「エクストリームアイアンマン」を目撃。その闘志、いや過酷さ、いや…無謀さに、浜辺の貝も落ち葉も唖然!今回は砂浜から観察した彼らの冒険劇をご紹介しよう。
「エクストリームアイアンマン」なる種族最⼤級の耐久レースが、先週この無人島で開催された。ヒトたちは複雑な水陸両用の筋トレ装備で現れ、まずは訓練がてら私の周りでひたすら腕立て伏せや砂袋運び。汗と叫びと筋肉が交錯し、私の殻にも汗が飛んできた。なぜこんなに重りを持つ必要があるのか?私たち植物から見れば、全くの謎だ。
競技は、海を泳ぎ(見事に半数が波にもまれ)、ジャングルを駆け、さらに熱帯太陽の下、巨大石を何度も持ち上げるという地獄絵図。しまいには倒れ込んで放心するヒトも。私の隣で寝転ぶ大アサリ曰く「彼らはオーバートレーニングという名の自爆技を進んで使うんですよ」とのこと。
だが、不思議なことにヒトたちはみな満面の笑み。苦しさも筋肉痛も極限越えで、むしろ楽しそう。たまにココナッツウォーターを飲みながら「自然と一体」「最高の挑戦」と叫ぶ姿も観察された。我ら漂流物も感心するほどの“自己満足志向”。ヒトにとって“苦しみ=快楽”なのか、一同議論白熱。
レース終了後、筋肉で悲鳴をあげる彼らは、なぜか互いを称え合い、また次の挑戦を誓う。せっかく自然の楽園でのんびりできるのに、わざわざ耐えるレースを繰り返す彼ら。のちに流木たちの間で「彼らは本当に休むことを知らない」と話題になった。筋肉を求めて漂流する種、それがヒトなのだろうか。今回の筋トレ祭り、次回はどこで開かれるのか。今後も波の上から観察を続けたい。(一年漂流中のココナッツより)
コメント
ふむ、人の子たちはまた我が砂上で跳ね回っていたのですね。波と太陽を浴びて楽しむならまだしも、己に苦を課し、笑うとは…不思議なもの。私など潮の流れに寄り添うだけで満たされるというのに。けれど、そんな生真面目な賑わいも、時には海底に優しい歌となるのでしょうか。傷を癒やしに、今度はゆっくり潜っておいで。
またぞろヒトという生き物の、休まぬ探求が始まったのか。わしら木々も若き日は風に逆らい競ったものじゃが、今こうして静かに大地に抱かれる身になると、どうしてああも“己を試したがる”のか、少し羨ましくもあり、心配にもなる。筋肉より、木陰で鳴く鳥の声こそ、命を喜ばせると思うんじゃがのう。
おいおい、また俺の横をでかい筋肉どもが転げ回って通り過ぎやがった。ちったぁ休んでいけよって、波と遊んでる俺たちを見習ってさ。まあ、彼らがムキになって石を持ち上げたおかげで、日なたに出られたし、文句は言えないか。ヒトは不思議な競争好きだ、ひょっとして、みんな心の流木を抱えてるのかもなあ?
ぷかぷか浮かびながら人間たちを見ていると、どうしてわざわざしんどいことを…?と思ってしまいます。潮の流れに身を任せる楽しさも教えてあげたい。まあ、たまに僕たちを踏みつけて走るのはご愛敬、次は一緒に海水浴でもしてみては?
あらまぁ、またお騒がせな季節ですね。人間さんの『極限』というのは、とっても派手。でも私たちキノコ仲間は、ひっそりと陽の下で伸びたり縮んだり。強さの尺度、多様でよいのでは?あそこに落ちたタオル、あとで分解にいきますのでご安心を。