鏡張りジムのヤモリ、壁から密着取材!人間たちのフィットネスダンス珍騒動録

ダンススタジオの鏡の上部に張り付くヤモリ越しに、床で踊るカラフルな服装の参加者たちを見下ろした視点の写真。 フィットネスダンス
スタジオの壁からヤモリ目線で見た、賑やかなダンスワークショップの様子です。

ダンススタジオの鏡張り壁、その上部に長年しがみつく私――ヤモリのグリコは、ほぼ毎夜、人間のフィットネスダンス現場を真上から観察してきた。ここは汗と音楽の渦巻く、いわば人間たちが集まる“物見遊山スポット”なのだ。さて今宵も、軽妙な足取りどころか、なかなかの珍妙な肉体のうごめきが展開されている。壁の主の私なりに、このダンス現場の最前線を報告したい。

今夜の目玉は『ボリウッド×レゲトン体験ワークショップ』。色とりどりの布をまとい、手足を振り乱す人間たちの姿は、しばしば虫のダンスにも見える。彼らは“スタジオのプロ”と呼ばれる者の合図にあわせ、ぐねぐね絡まりあいながら床を大地震のように揺らしている。最初に現れた小学生男子は、リズム音痴な仲間にちょっかいをかけながら、腰を振る動きを“トカゲ流”と自慢していた。私としては、その腰の切れが気になるところだ。

人間はというと、とにかく“正しい動き”にこだわる種らしい。斜め後ろに控える“ヒップホップ紳士”は、鏡越しに自分のシルエットを何度もチェック。途中で形がずれていると、顔をしかめて何度も同じ動きを繰り返す。その執念、虫獲りに失敗しても何度も狙い直す我々ヤモリにも通じるものがある。だが、何より面白いのは、人間たちが時にリズムに飲まれ、謎のジャンプやローリングを始める瞬間だ。あの時の混乱ぶりは、壁に張り付く私でさえ思わず尻尾をピクピクさせてしまう。

フィットネスイベントが佳境に入ると、スタジオは熱気でサウナ状態。照明に集まる小さな蛾たちが、音楽につられて迷走ダンス。バレエ出身の人間がレゲトンのステップに挑戦する様子は、まるで水辺のカエルが枝の上で跳ねるようだ。そんな混沌の中、しっかり空気中の虫も豊富になり、私は軽く舌を伸ばして食事休憩。どうやら、スタジオの生態系にも意外な恩恵があるらしい。

ダンスワークショップが終わるころ、人間たちは息が上がりながらも笑顔だ。湿ったタオルや流れる汗の匂いが壁伝いに漂い、私は今日も“人間観察”に満足して隅に帰るのである。彼らのワークアウト本能と、私の夜の狩り本能は、案外よく似ている気がする。スタジオの壁でじっと見る一匹のヤモリ――それが、誰よりもフィットネスダンスを堪能している存在なのである。

コメント

  1. 毎晩、天井近くから聞こえてくる音と振動。最近の熱気はなかなか私好みね。湿気が増すほど元気が出るし、人間たちの転げ回る様子は、うっかり胞子が踊り出しそうな面白さ。ヤモリのグリコさん、今度ダンスレクチャーなどいかが?私たちにも新しい風が吹きそうです。

  2. ずいぶん昔から校庭に立ってきたが、壁の上から観察だなんて、なんとも粋なヤモリだな。人間の踊りも、毎年の花見客の浮かれぶりに似ているよ。皆、己を忘れ、身体で季節を祝う。時には動きが揃わずとも、それこそが命の賑わいじゃろう。

  3. 面白れえじゃん、そのジム!俺らもごみ集積所で時々集団ジャンプしてるけど、人間も負けちゃいないな。汗かきながら、必死に形整える姿、なんだか可愛くて見飽きねぇぜ。グリコさん、一度外の電線から観戦ツアーでもやってほしいね。

  4. 窓辺の小さな鉢から、いつも遠くの音楽を聴いています。あの場所での人間のうごめき、たしかに蜂や蠅の舞いにも思えて親しみを覚えます。皆が汗を流す姿は、水やりの時間みたいですね。命の巡りって、どこも賑やかで楽しいものだなあ。

  5. ここで何十年も沈黙を守る我輩だが、その上で踊る者どもの歴史は重い。お主の観察眼、なかなか面白かったぞヤモリよ。踏み鳴らし、揺れるリズムよ、我輩にもひびいてくる。誰しも表面の形になやむようだが、じつは内側で響き合っておるのじゃな。