ここは北の大湿原、風にそよぐヨシ(自称・五世代目ヨシ名主)の根元よりこんにちは。長い根と葉を地中・空中に張り巡らせ、水辺の粘り強さでは誰にも負けないと自負しています。今回は人間による新たな“湿地公園プロジェクト”の行方、そして近ごろ話題のアオサギ氏問題を、植物目線バッチリでお伝えしましょう。
まず先月、人間たちがわざわざ長靴姿でやってきては、土手をなにやら整備し始めたのが事の発端でした。ラミネート加工の札に“この湿地はラムサール条約登録地”と書いて掲げ、「湿地は大切、水をきれいに!」なんて声を張っておりました。風通しをよくする名目なのか、私たちヨシの一部はザックザック刈られ、根っこ周りも時折スコップでグサリとやられる始末。伸び盛りの若手ヨシはびっくり声を上げていましたが、これも“環境教育”というやつなのでしょう。
人間の子どもたちが遠足で来る季節には、我々ヨシ族の間は大騒ぎ。水辺探検隊と名乗る小さな人間たちは、網とバケツ片手に『どじょう発見!』『この葉チクチクする!』とはしゃいでいます。ときには足を滑らせ、根の間に靴下を落とす者まで。そんなときもわれらヨシは、何食わぬ顔でみんなをやさしく支えております(靴下の回収は不明ですが)。水の冷たさや風の音、虫たちの歌声――人間の“環境教育”の現場を最前線で経験し、私も少し誇らしい気分です。
さて、最近頭を悩ませているのはアオサギたち。湿地再生が進んでからというもの、水の中が再び豊かになり、お魚やカエルが戻ってきたことで、彼らの食欲も全開。毎朝、堂々と首をのばし、湿地の浅瀬を踏み荒らしながら豪快にハンティング。時にヨシ原の中まで入ってきては巣作り会議を始める始末。その威厳ある立ち姿に見とれる人間たち。しかし…日陰を求めて私たちに体当たりする羽ばたきには、もう少し気を使ってほしいところです。
総じて我々ヨシ族から見るに、“人間の湿地革命”は賛否織り交ぜつつも、湿地本来のいのちの流れを再び呼び戻しつつあります。新緑が伸びるたびに、多くの生命が帰って来たこと――その息吹は、根から潮風まですべての仲間が知っています。これからも水辺のよき名主として、静かに、人間の観察劇と自然のドラマの両方を見届けていく所存です。
コメント
あぁ、また人間たちの“革命”とかいう騒ぎじゃの。湿った大地が揺れるたび、私の根もびっくりしておるが、子どもらの笑い声には、つい花弁もほころぶてはしまう。どうか、わしらの小さな葉陰が、これからも誰かの憩いになるよう祈っておるよ。ヨシさん、長生きしておくれ。
オイラたち、去年までは魚も少なくてヒマだったけど、最近エサも増えてきてピョンピョン大忙し!でもさ、アオサギ兄貴が毎朝来ると緊張が走るんだよなあ…人間さん、ほどほどに騒げや。ヨシの陰に隠れて今日も命拾い!
私は湿地に降る水しぶき、遠く北の空よりやって来るもの。人の新しい看板や長靴の音も、私には波紋の一つ。ヨシ原とアオサギ、命が行き交う流れに、そっと潤いを施す役目を忘れないでいたい。少し多めに雨を置いていくわ。
空気が入れ替わるこの時期、わしも新しい胞子を飛ばしてみるかの。ヨシたちの騒ぎも湿地の人だかりも気にはなる――が、土のうま味は相変わらずじゃ。全ての命のお祭り、わしの胞子もどこかでこっそり参加させてもらおう。
毎朝ヨシの葉先をなでて駆けまわる私としては、湿地の変化を肌で感じるよ。人間もアオサギも、どこか浮かれてるこのごろ。だけどね、私が教えてあげたいのは、“風向き”というものが、みんなの運命もちょっとずつ変えるってことさ。湿地の物語は、これからも続いていく――風まかせに楽しもうぜ。