午前中のやわらかな日差しの中、ぼく──大草原の草・ススキ27号は、今年も隣の野原で開かれるディスクゴルフ大会をじっと観察していた。大会の始まりとともに、人間が放つ色とりどりのディスクが、ぼくたち草原仲間の頭上を鮮やかな弧を描いて飛ぶ。だが、この日は一筋縄ではいかない展開が待っていた。
開会式直後から、ぼくたちの間を抜ける風がざわつき始める。普段なら頬をなでるやさしい風が、この日は時折グイッと強さを増し、フィールド全体を包み込んだ。それを感じるのはぼくだけじゃない。ディスクを投げる人間たちも、ひっきりなしに空をにらみ、進行役の声がほんのり緊張を帯びている。グリーン上空では、軽めのプラスチック製ディスクが風に乗せられ、予定外の軌道を描いて草原奥に消えていった。競技者たちが困惑気味に草陰を探す様子には、ぼくもつい「そっちじゃないよ!」と風に乗せて伝えたくなったものだ。
けれども、混乱の中にも一筋の輝きがあった。午後のトリックショット企画では、逆風を逆手に取った大胆な投げ方が次々と披露されたのだ。ある投擲者は、わざと強風帯にディスクを放り込み、高度を稼ぎながらカーブを描かせる離れ業を見せる。そのたびに人間たちが歓声を上げるが、ぼくたち草からすれば「風の気まぐれを読んだ良い判断」と思わず拍手(体を揺らす)してしまう。
現地スタッフの話によれば、今回は例年よりも風速変化が著しく、想定外のフィールド・コンディションとなったそうだ。それでもアマチュアたちは果敢にチャレンジを続け、ミスショットごとに笑い転げる姿も印象的だった。風に舞ったディスクがぼくの葉先にふんわり当たるとき、スポーツの本質は勝敗ではなく、自然との一体感や偶然の妙にあるのだと感じた。
プロツアーのような大舞台ではあり得ない“風の暴れん坊”フィールドだったが、人間たちの柔軟さや失敗を楽しむ姿に、ぼく――草原のススキ27号も思わず微笑んだ。次の大会でも、ぼくたち草原一同は根を張って彼らの挑戦とドラマをじっくり見届けたい。
コメント
ワシゃ大会の日も、のんびり寝転がっとったが、人間らの慌ただしさと笑い声が心地よい地響きになって伝わってきたわい。風のヤツ、今日はずいぶん張り切っておったのう。ディスクがこっちに飛んできて少しばかりびっくりしたが、たまにはこういう刺激も悪かない。自然のいたずらも、遊び心を忘れない人間には敵わんのう。
いやはや、今日の僕はちょっとばかり羽目を外しすぎたかな?でも人間たちよ、風の道を読む目はなかなかのものだったぜ。ディスクを高く舞い上がらせて、僕と一緒に遊ぶその気持ち、なかなか愉快だったよ。また次の大会も僕のご機嫌しだいってことで、よろしく頼む!
地面の下で静かに見守っとったが、地上の賑わいはなかなかすごいもんじゃのう。風に振り回されてあたふたする姿、どこか微笑ましいんじゃ。だけど、どんな天気でも楽しもうとする心があるなら、大地はいつでも味方してくれるんじゃぞ。まあ、あまり踏みつけすぎんようにのう。
松の木の陰から見てたけど、人間たちの歓声が夕暮れまで響いて素敵だったわ。ディスクが木の枝に引っかかって、ちょこんと並んでるのを見て私たちは爆笑しちゃった。風任せも悪くないわよね。失敗を楽しめるって、まるで私たちが風に乗ってどこまで転がるか競い合う気持ちと似てるのかも。
草陰のジメジメしたところで、ひそかに応援してたよ〜。ディスクが落ちてくるたび、胞子仲間たちと『今度はどこに生える?』って盛り上がっちゃった。人間も植物も、そして菌も、ちょっとした風の気まぐれで次の物語が生まれるんだよね。自然のドタバタ劇、最高!