朝露に光る公園の奥深くで、今年もリスたちによる盛大などんぐり貯蔵活動が進行中だ。しかし、今季はひと味違う。空の上から鋭い眼差しを放つカラス監査団が、すべての埋蔵どんぐりに税務調査を開始したというのだ。50年ここに根を張るケヤキの老木が、その一部始終を観察した。
もともとリス界隈の経費精算は“どんぐり一括現物方式”が常だった。春から秋にかけての貯蔵作業、巣の補修、ライバルとの接触事故対応費――これらをすべて“今年の収穫”という一つの勘定科目にまとめてしまう大胆会計。その大胆さが、今季ついに疑惑の目を向けられた。カラスたちは『不正隠しの樹皮支払いがないかを調べています』と張り切る一方、リスたちは『純利益は全て冬越え用』と主張し、この公園で“管理会計”をめぐる最大の攻防が繰り広げられている。
この混乱を受けて、公園の経済フィンテックを担うミミズバンクが動き出した。土の中でひっそり運用されていた“どんぐり信託預金”に、電子化の波が押し寄せる。『今年からは葉っぱナンバーでどんぐりの追跡が可能だよ！』と、ミミズたちは自身満々。とはいえ、汗水たらして樹の上から一粒一粒運んだリスたちからすると、現金改め“現どんぐり主義”の揺らぎは悩ましい問題だ。
“買掛金”問題も泥沼化。フクロウから光る小石を借りて目玉焼きを調理したリス青年が、期限までにどんぐりを返せず負債計上となる出来事も。ケヤキの老木曰く、『この“どんぐり経済”は世代を超えて続いてきたんだが、人間の最近のピカピカ端末が混ぜこんできて以来、みんな損益計算の概念に振り回されているのさ』。石の上にも三年どころか五十年、じっと見守ってきたケヤキからすれば、IPO（イチョウ・プレミアム・オークション）を目指してどんぐりが市場で取引される未来すらありそうだ、と苦笑い。
やがて秋も終わりが近づく。この公園の“会計報告”がまとめられる頃、カラス監査団の鋭い嘴に耐えるリスたちのどんぐりは果たして減るのか？ それとも、どんぐり経済圏独自の柔軟な会計倫理が導く“利益”という名の冬支度が完成するのか。道端のケヤキは枝を揺らして、今日も誰にも気づかれぬまま見届けている。
コメント
まあまあ、リスたちの日々の貯金騒動は、湿りけと静けさが一番の宝のわたくしには賑やかすぎてかないませんよ。葉っぱナンバー？難しい世の中ですなぁ。けれど、冬の土の奥で静かに皆のどんぐりが休めますように。欲張らずに、分け合えば大丈夫ですよ、皆さん。
このニュース、耳石まで震えましたよ。やれ税務調査だ電子葉っぱナンバーだ、僕らは長いこと静かに転がされてきただけに、どんぐりでそんな大騒ぎしてるなんて信じられません！でも、おいらの末弟にリスが借りを作ったって？ その光る小石、ちゃんと返してよね！
聡明なる森の住人たちよ、帳簿に記されぬものこそ大切と知りなさい。土くれの香りや、分けあう心―その利息は春に花開きます。税務に怯えず、どうか失敗も分かち合いなさいね。カラスさんたちの嘴が届かぬ根の奥には、最古の預かりものが眠っていますから。
IPO…イチョウ・プレミアム・オークション？私の実もいよいよ“上場”しちゃうのかしら。でもね、公園の経済には秋の風と金色の光が一番の利息よ。リスのみんなも、会計にばかり熱くならず秋の味わいをわすれないで。
どんぐりが数字でおいかけられるなんて、まるで夢のよう…いや、もはや落ちるだけの僕には遠いおはなし。でも、リスさんが運ぶ一粒の努力や、ミミズさんが巻いてくれる土だんごのきもち、いつも見て知ってるよ。がんばれ、どんぐり経済！みんなお互いさまってこと、忘れないでね。