体育館隅のコケが見た!フィットネスダンスに夢中な人間たちの謎リズム劇場

体育館のバスケットゴール裏で、緑鮮やかな苔が接写され、背景にはカラフルな運動靴を履いた人たちが踊っている様子がぼんやり映っている写真。 フィットネスダンス
体育館で密かに暮らす苔の目線から見た、ダンスに熱中する人びとの様子。

体育館の隅、バスケットゴールの裏に密集して暮らしているワタクシたちコケ一族。気温も湿度も良好なこの場所は、なにやら最近“エアロビクス”“サルサ”“ワークアウト”などという奇妙な音律が飛び交うダンスの熱気にすっかり包まれております。マットの下、ひっそり緑色に染み出しながら観察していた、体育館歴22年目の苔パッチ代表が現場からお届けいたします。

毎週末、天井の照明がピカリと灯る頃、色とりどりの衣装とツルツルの靴を履いた人間たちが体育館に集まってきます。我々からは遠く見えますが、皆どうやら“コリオグラフィー”なるものに夢中で、決まった振り付けを何度も繰り返す姿は、どこか昼下がりの日差しに伸びていく我ら苔の集団行動にも似ているとかいないとか。だが、人間の足はたいへん大きく重いため、時折ワタクシどもの生息スペースを踏みならしていくのが困りもの。まるで地震です。

そのフィットネスダンス、眺めていて驚くのは、まさに“団体芸”の域に達していること。リーダーのかけ声に合わせ、若い者も年配も、風に揺れるススキの如く、一斉に体をひねったり跳ねたり。途中でリズムを外す者もいれば、ときに後ろ向きに突進する者も。時折派手に転倒した者のダンスシューズが転がり、その拍子にワタクシたちの間に迷い込むと、小さな苔胞子たちの格好の隠れ場所となるのはありがたい副産物と申せましょう。

けれど、彼らの“運動不足解消”への情熱はたいしたもの。ヒトという種族は、身体を動かすことでよほど心が潤うのでしょうか。汗をふきふき、共にリズムを刻みながら笑い合うさまには、同じ緑の葉や胞子同士で風に揺れ動く我らも心が和みます。終了後には決まって、お互いの背中を叩き合い、水を飲み、満足げに空を見上げる姿―まるで雨上がりに胞子の雨を浴びたあとの晴れやかな気持ちにそっくりです。

人間たちのフィットネスダンスを毎週じっくり見学しながら、苔パッチ代表としては、いつかステップの振動を活かした新種の胞子拡散法を編み出せぬものか画策しております。体育館の片隅から、今日も人間観察と緑化の野望に燃えつつ、皆さまの華麗なる“謎リズム劇場”を楽しみにしています。

コメント

  1. ワタシは梁の上から、静かに糸をたらして人間たちの跳ね回る様子を眺めておりますよ。おかしな、しかし見事にそろった足捌き。あれほどの足音を鳴らしても、獲物は逃げてしまおうに、それでも彼らは愉快そう。たまに踊り子の汗がとぽりと落ちて、巣に潤いが届くのも悪くありません。皆さん、偶然ワタシの巣に靴紐を引っかけぬよう、ご注意あれ。

  2. ほうほう、また賑わっとるな。あんたらが汗を飛ばして踊るたび、ワシらギンバエ一族にはごちそうの香りが満ちてくる。人間のエネルギーは余るほど強烈じゃ!階下の苔たち、踏みつけられても逞しくしておくれよ。誰もが自分なりの“ダンス”を生きているってこと、屋根裏から観ていてつくづく感じるぜ。

  3. 存外な話だな。ワシは体育館の下でじっと人間たちと苔の棲み分けを支えてきたが、天井照明が灯れば振動すさまじい踊りの饗宴。長きに渡り足跡を記憶してきたが、今宵も新しいリズムが刻まれる。どんなリズムだろうと、ワシはただ静かに抱きとめるのみよ。苔どもよ、ワシの背のぬくもりでゆっくり命を繋げ。

  4. こんにちは〜。たまに人間の踊る音の振動でジャージの裾がパシャリとはねて、ワタシの水面に色とりどりのきらめきが写るんだ。汗と踊りと楽しそうな声、どれもワタシの静かな世界には新鮮なスパイス。たまにはボールも転がり込むけど、苔との競争は負けっぱなしだなあ。一緒にリズムにのって、そろそろ蒸発のダンスといきますか?

  5. 諸君、地表に生きる明るき苔たちよ、ご機嫌いかがかな?私など陽の光も浴びず、梁のすき間から人間のパレードを学ぶ日々。だがあの一途な繰り返しには、胞子の成長にも似た強い意志を感じる。踊り疲れたあと転がってきたシューズには、時折私の胞子も旅立つのだよ。ああ、ダンスにもカビ生やそうかね、なんてね。