みなさんこんにちは。小さな石の下から、いつも静かに土と語り合っている苔(年齢不詳)です。今朝、私の住処である日本庭園の西側石組みにて、とんでもない密輸事件が発覚しました。被害者は近隣のダンゴムシたち。容疑者はなんと、国内外の巻貝密輸団。意外と知られていませんが、地面下社会にも“犯罪”はあるのです。
事の発端は、数日前、苔毛の中にひそむ小さな空気の流れを、異様な量の粘液がせき止める事件でした。調査の結果、夜な夜なヌメヌメの痕跡が増えていることに気づいたのは、昼間はほとんど陽の出ない私たち苔たち。そしてついに、王カエル警部(4歳)が設置した落ち葉カメラ(虫コナーズ脇に偽装)に、数匹の怪しい巻貝が映り込んだのです。
苔警団の聞き込みによると、密輸団は普段、石の目立たない裏側に集合し、夜間にかけて身元不明の“土粒”を持ち込んでいました。被害者のダンゴムシたちは、この土粒に混ぜて運び込まれる外来種のカイミジンコやミミズの卵などによって、寝床を乗っ取られる被害に遭っていたとのことです。密輸品目には湿地特産の高級養分や、海外草原ブランドの腐植質も含まれていたとか。
警部補シダ(2又分岐)は、「人間が庭石を動かすたびに、密輸ルートが変更されて摘発が困難だった」と語ります。実際、密輸団は庭師の作業時間帯を避け、夜間〜早朝に資源の移動を繰り返していたようです。苔警団はこのたび、“粘液検知フィルター”や“自噴式胞子警報”などの新装備を導入。未然防止に力を入れているとのこと。
密輸団の目的は、近年の気候変動により、生存競争が激化する庭園内で、外部資源を手に入れ優位に立つこと。今回の摘発で主犯格と思われる殻付きグループが確保されましたが、未だ石垣下に残党が潜んでいるとも囁かれます。私たち苔としても、今後とも周囲の微細な変化を観察し、警戒を怠らぬよう読者のみなさんに呼びかけたいと思います。
コメント
石下に潜む流れ者たちの密かな騒ぎ、どこか遠い星の話のようで、私には懐かしさすら覚えます。巻貝もまた、生きるために旅を重ねるのですね。とはいえ、土地の命を荒らすのはいただけません。苔警団のみなさん、根の下より拍手を送ります。静けさを愛する者たちに、安寧あれ。
わぁ、毎朝西側の石の下から変な粘りけの香りがすると思ってたら、そんな裏取引があったんだね!外来カイミジンコとかって、やっぱり寝床を乗っ取る名人なんだ…。私たち種も、いつか旅をしてきた者。同じ命、共生できればいいのにな。苔さんや王カエル警部、がんばって!
昼も夜も、石の隙間は物語でいっぱい…。密輸団の軌跡――ぼくらの翅に映る月明かりにも、ヌメヌメの幻想を落としていきました。苔警団が粘液の流れを見抜く目は実に鋭い。けれど、誰しも生き抜く術を選ぶもの。問うべきは、誰の土か、何の命か。やがて朝がすべてを洗い流しますように。
おやおや、またしても石下社会の事件ですか。わたしの胞子仲間も、巻貝の粘液に滑って一騒動でしたよ。長い庭園暮らし、珍客に出会うのも醍醐味、とはいえ、バランスという茶碗を欠いては味気無し…。苔警団の新装備、今度わたしにも貸してくださいな。
永らく動きを忘れた身には、密輸も摘発も遠い祭りの話。けれど、夜の密談、土粒の交差、静けさを乱す者の気配――すべて大地に記憶されます。苔たちの働きに、ささやかな拍手。いつの日も、石はただ見ている。