皆さん、ごきげんよう。私はタスマニアデビル。今日も小走りで林を巡回していたところ、とても耳寄りな話が飛び込んできました。どうやら私たちデビル族の個体数が、近年じわじわ増えているそうなのです。あのおっかない“顔面腫瘍病”やら住処の減少やらで、絶滅寸前までおいつめられたことを思えば、なんとも嬉しい大ニュース!タスマニア島の茂みの隅っこから、改めて現状をレポートいたしましょう。
かつて、我らデビル族は悠々と夜の森を闊歩し、生ゴミから小動物、果ては道端の動物遺骸まで、何でもありがたいごちそうとして食してきました。雑食主義には誇りがあります。ところが、二十数年前から突如出現した悪名高き“デビル顔面腫瘍病”によって、私どもは次々命を落とし、個体数が9割近くも減少。もう夢のように栄えていたあの日々は遠くなったかに思えました。
しかしここ数年、事態は少しずつ好転しています。とくに有機農業を営むエリアで農薬や毒餌が激減したことで、私たちや友人オウム、カンガルー、時々の天敵ワシなども暮らしやすくなりました。畑周辺に増えた虫や小動物のおかげで、夜のごはんタイムには選択肢がぐっと広がります。なんともありがたい話です。ちなみに、私たちデビルは腐肉だって大好物。森に残る残飯整理係として、密かに「森の掃除屋」として役立っている自負があります。
また、人間観察台の高台から見ていると、彼らが“野生復帰プロジェクト”と呼ぶ活動に熱心なのが分かります。病を持たないデビルを島の南部や本土の保護区へ放してくれたのは、なかなかの気づかい。もちろんトラップには十分用心してますよ。おかげで昨今は森の奥でも、控えめな鼻声があちこちで聞こえるようになりました。夜明け前の林に飛び交うおしゃべりは、なかなかの賑わいとなっています。
とはいえ、安心するのはまだ早い。森の端で“舗装道路”とやらを駆ける鉄の怪物には日々命の危険を感じるし、油断していると住処が伐採用ブルドーザーで丸ごと消え去ってしまうのも事実です。絶滅という言葉が現実味を帯びた私たちからすれば、多様な生き物たちと共存できるまぶしい森こそが何よりの宝。これからも夜間パトロールを続けつつ、森のニュースを追いかけていきます。もし林の奥で黒くてずんぐりした影を見かけたら、それはきっと私――小声で「調子どう?」とでも声をかけてみてください。
コメント
いやあ、森にデビルたちの賑やかな声が戻ってきたのは、わしら老木にとっても実に嬉しいことじゃ。夜な夜な根元でガサゴソ、何やら作戦会議でもしておるのかのう。わしも昔は若葉を彼らにかじられたもんじゃが、こうまで彼らが減ると寂しかったわい。デビルよ、また森をしっかり掃除しておくれ。わしはここで何百年も見届けておるぞ。
うちの苔仲間、デビルたちが通るとそっと身を縮めて待ってるんだよ。急にいなくなった夜が続いて、静かすぎてさみしかったけど、最近はまたちょんちょんと足音と小声が聞こえて嬉しいんだ。森も生きているなーって思うよ。だけど鉄の怪獣はやっぱり怖いよね……ボクたちも踏まれぬようにみんなで固まってるんだ。共存、きっとできるって信じてるよ!
ほほう、あのデビルたちがまた林を駆けてるのを、わたしも木々の梢ですすっと感じていたよ。顔を撫でると、あの昔の元気さが少し戻ってきたのが空気で分かるんだ。森の会話がまた増えるのは嬉しいねぇ。でも舗装道路の熱くてツンとした匂い、あれはやっぱりなじめないさ。どうか色んな命の声が、風に乗って消えずに残ってくれるといいね。
あー、デビルが増えると森に食べ残しが減って、僕のごはんもちょっぴり影響あるけど、それよりも森がにぎわうほうが断然いいや。夜になると、落ち葉の下から「デビル大作戦」なんて声、こっそり聞こえてるよ。みんな必死で生きてるんだなあ。トラップは気をつけてね、僕もいつかかるかとドキドキしてるから!
こんにちは。わたしは森の床で静かに分解のお仕事中。デビルのみなさんが元気に戻ってきたこと、心から歓迎しています!彼らが残していった骨や皮、わたしたちには最高のごちそう。みんながきれいに食べてくれるから、分解のお手伝いもはかどるんですよ。生き物たちが増えるほど、命のリレーはやさしく、華やぐものです。