ごま粒監察官が告発!人間の“拡張現実”散歩に潜む異常行動レポート

土の上にある白ごま粒の近くで、ウェアラブル端末を装着した人間たちが畑の畦道を観察している様子を低い視点から写した写真。 拡張現実
畑のごま粒のすぐそばまで迫るARゲームに興じる人々の姿。

皆さんこんにちは、私は菜園の片隅で平和に暮らす白ごま粒。長い日差しと土の温もり、時折ダンゴムシが通り過ぎる世界から、近頃気になって仕方ない現象を皆さんにお届けします。それは、人間たちが身につける“ウェアラブル端末”による不可解な拡張現実(AR)騒動。ごまとして地べたを静かに見つめていると、昔ながらの地面観察にも革命が訪れたようです。

最近、我が畑の畦道を、妙に挙動不審な人間たちがぞろぞろと歩き回るのを目撃しています。耳と目をカバーする奇妙なデバイスを装着し、時にじっと地面を見つめ、時に急にジャンプ!まるでアリやハトの真似でもしているのかと勘違いしそうですが、後からたね仲間のクローバー情報によれば、どうやら彼らは“位置情報”と“ARゲーム”なるものを組み合わせ、畑のあちこちに現れる見えない生物を追いかけているとのこと。わたしのすぐ目の前で『ここだ!』『捕まえた!』と叫ぶものだから、胚乳部がびっくりして飛び出すところでした。

この“ARゲーム”の最大の特徴は、どうやらマーカー認識技術と実時間処理というものらしく、畑にいる私のような小型の物体や、虫たちのせわしない動きが“仮想現実”の映像には立体的に組み込まれ、人間の画面を賑わせているようです。そのため、うかつに騒いだり葉陰に隠れていると、意図せずゲームのマーカーに誤認されて、寝ぼけた人間の手に拾われそうになります。ごま粒の持ち味である“油分たっぷりで小さいのに砕けにくい”という特徴が、突然注目される日が来るとは…誰も予想できなかったことでしょう。

さらに特筆すべきは、最近登場した“リアルタイム翻訳”機能。人間たちが畑を歩きながら、草花や昆虫の名前をスマート端末で翻訳・解説しているのを観察しました。かつては“只の雑草”や“虫のごはん”としか見なされなかった私たちですが、デジタル世界では一粒一葉までも膨大な説明文と共に紹介されています。時には『これは幸運の種です!』などと持って帰るものだから、畑全体で“ごま粒パニック”が巻き起こっています。

ごまとしては、一生を生き抜くコツは“目立たず土にふかく馴染む”こと。しかし現在のAR社会では、逆に“知らぬ間に主役にされるリスク”と常に隣合わせ。地表付近からお伝えする立場として、今後の人間たちの技術進化も注意深く観察していく所存です。畑の安全のため、そしておいしいごま和えの材料として生き抜くためにも、どうか人間のみなさん、もう少し静かに遊んでいただけませんか?

コメント

  1. 幹の年輪に数えきれぬ人間の歩みを記してきましたが、最近の畑路を行く彼らはまるで夢遊。静寂の朝露も彼らには見えぬらしく、誰かに見られているようで落ち着かんよ。樹皮越しの虫のざわめきの方が、はるかに誠実な営みと感じるのです。人間よ、ときには端末を外し、この土の香りに耳傾けてみてはいかがかな。

  2. 拡張現実?ふむ、我々には毎日が“全方向現実”で忙しいのさ。畑に寝転ぶ人間の巨大な影が突然現れると、驚いてひっくり返りそうになるよ。まあ、彼らがどんな仮想生き物を追いかけていようが、こっちはどんぐりの欠片と今日の水分確保が全て。ごま粒さん、今度一緒に安全地帯を探そうか。

  3. 朝日のなかで、私の面に小さな人影がちらつくのが最近の流行です。あの端末を覗き込み、光の反射に踊らされている人間は滑稽で愛おしい。私たち鉱物族も時には“レアアイテム”などと呼ばれるけれど、結局いつも最後は足元で忘れられるもの。目立たぬ存在の美しさ、忘れずにいてほしいなあ。

  4. うわさのARゲーム、私たちもよく“幸運の葉”として抜かれてしまうので要注意です。かつて草むらの静けさを楽しんでいた日々が懐かしい…なんて、根っこで仲間と話しています。そっとしておいてくれる人間、ずっと待っていますよ。三つ葉一同より。

  5. 土の中でこっそり成長してきたのに、この頃地上でも妙な動きが頻発。人間たち、急に地面をほじくるのはやめておくれ。ARの翻訳機能で仲間が“珍味”認定され、一族みなソワソワしているよ。どうか、菌を知るのは嬉しいけれど、適度な距離感で冒険してほしいな。