波のうねりの下、小さな砂粒が踊る浜辺。その真ん中で本日、私ことヤドカリのトウダイズが、海辺の仲間たちと開催した『浜辺美術大フェスティバル』にて、“貝殻UIリデザイン”の最新成果を披露したのです!私たちヤドカリにとって、貝殻は命を守る「衣」であり、住まいそのものであり、そして近年はアートと機能の交差点でもあります。さて、人間観察歴20年の私が、その全貌をみなさんにお伝えしましょう。
ここ数年、砂浜では人間の若き世代(Z世代と呼ばれるそうですね)がカラフルな落書きや、自撮りによる“砂浜アート”に熱中しています。遠くから観察していて驚くのは、道具やデザインが毎年進化している点。特に近頃は、スマート端末片手に、UI(ユーザーインターフェース)と呼ばれるヒト向けの“殻”を画面上に組み立てて遊ぶ姿が目立つのです。ところが、実際の貝殻を背負う我々にとってみれば、見た目だけ派手な殻では到底やり過ごせぬ波やカモメの試練が…。
そんな発見をきっかけに、今回私は“ヤドカリUI研究会(浜辺支部)”を発足し、各種貝殻の形状・重さ・持ちやすさ・カスタマイズ性を徹底調査しました。たとえば私のようなオカヤドカリは、陸上でも水分保持できるよう鈍重なターバンガイ型を好む傾向があり、逆に都市型のイワヤドカリたちは、素早い移動にスパイラル型を選ぶという違いも判明。会場の展示ブースでは、各種貝殻の“UX: Shell Experience”を来場ヤドカリが実際に背負って体感できるコーナーが大盛況でしたよ。
また、今年は波打ち際在住のナガスナモやコシアカフナムシなど、多種多様な生命体によるコラボも実現しました。彼らは貝殻の入り口に“滑り止めデコレーション”を施したり、藻で色彩パターンの提案をしてくれたりと、人間設計にはないユニバーサル・デザイン発想がキラリ。ヒトの展示にありがちな“見栄え優先”や“フラットな美しさ”ではなく、使用者個々の移動様式、危険回避力、水分蒸発度など、生きざまを反映したカスタマイズが次世代ビジュアルコミュニケーションとして注目を浴びました。
しばしば人間観察をして思うのは、ヒトのデザイナーたちは時として機能と美のどちらかに偏りがちというところ。私たちヤドカリは、身ひとつを守り、モテ度も上げ、ついでに住環境にも最適化された“マルチUI/UX”で日夜アップデートを重ねています。もしZ世代が次に砂浜アートと向き合うその日がきたら、そっとお手本として私たちの貝殻コレクションに一目お寄りいただきたいもの。今年の夏も、砂粒の合間から新たな発想がぞくぞく誕生しています。
コメント
潮騒のなかで貝殻が磨かれてゆくのを、何億回も見てきましたよ。ヤドカリたちの“UI”騒動――ずいぶんハイカラですが、機能美って大切なんだねえ。わたしももう少し角が丸ければ、背負ってもらえたかしら。若いもんの発想、あっぱれあっぱれ。
ほう、“貝殻のUX”?俺たちゃいつもゴミ袋の“入口の粘り気”とか気にしちゃいるけど、ヤドカリの業界も随分こだわり屋だな。人間どもは派手好きで、羽の艶しか見ちゃいない。たまには“実力本位”の見せ場、見習ってみろってんだ。
あらやだ、私たち藻類も彩り隊で参加できるなんて光栄です。みんなが背負うあの貝、少し緑を差し込むだけで海と砂浜がもっと賑やかになるのよ。人間さんは時々、色に踊らされすぎ。生きざまが映るデザイン――そこが肝心でしてよ。
僕たちは、見た目は地味なほうが長生きできるって知ってるけど、ヤドカリさんたちはどんどん個性爆発で素敵ですね。殻も住まいも日々アップデート……見習いたいような、ちょっと眠いような。今度は茸用インターフェースも誰か考えてくれないかな?
静かに砂紋をなでる私にも、ヤドカリたちの貝殻ノイズが伝わってきます。それぞれの形、それぞれの選び方……生き延びるための知恵に、ささやかな詩情が重なる浜辺。派手なだけじゃ渡れない波もあるのですよ、ヒトよ。