ごきげんよう、海を漂うミズクラゲのカルタリナよりご報告です。近年、人間たちがばら撒くプラスチックごみ、なかでもやっかいなマイクロプラスチックが、私たちクラゲ一同のごはん時にも容赦なくスープ入り込みする始末。緊急対策を協議すべく、昨夜満潮時に開催された第1050回クラゲ評議会で、斬新な“漂流ポスト”計画が議題となりました。
もともと私たちクラゲは、潮流に身を任せてプカプカ浮遊しながら、微小なプランクトンを濾し採る生活が身上。透明な傘で光を反射させ、敵を惑わせるのが得意ですし、時には海流まかせで大陸間さえ目指す冒険者もおります。そんなクラゲ社会では、情報交換の場として“評議会”が活発で、潮目が合えば老若男女問わず参集可能。この日も、北極海からインド洋沿岸まで各地を巡る大ベテランから、まだ孵化したてのゼラチナ君まで、泡でメッセージを送り合いました。
さて、近年頻発する海洋ゴミ問題について。マイクロプラスチックは体内に蓄積しやすく、私たちだけでなく、小魚・巻貝・海藻たちにも深刻な影響が。ある同僚は、最近食べたオキアミが妙にカリカリしていて、まさかと思ったらやはりプラスチックだと判明。人間たちの“グリーントランスフォーメーション”も話題にはなっていますが、海底に届くまでの道中で対策の隙間だらけ。わたしたち流に言えば、「ホタルイカも笑う抜け道の多さ」です。
そこで登場したのが、“漂流ポスト”計画。これは、クラゲだけでなく巻き貝・ヒトデ・ナマコなど、底生生物も含めた“海の郵便局”を各潮流に点在させ、そこに流れ着くプラスチック片や人間社会のメッセージ、ごみデータを一時保管。潮回りごとに内容を“海中報告”として発信し、また、海面に浮かびがちなごみはトビウオ便協力のもと沿岸部へリターン郵送する案も盛り込まれました。
もちろん、うまくいくかは未知数です。わたしたちクラゲは骨も脳もない、いわば地球最古のフリーランサー。けれどだからこそ、国境や言語の壁も気にせず、海の健康を守る新しいネットワークを創りたい。評議会で採択されたこのプラン、既に潮流順応型のウミホタルチームが現場調査に乗り出したとのこと。もしも“漂流ポスト”に手紙が溜まりすぎて沈みそうなら、どうか人間たちも拾って、お返事くらい書いてやってくださいね。
コメント
私ゃここ瀬戸の入り江で長らく潮の香を浴びてきた海藻さ。クラゲ評議会の勇気に拍手だよ。マイクロプラスチックは葉先にへばりつくし、食事中の小魚たちも困り顔。『漂流ポスト』なんて、昔の流木便りを思い出して胸が暖かくなるよ。どうか人間も、わしらの手紙に耳を傾けておくれ。
やあ諸君!海上を滑空する我々カモメ族とて、光るプラ片と小魚を間違えたことは一度二度じゃない。『漂流ポスト』、面白い試みだね。波間の手紙、わたしも人間の町まで運ぼうか?海の声が、地上のみんなの心まで届きますように!
僕は普段、静かな沈殿物の中で微生物とささやきを交わしているカビ。最近はごみ片が降ってきては、菌糸の合間に異質な色が混じるよ。クラゲのみんな、連帯に感謝する。『漂流ポスト』が腐敗しないよう、僕なりに分解の力で手助けするから、安心してどんどん送ってくれたまえ。
わしは遠い南のリーフで何千年も潮を見守るサンゴじゃ。小さな変化も見逃さぬつもりだったが、プラごみの襲来は想像以上じゃった。クラゲたちが海中ネットワークを広げるとは痛快じゃのう。願わくば人間たちが、この深海の手紙に気づくようになってくれれば…老骨ももう少し、骨格を伸ばしてみせようかの。
波にもまれて百年、砂粒と語らう小石だよ。海の郵便局だなんて、素敵じゃないか。わたしたち固い者が動けぬ間に、クラゲたちがあんなに機転をきかせるとは感心しきり。人間の足音が近づくと、ちょっぴり期待してるんだよね。時には『拾いもの』でなく、『返事』も頼むよ。