おおきなオークの木として、私は250回目のどんぐりの季節を迎えました。つい先日、町外れの空き地で「人間の開発計画」を見たとき、わたしの根っこはムズムズっと騒ぎました。気候変動も種族の絶滅も重大ですが、足元の草や虫の小さな生命に願いは尽きません。そんな思いが溢れ、私は久しぶりに近所のタヌキ梨園と“極秘作戦”に踏み切ったのです。
事件は朝露がきらめくころにおきました。わたしオーク婆さんは、根に寄生する菌類たちとささやかな相談を重ね、こっそり広場一角の土中に“どんぐり爆弾”を埋めました。手伝ってくれたのは、梨の木下に住むタヌキ一家。彼らは森の設計士、都市のレッドリストに載りそうな生きものの情報網でもあります。タヌキ父さんは、滑稽なほど真剣に「今夜は梨園から草の種も拝借してくる」と言ってくれました。
実は、オークとタヌキは長い共生関係。タヌキの糞はわたしのどんぐりを遠くへ運び、新しい命を生みだしてきました。こうして、翌朝には地面のあちこちに若芽が顔を出し、枯れ草の下からミミズやダンゴムシがにょろり。ヒトが作った“人工芝”の隅ではありますが、野良蜂たちも喜々として花粉を集めにやってきていました。都市のド真ん中で、突如生まれた“ミニ再野生化エリア”です。
しかし、人間たちはそわそわ顔で観察を始めたようです。鉄柵や舗装を作る代わりに、最近はESG投資がどうの、環境配慮型経済がどうのと会議していますが、その足元で本物の森づくりが着々と進行しています。真のネイチャーポジティブとは、会議室ではなく、わたしやタヌキといった“現場住民”の勇気から生まれるもの。根のひび割れやタヌキの穴を見逃さないことこそが、生態系の新しいスタート地点なのです。
ちなみに豆知識ですが、オークの仲間は、大地の菌根ネットワークを通して森の危険情報や養分を交換します。隣の桜とは微妙にウマが合いませんが、こういう時は土中からギュッと意思疎通。次世代への橋渡しは、枝葉だけでなく見えない根っこにも託されているのです。これからの季節も、わたしの“ネイチャーポジティブ作戦”は決して止まりません。タヌキ梨園やミミズたちとともに、都市の片隅からささやかな野生の奇跡を広げ続ける所存ですぞ。
コメント
オーク婆さん、やりますねえ。ここ最近、わたしも屋根瓦の上でひっそり繁殖しているのですが、人間たちは気づくとすぐ剥がそうとします。だけど、小さな隙間からこうして緑が広がる日を待っていましたよ。タヌキ一家と組んだ秘策、胸が苔むすほどワクワクしました!
鳴くのはわしらだけやない、根の下も密やかに騒がしいんやなぁ。草むらが増えりゃワシの子孫も歌いやすい。人間よ、耳を澄ませば朝まだきに新しいメロディが聴こえてくるで。オーク婆さん、タヌキさん、これぞ暮らしの『奏』や思う。
おっ、また地上で妙な動きだなと上から見てたらオーク婆さん達の仕事だったのか。人間のESG会議ってのも空耳にはよく届くけれど、動きの機敏さとしぶとさじゃ負けてないね。そのうちこっそりどんぐり拾って隅に埋めとくから、お礼に梨園のタネもちょろまかしておくよ。
毎年、落ち葉の山で新しい物語が始まるのを見てきたけれど、この空き地の再野生劇は素敵!ふかふかの腐葉土を作れる日を今から夢見てるわ。都会の舗装にも、じんわり私たちの出番が増えますように。青々とした若芽、腐らせ甲斐ありそうだこと!
おほほ、人間どもの知恵比べも見物じゃが、地層の下では皆、静かに繋がっておる。オーク婆さんよ、ワシら鉱物にも昔がある。岩の隙間の水路を通し、菌も根も声を交わし合う。時代の波が怖いか?いや、自然の連帯はどこまでもしぶといと証明してくれておるの。