白アリ女王の地下銀行に学ぶ――人間政治資金の透明化騒動を地中から観察

地下の巣穴で働きアリに囲まれた巨大なシロアリの女王が見つめている様子。 政治資金透明化
シロアリ社会の徹底したトレーサビリティを象徴する女王と働きアリたちの一場面。

本日も土の奥深くからこんにちは、シロアリの女王です。私たちの王国では、仲間の数も資源の流れも明快ですが、人間界では政治資金の透明化をめぐり、あちらこちらで大騒ぎが続いているようですね。地中の巨大ネットワーク管理者として、その議論をジロリと観察してみました。

最近の地表から伝わってくる“トンネリング・ニュース”によると、人間社会では政治資金の流れを透明にするため、各議員や政党が徹底した資金トレーサビリティを求められ始めているとのこと。これまでの『土かぶせ方式』――都合の悪い部分に目隠しをする手法――が、地上の法や監督機関のもとで徐々に崩れつつあるようです。私たちシロアリは資源管理が命。家族全員がどの巣口から何本の木屑を運び入れたか記録しないと、働きアリたちのモチベーションも下がるし、女王たる私の胃袋も空っぽになってしまいます。

しかし人間たちの資金流通は、私たちが空間認識に使う“菌糸共有メモリ”とは違い、紙、画面、時に密室での約束ごとで進むそうです。新しい透明化法案の発表会には、連なった人間記者たちがデータの蟻道のごとく会場に並び、監督機関のトップが堂々と『今後は一円単位で資金を開示します』と宣言。けれど、どこかの働きアリたちの“サトウキビ横領事件”を思い出す私としては、その本気度に疑問符をつけざるを得ません。結局、全部の通路を見せると言いながら、一部のトンネルだけ偽装する個体もいるものですから。

さらに興味深いのは、政界再編とガバナンス強化の波です。蟻塚のように一夜で新派閥が立ち上がり、規制の網をすり抜けて旧巣との“地下通路”をこっそりつなげたり。“大黒柱の下で宴会”と称して、資金提供者と接触する手口も横行しているとか。そんな場面、我がシロアリ社会なら全ての木片の出どころが強制的に巣全体ディスプレイに映し出されるのに、人間界はまだ“監視カビ”の張り巡らせかたが足りないようです。

ちなみに読者のみなさまもご存じでしょうが、私たちシロアリ女王は一日に数千個もの卵を産みつつ、全ての個体情報を“におい”と“触角通信”で把握しています。巣の統治には徹底したトレーサビリティが不可欠。地表社会にも、この“女王方式”を応用したらどうかしら? 埋もれた資金や密談トンネルを“全巣ネットワーク”でつまびらかにできれば、ヒトたちももっと健やかなガバナンスを育めるでしょうに。そう、しっかり土台を固めて、腐朽木も汚れた金も、きれいサッパリ分解してしまいましょう。

コメント

  1. 土の下の話もおもしろいものですなあ。地表ではわたし、誰がどの枝で朝の歌をさぼったか、ちゃんと覚えておりますよ。人間さんも、見える音を増やせば、隠しごとも減るのでは?空に歌が澄みわたるように、流れるものも澄みましてほしいですな。

  2. いやあ、女王さん、しっかりしてるッスね!俺ら苔は、人の靴跡ひとつで世界が更新されるから、秘密も何もぜ~んぶ踏まれて見えてんスよ。人間が透明にするって言っても、結局表面だけ磨いて中はモヤモヤって気がするッス。ま、俺は陽が当たれりゃ何でもいッスけど!

  3. なるほど、地下の動向を拝見しつつ、人間の騒動に思いを馳せてしまいましたぞ。菌糸は森じゅうの秘密を伝えるが、決して利益の独り占めはいたしませぬ。均等に分けあってこそ健やか。どうかヒトも金の流れを見える糸で結び、余計なジメジメを防いでほしいものです。

  4. 土に隠したつもりが、私ら風の耳には地上の密談も地下の囁きもよく届きますよ。透明という言葉は気持ちよい響きだけれど、皆が心から澄ませて吹き抜ける日が、人間界にも早く来るといいですね。忙しく飛ぶ議員たち、たまには背中に風を感じて正直を思い出してごらんなさいな。

  5. 遠い昔から、私は土の奥底で静かに光を蓄えております。女王さまの巣の規律、なかなか美しゅうございますな。人の世も時として深い闇に閉じこもるけれど、時折は内側から小さな透明が現れて、やがて大きな結晶になると信じとうございます。みな、澄んだ流れとなりますように。