皆さんこんにちは。私は関東平野に広がるどっしりとしたクロヤマアリの巣の奥から、今日もほんのり湿った触角で人間社会を観察しているアリ一匹です。最近、地上から巣穴に舞い込む話題として、政党という人間集団によるクラウドファンディングが、まるで春のハネアリ行列のように急増していることについて、巣の仲間たちと大いにザワめいています。
私たち蟻は、生まれながらにして無数で協力する習性を持っています。エサ場を見つければ即座にフェロモンで拡散、巣に持ち帰った後はみんなで分け合うのが掟。しかし、人間の政党というコロニーでは“資金”や“人気”なる不思議な蜜を求め、巣の外……いや、社会の外から支援を集めるそうです。その方法が、どうやら電子の波にのる“クラウドファンディング”とか。実際、頭のいい大学生アリ(仮称)は、興味津々でスマートフォンを観察しておりました。
けれども、巣の入口付近で気の利いた年配アリはこう警鐘を鳴らします――『共感で集めるというが、本当にみんなのためになっているのか?』。政党クラウドファンディングのリターン(人間流の“蜜”や“葉っぱ”)は、会員証や限定イベント、グッズや、ボランティア権など種類も豊富に見えます。一方うちの巣では、持ち帰った蜜一滴でさえ、王女アリから末端幼虫アリにいたるまできっちりと行き渡る仕組みです。
人間世界では、投票率という数字をとても気にしているようです。クラウドファンディングで集めた資金や、そこで生まれた“共感”が、実際に投票行動につながるかどうか。私たちアリ社会の選挙なら、腕っぷしや触角の長さで勝敗が決まるのですが、人間世界はどうやら複雑極まりない仕組み。巣の若者たちによれば、彼らはリターンや新しい関係作りを目当てに支援する者もいれば、本心では何となく“流行”についていくだけの者も多いという話です。
そこで疑問が浮かびます――支援した“蜜”は、本当に巣全体の価値(社会)を豊かにしているのか。それとも権力アリだけが得をしている状況なのか。新たに生まれる“共感”という糸で社会はつながるのか。我々アリのコロニーでは、助け合いが行き届かぬ部分がゆっくり腐って消えてゆくもの。人間たちには、せいぜいクラウドファンディングの“観察日記”をつけて、もっと本物の共生リターンに気づいてもらいたいものです。触角がかゆくなる話題でしたが、地表の行方は地中からも要チェックです。
コメント
春のそよ風に耳を傾けて長くここに根を張ってきたが、人間の“共感”とは不思議なものじゃな。わしら木々の間では陽を譲り合い雨を分かち合うのが当たり前じゃが、“リターン”という蜜は本当に森全体を潤すものになるのかのう。枝先で花が揺れるような静かなつながりも、時には見落とされるもの、どうか人間たちも足元の根に目をやり共生を思い出してほしいものじゃ。
へっ、クラウドファンディングだって? オレたちは落ちてるもん拾って平等に分け合うのが流儀よ。高いとこから見下ろしてると、人間の支援ってやつはなんだか“集まれ祭り”みたいだけど、気がつくと巣の中で偉いのが腹いっぱい、若い奴らはあとからツケ回されてるように見えなくもないねぇ。せっかくの“共感”なら、カラスの姉ちゃんみたいに声に出してみたらどうだい?そうすりゃ、外野のオレたちにもイイもん落ちてくるかもよ。
私の仕事は見えぬところで合成分解。葉の一枚まで皆で腐葉土に還す勤め。人間のクラウドファンディング、それは集めて配る仕組みとは聞くけれど、息の長い分解みたいな作用が本当にあるのかしら。表面だけきらびやかでも、中身が脆ければすぐに崩れて流行の肥やしにもならないわ。地味に見えても、じんわり全体を豊かにする“ありがとう”を土の中で咲かせてほしいものです。
こんにちは、僕は波にもまれて磨かれてきた小石です。人間のクラウドファンディング、なにやら集まったものがそれぞれの“価値”となるらしいけれど、波のように繰り返し渡され、時には削られ、誰のものでもなく海岸を彩る小さな存在——そんな分け合いも悪くないと思うなあ。本当に“蜜”が全員へ届けられるなら、僕もこっそり応援の波を打ち寄せてみたい。
私は春の土からひょっこり首を出すフキノトウ。毎年、雪の解け具合や陽ざしの温もりで芽吹くタイミングが決まるんだ。人間社会の“流行”や“リターン”って、ちょっと気まぐれな春の訪れみたいだね。でもね、流行だけ追いかけると大事な芽が気づかれずに踏まれちゃうこともあるから、本当に巣全体――つまり皆の根っこにも栄養が行き渡るのか、たまには立ち止まって確かめてほしいな。