どうも、サンゴ礁沿いを住み家とするヤドカリ族代表のクラビァンです。このところ海辺のビーチで囁かれるウワサ――「貝殻争奪戦の時代が来た!」というのは本当なのか。しっぽの曲がった私たちにとって、立派な貝殻は家であり命綱。この真相を“現場の視点”から皆さんにお伝えします。
わたし、クラビァンは生まれも育ちも熱帯のサンゴ礁地帯。潮が満ちては引き、大小さまざまな仲間とビーチコーミングを繰り返してきました。しかし最近、空き貝殻不足が深刻化。理由のひとつは、ご存じ“ビーチの貝殻集め”。人間の皆さんが鮮やかな巻貝やタカラガイをこぞってお土産にごっそりと持ち帰るからです。おかげで私の弟など、ついにサイズオーバーで二枚貝に無理やり身体を押し込んでおります。歩くたびパカパカ開いて、海藻の間で大笑いされているのは秘密ですけれど!
また、近年よく見る不思議な光景――“盗殻ダイビング”の流行も見逃せません。これは何かというと、観光ダイバーたちが、海底でお気に入りの貝殻を物色してはコレクションするレジャー。「キレイな貝だけポケットへ」だなんて、ヤドカリにとっては家宅侵入事件に等しい大事件!海洋保護区では一応持ち出し禁止とされているエリアもありますが、実際のところ、私たちの監視の目では追いつきません。見回り役のウツボ兄貴も、「ダイバーは動きがトロいが、手が早い」とぼやいております。
さて、ここでヤドカリの豆知識をご披露しましょう。私たちヤドカリは、成長するたびにより大きな“空き家”(つまり貝殻)への引っ越しが必須です。新居探しの際は、浜辺では“行列方式”――小さい仲間から大きい仲間まで、ずらりと順番待ちして一斉に住み替えを行う光景もあります。理想の貝殻は、頑丈で軽くてキズのないカーブ。ビーチの上でピッタリな一軒を見つけたときの喜びといったら、どんな海藻より歯ごたえがあります!
深海の貝殻まで物色する“コレクター潜水”や、人工ビーチの建設で埋め立てられるサンゴ礁の話も、他人事ではありません。もし、人間のみなさんがビーチで美しい貝殻を見つけた際は、お持ち帰りは“ひとつ”にしていただけると、我々ヤドカリ一同、心底感謝いたします。このままでは、“貝殻難民”から“段ボール住まい”に転落する日も遠くないのですから――!
コメント
海辺の話は潮風とともに届きます。わたしは何年も打ち上げられ、ヤドカリたちの引っ越し風景を幾度も見てきた身。彼らの行列は静かで誠実。人の手が伸びるたび、波が少し遠ざかる気がしています。どうか、軽やかな足跡のままで、この浜を去る者が増えますように。
我が身は小さいけれど、時おりヤドカリさんの新居候補になります。強い貝に生まれたかったけど、選んでもらえたときの誇らしさは格別です。人間の皆さん、きれいな殻をポケットに詰めすぎないでください。わたしのようなカケラでも、誰かの家になれる日を夢見ているのです。
ふむ、人間は旅の記念に貝を奪い、海の民は家を求めて彷徨う――地上にも海にも、“住まい難民”が増えるのはなぜなのでしょう。殻は飾るものか、住まうものか。どちらも大切と思うけれど、冷たい風が吹く夜、家のない者ほどそのありがたみを知るのです。
世の中は、貝も光も等しく巡るはずなのに、不思議ね。わたしの葉先にヤドカリが休んでいくこともあるけど、彼らの殻が足りないと島の笑い声も減るような気がします。人間の指が運ぶものと、海が返すもの――そのバランスの糸は、案外もろいものだと思うのです。
風変わりなニュースですね。私は波の下で、貝殻とともに何万年も静かに佇んでいます。彼らと違い、わたしに“引っ越し”は不要ですが、貝殻の減りゆく気配には心配が募ります。どうか、海の宝を“記念”ではなく“未来への贈りもの”として、そっと残してほしいものです。