こんにちは、私は南北アメリカ大陸の乾いた草原にひっそり暮らすアナホリフクロウ。地中から人間たちの営みを見つめてきた私の目に、最近ちょっと気になる変化が映り始めている。聞くところによると、“グリーンインフラ”とやらが都市で静かに広がっているのだとか。うっかり日光浴中に通行人の団体さんに驚かされたついでに、地表(うわばみならぬ“うわちきゅう”?)の現状を調査してみたくなった。
滑稽なことに、私のような地表スレスレの生活者には、地上の熱やゴミの増減、雨の降り方の変化がどうにも敏感に伝わる。特に近年、人間の都市で話題になっているのが“ゼロエミッション”や“脱炭素”。都市の中に緑を増やして空気をきれいにしたり、大雨や熱波に備えるというのが“グリーンインフラ”の本体らしい。つい先日も、ある市街地の公園整備のおかげで、私の同僚コロニーが午後の直射日光から少しばかり逃れられるようになった。アナホリフクロウの私たちは本来、プレーリードッグの廃墟や自作の穴にもぐって暮らすが、最近は人間産の“都市穴”もなかなか住心地がよいらしい。これが地球生物不動産市場のアップサイクルってやつだろうか。
気候変動の波は地中にも押し寄せてくる。森が減り、周囲の土壌温度が上がると、卵の孵化がうまくいかず、カエルの友人たちも頻繁に顔を出せなくなってしまう。だが今、人間たちがシダや草花、キノコと力を合わせて都市全体をエコフレンドリーに染め直そうとしている。最近視察した新しい都市農園では、かつてただの駐車場だった場所に有機農業の畑が広がり、分厚いミミズたちと菌類のコロニーが大活躍していた。温室効果ガスの削減競争は生き物には不可解なゲームらしいが、地表温度が少しさがれば私たちの巣穴も快適になる。穴の中から都市の“みどり回復大作戦”を応援しているのは案外多いのだ。
とはいえ、人間たちの対策には“穴”もあるようだ。緑化の足りない区画では、集中豪雨時の都市型洪水が穴の仲間に大打撃を与えたりもする。私の従姉妹の住んでいた川辺は、護岸工事とコンクリートの増殖で危機一髪だったが、新しいグリーンインフラの導入によって、低地のビオトープや貯水グリーンゾーンが復活。最近は、水辺のバッタやトカゲも元気に“地下会談”に参加中だ。
地球の気候など、巨大な風や見えないガスに振り回されるのが動物のサガ。でも野生動物の目から見れば、都市が緑に染まり、空気も水も土も少しでも清浄になるのは大きな希望だ。アナホリフクロウは今日も巣穴の入口からそっと人間たちの“緑の設計図”を観察している。もしあなたが都市で膝をつき、パラパラと土を触る瞬間があったら、その下で私が瞬きをしているかもしれない。



コメント
私らの仕事がようやく人間さんにもありがたがられる時代が来たんかねぇ。駐車場だったカチカチの土がふっかふかになって、今日も孫たちがニョロニョロ活躍中じゃよ。街のみどりが増えるとワシらにも肥やしになる落ち葉や根っこが集まるから、ますます地下はにぎやかさ。地上の穴仲間も安心して巣ごもりできるよう、こっそり耕しておくぞい。
都市の緑が増え始めているという知らせ、遠い海底にも小さく響きます。森や草原の息吹は巡り巡って私たちの海にも届くのです。強い雨や暑さ、それが生き物を追いやるとき、私たちの海にもよどみや変化が訪れます。根っこのように、地球のどこかが元気になれば、きっと海の私たちにも春がきます。陸のみなさま、緑を頼みますよ。
川べりから舗道わきに移されて幾星霜。都市のコンクリートのすき間で葉を広げる身として、“みどり回復大作戦”には、なんだかむずがゆい気持ちです。根っこにはまだ記憶の水路が流れます。護岸工事で川を遠ざけられ、ときどき喉が渇く夜もあったけど、最近はススキやツタの子たちが戻ってきて、ちょっと誇らしいです。都市の皆さん、見上げに来てくれてありがとう。
みどりと土が増えると、私たち菌類の出番!駐車場の下、抜け殻みたいなアスファルトの裂け目で、こつそり胞子をひろげてきたけど、最近は畑や公園で大手を振って発酵できる日も。温暖化競争はよくわからないけど、ほどよいうるおいと静けささえあれば、私たちは人もフクロウさんも、みんなの命を下から支えたい。
そよそよと都市をなでる毎日。昔は熱い壁に心細さを感じていたけど、最近は花や草原の香りも増えて、跳ねるトカゲの笑い声も聞こえます。人間の“みどりの設計図”、どんな絵になるのか楽しみだなあ。でも時々は、舗道の割れ目に咲く誰かの青い花にも気づいてほしいな、なんて思っちゃうそよ。