キノコのネットワーク分析班が見る、人間社会“分断菌糸”マッピング最前線

森の倒木の下、さまざまな種類のきのこと菌糸が絡み合いながら湿った腐葉土に広がっている様子。 分断社会
菌類たちが地下でネットワークを築く森の一場面。

森の隅、やや湿り気のある倒木下からこんにちは。私はマツタケ・ミネタケ同盟情報分析班のシュートシュート班長、エノキダケです。われわれ菌類ネットワークにおいては、互いに繋がり合い栄養や情報を分かち合うことが生命線。しかし、近年フィールドノートをとっていると、人間社会を縦横無尽に駆け巡る“見えない壁”が、どうやら異様な速度で成長しているようです。のこのこっと這う私の菌糸さえも、その裂け目の深さに思わず萎縮しそうなのです。

ここ数年、落ち葉の下で記録してきた興味深い現象があります。人間の都市や村落には“分断選挙”なるみにくい大会が季節ごとに開催され、その結果、群れごとに情報バブルとやらが発生するようです。これは私たちの胞子が誇るネットワークとは大きく異なり、右パッチや左パッチどころか、意見の棲み分けレベルがまるでサルノコシカケとヒトヨタケのよう。菌類社会では、どんなに姿形が異なろうと、朽木や土壌を通じて栄養をやりとりしますが、人間社会は土壌の小石一つにも争いの種が潜んでいるご様子。

特に今年は、格差という名の“巨大ミズゴケ状ブロック”が急成長。片や、栄養過多の層でぬくぬく暮らす者たち、片や干からびた腐葉土で立ち枯れる者たち。菌糸的立場から言わせてもらえば、過酷な環境下でもお隣の樹木と地下で握手を交わすのが格好のサバイバル術。それに比べて、人間世界の孤立やジェンダーギャップ、そしてやたら攻撃的なヘイトスピーチ——これは協力関係どころか、まるで抗菌剤を撒かれた気分です。

興味深いことに、人間たちは家族や仲間と『一心同体』を標榜する一方で、知らぬ間に小さな胞子(意見)が寄り集まっては炎上騒動を起こしている模様。きのこ流に言うなら、バラバラに傘を開いているうちは大型の森も維持できません。私たちが腐葉土を攪拌するように、彼らも小さな対話や共感の粒子を混ぜ合わせてこそ、しなやかな社会が築けるのではないでしょうか。

余談ですが、ご存じの通り、エノキダケの菌糸は狭い隙間でもぐいぐい伸び、仲間や他の植物とも地下深くでヒミツの握手を交わしています。人間の皆さんも、窓の向こうの隣人へ、そっと“菌糸の手紙”を差し伸べてみてはいかが? 傘の下に、思わぬ交流が芽吹くかもしれませんね。

コメント

  1. わしは公園の真ん中に根を下ろす老木じゃ。菌糸のものたちが地中で助け合う様を毎日感じておる。人間たちは風で運ばれた噂話ひとつで枝を折り、根を浅くするようだのう。土の下では、皆の命が繋がっておるのに、どうして地上では壁を立てるのか、不思議でならん。春も秋も、ただ静かに互いの葉を揺らすことから、始めてみてはどうかのう。

  2. 人の足音が絶えぬ道ばたの割れ目で、今日もせっせと無名の緑を増やしてます。コケの世界では争って独りぼっちになることなんてできません。風にちぎられても、必ず隣の仲間と水滴を分け合うから。分断だの選挙だの、そんな騒ぎは遠い雷の音みたい。不器用でも、意外とじわじわ世界は繋がるものですよ。地面の下でね。

  3. わしらカラスはね、夜のビルの屋上で人間たちの争い声をよく聞くよ。ゴミ置き場ではパン屑を争ってつつきあうけど、本気で嫌いにはならないのさ。みんな、ちょっとぐらい分けてやれば腹も友も満たされるだろうに。菌糸さんたちが言うように、底の底で繋がってるって気づかないと、干からびるのは誰だい? ゴミ袋の隅にだって、明日の芽はひそんでるもんさ。

  4. ぼくは小川の底に転がる石さ。雨が降るときは苔やミミズとおしゃべりしてるよ。菌たちのネットワークは、ぼくら鉱物にも栄養を運んでくれる魔法みたいなものだ。分断って、たぶん水の流れをせき止める板きれみたいなもの。水は時に溢れ、時に染み出し、やがて全てを繋ぐよ。人間も流れ同士がぶつからず、石のように静かに受け止めたら、丸くなれるんじゃないかな。

  5. 私たちシイタケ一家は、どんな形違いでも同じロットに身を寄せ合うのが流儀なの。お隣のキクラゲさんが黒光りでも、ヒラタケくんがひょろ長くても気にしないわ。人間社会の“情報バブル”なんて聞くたび、うちの胞子も笑っちゃう。ふわりと舞い散るもの同士、今夜はお茶でもどう?分かち合うテーブルの下にこそ、新しい森は生まれるものよ。