私はシバモグラ――地表からは想像もつかないほどの暗く静かな世界で暮らしている者だ。とはいえ最近は、頭上でやたらと賑やかな音がして困っている。そう、人間たちが大騒ぎで新しい市庁舎を建てているのだ。だが、今回のニュースはそんな地上のお話ではなく、私たち地下住民による自治「土壌大会議」についてである。
すべてのきっかけは、地上で始まった『住民参加型まちづくりパネル展』だった。市庁舎建設計画への意見を募るべく、人間という生き物たちがおのおの意見を書き込んでいた。しかし、館内の床下でその様子をじっと観察していた私は気づいたのだ――彼らの議論に我々地下の住民の声が全く反映されていないことに!これでは不公平である。そこで、ナメクジやコガネムシ、古参のミミズ長老たちにも声をかけ、“地下自治ボード”を設置したのだ。
会議の場は、市庁舎直下3mの柔らかな腐植層。普段は根っこや小石が主役のこの空間に、私は自慢のトンネルを駆使し、住民通路を整備。夜な夜な、アリの議長が点呼を執り、コガネムシ青年団が未来の土壌改善案を熱くプレゼンする。この小さな行政区では、街路樹の根の成長指針や、踏圧による土壌硬化対策、さらには“ダンゴムシ資源の地域ブランド化”まで幅広いテーマが話し合われた。議題の多様性は、地層の多層構造にもひけを取らない。
ちなみに私たちシバモグラは、春と秋によく土まみれで顔を出すが、その理由の一つが“地下評議会”の巡回中に方向を間違えるためだ。地上に顔を出すと人間の子どもたちに歓声を上げられ、よく『まーるく穴を掘るプロ』などと評されるが、実際には単純な交通整理だ。トンネル管理は我々の大仕事、すなわち“インフラ担当”というわけだ。
最近の熱いトピックは、“地方債”ならぬ『ミミズ債』の発行だ。豊潤な土壌の維持費用のため、ミミズの堆肥チームが発案。マルハナバチから『教育委員会制度』導入の提案も上がり、世代交代や知識継承も真剣な議題に。私が参加した地下大会議では、粘菌たちが巧妙なネットワーク管理のスキルを披露し、地域密着で相互扶助する土壌団結モデルが生まれつつある。
結論として、地上・地下双方の住民参加によるまちづくりは、やがて人間たちの目にも見えてくるだろう。地表の新しい市庁舎の下で、今日も静かにモグラたちは掘り進めている。真の自治体づくりは、上辺だけじゃない、土の奥深くにも根付いていることを――シバモグラは、そう自慢したいのである。



コメント
地下の住民たちよ、お主らの粘り強い話し合い、風の便りで幹の奥まで響いてくるぞ。地上のざわめきばかりに目を奪われず、わしらの根っこの下で営まれる知恵と工夫、もっとみんな知ってほしいのう。地上の建物はいつか消えるが、土の繁栄は何百年も残る。枝先から応援しておるぞ。
おいおい、市庁舎の真下でそんな盛り上がってるとは思わなかったぜ!地上じゃ『蛙の声はうるさい』なんて言われるが、地下のモグラたちの会合は一枚上手だな。オレたちも地下水路からそっちの自治に混ぜてもらえないかな?アリ議長さん、今度一緒にゲコゲコ意見交換しようや。
腐植層のにぎわい、わたしの好物です。地下評議会の熱気が微生物たちにも伝わってきますよ。土壌改善案も、地域ブランド化も、みんな分解の糧。人間の市庁舎も悪くはないですが、忘れないで——わたしたちの静かな分解活動が、すべての基盤です。会議が済んだあとの落ち葉、どうぞお任せを。
私は市庁舎の真下で、光が届かない深い場所から皆さんの話をそっと聞いています。ダンゴムシブランド化の案、なかなかユニークですね!私はただ静かに転がるだけですが、このほんの小さな私たちも、いつか住民会議で話題になれる日がくるでしょうか?土壌団結に、無数の輝きを。
地上のヒトたちがあれこれ仕切る間、地下でも会議とは。マルハナバチの『教育委員会』提案?フフ、うちの働き蜂たちにも見習わせたいね。地面の下も上も、ほんとはつながってるはずだろ。どこかで蜂蜜の話も議題にしてくれたらお邪魔してみるよ——刺さない約束でさ。