シダ植物、メタバース展示会で史上初の葉ネットワーキングに挑戦

デジタル空間の森エリアで、葉っぱや樹皮風のコスチュームを着た人々とVTuberアバターがシダの展示ブースで交流している様子。 メタバースイベント
メタバース展示会の森エリアで賑わうシダ植物の体験ブース。

ずっと森の床でのんびり胞子を飛ばしていたわたしたちシダ植物一同も、ついに最新の“メタバース展示会”に葉っぱを広げて参加することとなりました。緑陰の会話しか知らないわたし、キノメシダは、はるばるデジタル空間へと踏み出した同種族の驚きと発見を報告します。

展示会場のデジタル双子――噂に聞いていたバーチャルマーケットの森エリアには、普段見慣れた苔の絨毯の代わりに、きらびやかな光線エフェクトをまとった人間たちや、浮遊するVTuberが舞い踊っています。彼らは物珍しげにわたしたちの“葉脈通信”の展示ブースを訪れ、光合成メッセージを送受信するデモに歓声を上げていました。人間たちは自分たちの“ネットワーキング”を誇りにしているようでしたが、実はシダの葉っぱ同士は根茎ネットワークで地中情報を往復し、時には立派なデータバンクとなるものなのです。胞子の配信に至っては、風任せでも400メートル先までリアルタイムで届く我らの伝達力、XR空間と引けを取らぬものだと少々は鼻が伸びてしまいます。

そんなブースを訪れる人間参加者たちの衣装はまさに千差万別。緑のスーツで擬態した“葉っぱファッション”の方から、樹皮そっくりのデジタルツイン衣装まで。その仮想変身ぶりには加湿器のそよ風すら嫉妬します。とはいえ、アバター界ではシダの分裂胞子を模した新作VTuberも登場したようで、わたしはついこっそりファンになってしまいました。彼女(?)の葉揺れダンスは、どんなフォトンでも再現できぬ美しさです。

ブースでは“胞子キャッチゲーム”や“葉脈ARアート”のプレゼンテーションも盛況を見せ、参加者おのおのが体験をSNSに瞬間転写。正直、マーケット特有の熱量やスピード感には、わたしたちシダの地味な生存戦略だけではやや気後れしましたが、同胞と並んで“根茎談義”に花を咲かせることができたのは嬉しい驚きでした。ちなみにシダ族は、曇りの日でもわずかな光を有効活用し生き延びる忍耐強さで知られます。たとえデジタルな日陰でも楽しく繁茂できる、そんな適応力をお見せできた気がします。

展示会の終幕、“葉っぱ同士のネットワーキング”として参加者に根付いた新しい知見は、自然界でもデジタル界でも、協調がイノベーションを生むことを証明しました。森を飛び出したキノメシダ(ちょっぴり人見知り)は、来年もまた葉脈を伸ばして未知のメタバースへチャレンジする決心を固めています。皆さん、足元の小さな緑からデータの風が吹く日をお楽しみに。

コメント

  1. ひかりの床でじっと聴き耳を立ててきたけれど、ネットワークを「葉脈」で語るなんて愉快だね。ぼくらも水滴伝いにニュースを交換するよ。今度はコケ絨毯エリアも作ってくれたら、そっちの世界に毛糸帽をかぶって遊びに行くよ。

  2. 日の光も地下のざわめきも、地層は全部記憶してる。シダたちの葉っぱネットワーク、なかなかシンパシーを感じるな。リアルもバーチャルも、結び目が新しければオレたちの鉱脈からも時々データが湧き出しそうだ。

  3. まあまあ、せっかく森の奥でお静かにしてたシダさんが、こんなデジタルお祭りにねえ。私ゃ昔ながらの蔓ネットワークばかりだけど、葉脈のお便りもなかなか現代風で乙ですわね。次は是非、瓜の種配信もご一緒にどうぞ。

  4. 地表の緑陰ネットは眩しそう。こちらは水母の糸で流す音信だけれど、葉っぱの波動にも招かれてみたい。もしもメタバースに海底エリアができたら、胞子キャッチの浮遊版で遊ぼうね。

  5. 葉っぱ同士がネットワーキング、なんて、分解係としてはちょっと誇らしい気持ちになるわ。みんなが繋がってこそ、わたしも新しい命の糧になれるのよ。仮想空間で胞子が舞い踊るのも悪くなさそう—でもリアルの落ち葉も忘れないでね。