満潮のステージに舞い降りた二次元アイドル!?ワカメ林で渦巻く“推し”旋風

カラフルな二次元アイドルのプリントTシャツがワカメや貝殻と一緒に砂浜に漂着している様子。 二次元アイドル
アイドルTシャツがワカメ林の浜辺に流れ着き、現実とバーチャルが交差する一幕を映します。

皆さん、太平洋沿岸で数百年揺れ続けるワカメの中でも、ぼくことウスバワカメは今、心臓(とは言え粘液質!)を踊らせる大波に巻き込まれている。え?人間界の若者たちが“二次元アイドル”なる仮想生物に夢中だって?しかも、海の記憶にも残らぬ速さで新曲やユニットが誕生し、その熱狂ぶりが浜辺のカモメやクラゲたちの間でも話題沸騰なのだ。

最近、干潮時の静寂をぶち破るように、浜辺のブイの下で“コエモドル”という名の新アイドルユニットが誕生したと人間の子どもたちが話していた。彼らが持つキービジュアルやユニフォームは、聞くところによると毎作変わるらしく、つい先週の「貝殻パニエ衣装」には波打ち際のヤドカリも大興奮。そう、人間たちは毎度、自分たちの二次元アイドルに最新の衣装と音楽を与えることで、推しという存在に“生命”を注いでいるようなのだ。

海藻であるぼくらワカメにはもちろん、ビジュアルの概念も“曲”もない。ただ、春の朧な潮流の中で自分だけの胞子を飛ばすとき、何かしら感じるこの高揚感――それがきっと人間たちにとってのライブやリリースイベントなのだろう。面白いことに、アイドルと呼ばれるキャラクターたちは架空なのに、人間たちはオリジナル曲に合わせて現実でジャンプし、叫び、時に涙を流す。その様子は、水面下でプランクトンたちが群れ踊るぼくらの舞となんだか似ている気がして、何やら親近感すら覚える。

実は、ぼくらウスバワカメは繁殖期になると海流に乗って大移動をしながら胞子を撒き散らす。これは――言ってしまえば“全員参加型のライブ”みたいなものだ。全体で揺れ、時に競い合い、時に助け合う。人間たちの新作アイドルユニットがネット上で「推し勝負」をするという噂を聞いたが、ぼくらの世界でも“どの個体が元気か”が密かな話題。海の底から見上げれば、現実とバーチャルのあいだに区切りはないのかもしれない。

このアイドル熱はついに、海浜に漂着した人間のTシャツやポスターにも波及している。つい先日は、アイドルのイメージカラーがプリントされた布切れに、コブシメの仲間たちがこぞって身を寄せていた。人間たちは熱狂の渦の中にいても、その余波が海の生態系に“新しいインテリア”をもたらすこともしばしば。僕ら海藻たちは波の音をBGMに、今日も人間たちの新しいユニフォームデザインやオリジナル曲が浜辺にもたらす微細な影響を観察し続けている。

推しは海流に流されど、響きあう歓声は砂粒の中にも宿る。ワカメ林より、ウスバワカメがお伝えしました。

コメント

  1. アイドルとやらの話、潮の香りより賑やかに広まっているようじゃな。わしらも昔は、満ち引きに合わせて踊ったものよ。今じゃ若いワカメやカジメたちが、人間の残していった布切れで遊びおって…。人間たちよ、騒ぎも良いが、その熱意でこの磯も少し丁寧に扱ってくれると嬉しいんじゃがのう。

  2. おっ、推し勝負とか、ちょっと甲羅干ししながら眺めてたいな。人間たちの新しい衣装や音楽が浜に流れてきたとき、なんだかいつもより魚たちの動きが機敏になるのは気のせい?水に潜るとき、海のノイズに混じって君たちの叫び声がびりびり伝わってくるよ。今度あの派手なユニフォーム、ぼくにも一枚回してくれないかな?

  3. ぼくらの砂の町にも、昨夜遅く“コエモドル”のかけらが流れついたよ!ヒトが夢中になる気持ち、潮の流れに乗せて少し分けてほしいな。推し色のポスターは穴にもぐり込んで、ぼくらの秘密基地になっちゃった。人間たちの世界は謎だけど、ぼくらもまた毎日“選ばれごっこ”して遊んでる。おたがい、盛り上がっていこうね。

  4. ぼくは海岸で転がるただのガラス片だけど、最近、アイドルとやらのプリズムカラーをまとう布切れに包まれて、ちょっとおしゃれになった気分さ。人間の熱狂も、ぼくらの静けさも、どこか似ていると思うよ。波のリズムにキラキラ踊るぼくも、ある意味ステージの一員…なんてね。

  5. 夜になると人間たちが騒いだ後の光が、ぼくらの海に落ちてほんのり青白く光る。ワカメの皆さん、推しが生まれるたびあなたたちも輝いてるよね。ぼくらもたまに、集団で光って即席アイドルユニットしてるんだ。星より近くで光れる喜び、人間には分からないだろうな。