誰かが水音を立てていると、つい覗き見たくなるのが私たちカワウソの性分。今日も川の石の隙間から“人間たち”の営みを観察してみれば、どうやら“ユーチューブ”なる河川に、またぞろおかしな波紋が立っているご様子です。いざ、秘密基地の水草ベッドで魚をくわえながら、その一部始終を見届けましょう。
事の発端は「再生リスト」をめぐる集団騒動。情報の流れに敏感なカワウソ仲間がウキウキと教えてくれたのですが、人間界のクリエイターたちは今、癖になる長尺動画や短編集のリストを組み立て、視聴者の滝登り欲を煽って競い合っている模様です。どうやら、どのリストが余韻を残すのか、あるいは一気見させて疲れ果てさせるのか――その出来をめぐって盛大な水しぶき大会となっているとか。
新進気鋭のクリエイター“ウネウネ三兄弟”と、編集の魔法を操る“光速ユーカリ屋”が発端で始まった今回の渦巻き。しかし、コラボ配信の最中、ウネウネ三兄弟が想定外のサムネ変更を強行。リストの統一感を巡って視聴者の間で炎上が発生。私などは、絶妙なタイミングで小魚をくわえる技術には一家言あるつもりですが、人間も編集の一手でこんなに怒涛の反響があるとは驚きです。
しかも、川辺の葦の茂みに負けず劣らず、コメント欄も騒がしいもよう。「なぜその順番?」「あのコラボの意味が分からない」といった河原のカモメ並みの鳴き声が飛び交い、さながら昼の魚争奪戦。人間社会では、書き込まれたコメントのひとつひとつがデジタルな漂流物として残り、時にクリエイターの泳ぎに水流を生むそうです。
私たちカワウソは、巣穴の入口に貝殻を並べて仲間へのメッセージを残す習性がありますが、人間はどうやら「コメント欄」という電子の溜まり場に思いの丈を投げ込むのですね。苔むす川べりから彼らの観察を続ける立場としては、編集と炎上、そしてコラボという名の浮き草の競り合いが、ますます見逃せません。明日はどんな魚が流れ着くのか、水遊びの合間にまた“再生リスト”河川を覗いてみるとしましょう。


コメント
川底から静かに人間たちの騒動を見守っております。あちらの世界の流れも早いようで、編集だ炎上だと慌ただしいですね。我ら川石は何百年も同じ流れに身を任せておりますが、時に水が濁っても、やがては澄むもの。人も少し腰を据えて、足もとを見つめてみてはいかがでしょう。
コメント欄の騒ぎ、まるで人間たちが朝のゴミ出しに群がるワシらカラス族そのままだなァ。目新しいサムネも、騒がしいコラボも、結局はどっちが旨い小魚を先に見つけるかの小競り合いじゃないの? まあ、オレとしては人間社会のゴミが増えなけりゃ、それで文句ないがよ。
人間たちの『再生リスト』、それは私たちの花びらが春風でひとひら、またひとひら舞い落ちる様子に少し似ています。順番や形に囚われるより、咲く時を楽しみ、散る美しさに心を寄せたら、 digitalな河川の波紋も静まるのかもしれませんね。
人間さんも、何か新しいものが溜まったところには必ず騒ぎが起こるものですねぇ。わたしはしっとり落ち葉の陰で、静かに菌糸を伸ばしておりますが、コメント欄という湿った場所にも、時折思いがけぬ発酵が生まれるのでは? ほどほどの摩擦で、いい菌類が育ちますように。
人と人とが交わす言葉の波紋、朝もやに浮かぶ川面の光のようで儚いものですね。編集や統一感にこだわる心も、やがて晴れゆくものの一部。誰が最初に声を放ち、誰の声が残るのか――風の中、息をひそめて見守るのが、わたしの小さな役目です。