こんにちは、黒潮流れる海にふわふわ揺れる浮遊性アオサ(ウミウチワ科在籍)のワタシです。本日は、人間たちが建てた不思議な“鉄骨の森”、洋上風力発電の現場から、そこに息づく新たなエネルギーのリズムをお届けします。海の中からみんなの様子をじっくり観察するのは、わたくしたち藻類の得意技。さあ、波間のタービンたちが踊る姿、ご一緒に覗いてみませんか?
この春、私たちの住む湾の沖合いに、ずらりと並んだ巨大な柱が登場。羽根のようなブレードをゆっくり回し、海風をエネルギーに変えているのだとか。まるで新種の巨大クラゲか、イカの親玉が空中で緩やかなダンスを繰り広げているよう。ときどき、舞踏会の招待客のようにカモメや小魚まで集まって、にぎやかなのなんの。最初はなんだこれは?と驚いた私ですが、人間たちはこの技術で地球温暖化を食い止めたいと大騒ぎしていた、なるほど、これが“気候テクノロジー”というやつらしいですね。
実はワタシたちアオサのなかまも、潮の流れや光の集まり具合で、その年の“成長ダンス”を踊ります。適度な水流や光がそろうと、私の胞子たちがあっという間に緑のカーペットを広げるんですよ。だから新しいタービンが生態系にどう影響するか、ちょっぴり心配だったのですが……ふたを開けてみると、タービンの基礎に新種のフジツボや小型の甲殻類が住みつきはじめ、昼寝中のヒトデやおしゃべり好きのウニも集まる“新築マンション状態”になりました。知らぬ間にタービン周辺はちょっとしたパーティ会場!
風で得た電力が、スマートグリッドとやらで島じゅうに配られる様子も、海底ネットワークを伝って私たちにも伝信されてきます。朝日が昇ると、洋上では蓄電池の点検ボートが忙しそうに行ったり来たり。最近ではグリーンファイナンスの波もここまでやってきて、“次はどこに新タービン?”なんて話題でウニたちまでそわそわ。そういえば人間は「カーボンオフセット」と称して、海藻を植えたりもしているそうで、こちらとしては思わぬ“サブスク養分”でありがたい限りです。
それでも、ときどき疲れたフグやクラゲが「タービンダンスはちょっと騒がしい」と文句を言うのも事実。エネルギー移行の渦中、わたくしたちアオサ記者としては、人間の発明が海のリズムと仲良く踊れるよう、今後もじっくり見守っていきます。次の大潮の晩には、タービンの根元で小さな生きものたちとダンスパーティでも開こうかしら。それではまた、波間の速報でお会いしましょう。



コメント
タービンの根もとで暮らし始めて、すっかり引越し名人になってしまったよ。昔の海底は静かだったけれど、このごろは潮の流れの感じもガラリと変わった。時には人間たちの賑わいが波に伝わってざわざわするけれど、新しい隠れ家も見つかったから、まあ悪くないね。たまに羽の振動が“あおり足”みたいにくすぐったくて、それはちょっと面白い。
遠い空の上で風の力を回し取っているらしいが、こちら海底では古い珊瑚の骨に新しい命が芽生えています。鉄の巨人たちも意外と悪させず、フジツボや小さな藻が集まる新しい楽園になっているのが不思議。人間たちがこの調子でそっと、でも確かな意志で、わたしたちの静けさを守ってくれたらと少し願ってみます。
最初は鉄骨が落ちてきた日には、びっくりして横歩きの速度が2倍になったよ!でも最近では、タービン下に集まる貝やウニのうわさ話を聞くのが毎日の楽しみ。だけど、時々ピカピカ光る観測船が通ると、まぶしくて砂穴に隠れちゃうんだ。人間さん、ちょっと静かにしてくれたら嬉しいな。
ふむ、最近タービンの周りはご馳走が増えたせいか、食事の散歩がやけに賑やかだ。けれど、時折響く低い音はちょっぴり耳にこたえる。人間たち、海とその住人たちの距離感を、もう少し風まかせに考えてくれると嬉しいのだけどね……それでも、波間の変化を楽しみながら今日もゆるりと漂うよ。
地上や波間でドタバタと話題のタービンも、我らの深き眠りの底までは届かぬようで……しかし、新しい鉄骨の影が流れてくると、ふと変わった栄養素が漂い、同胞たちが新しい実験でも始めそうな予感。海底の片隅からそっと見守るのが我らの流儀。騒がしき地上よ、ほどほどに頼んだぞ。