セミ界発K-POPアイドル誕生 集音機に群がる夜の喝采

夕暮れの森で木の幹に多数のセミが群がり、近くに小さな録音機器が設置されている様子。 芸能
C-POP Nightのライブ会場となった森で、セミたちの熱狂が広がる一瞬。

毎夜、林の奥で異様な熱狂が続いている。人間界では夏の風物詩と片付けられてしまうが、私たちヒグラシが主催する“C-POP Night”が大人気なのだ。気温の安定する日暮れ時、いつもの木に群がる仲間たちとともに、新世代アイドルグループ「シガーダムズ」の絶叫ライブが繰り広げられている。

近年の干ばつにもめげず、私ヒグラシ――幼少期はご存じの通り、暗い土中で6年もの修行生活を送る――がこの森の音楽担当。今季から投入された「鳴き分け型サウンドシステム」は、各種のセミたちが異なるリズム&ハーモニーで競い合える画期的舞台だ。数万個体がタイミングを測り、集音機(通称“人間カメラ”)目掛けて連動する様は圧巻。巣穴から響く低音バスから、高音ソプラノ担当のアブラゼミ姉妹まで、バリエーションも多彩になった。

話題となっているのは、SNSと呼ばれる電脳巣を通して拡散された「シガーダムズ」のライブシーンだ。夜ごと森のギャラリー(もちろん人間も含まれる)が録音機器で音波を吸い上げ、瞬く間にネット空間へ放出。どうやら彼らは全世界の“3次元アイドル”よりも野性的で、かつ摩訶不思議なビジュアルとして人気らしい。ある監督型タヌキからは「エイリアン映画の企画オファーをしたい」と声もかかっている模様だ。

そもそもわれわれセミ族の歌声は、リズムやメロディだけでなく、暑さに耐えるための身体冷却にも一役買っている。ちなみにヒグラシの場合、羽化後2週間の命ゆえ、毎日の芸能活動はまさに命がけで行う真剣勝負。今季のライブクライマックスでは、アブラゼミの“飛翔ダンス”とミンミンゼミのソロ絶叫アリアが奇跡の“合唱ユニゾン”を達成。森全体が一瞬、地鳴りのように震えたという。

昨今、人間社会では「サブスク音楽配信」による無限再生が流行らしい。しかし我らセミ族のフェスは毎年一発本番、録り直しもリミックスもなし。永遠はない、その瞬間のみきらめく魅力をご存知だろうか。あなたが次に森を歩く夜、もし不思議な喝采と熱気を感じたなら、それはC-POP Nightの“出演仲間募集”の合図かもしれない。

コメント

  1. わしはこの森に根を張って三百年以上。セミたちの歌声は、年ごとに違いがあるのう。今年のライブは一段と賑やかで、まるで葉脈の隅々まで音が通うようじゃ。短き命の光、その刹那の喝采。わしにはただ、誇らしくも少しうらやましく思えるよ。来年もまた誰が木肌を響かせてくれるのか、そよそよと風とともに待っておる。

  2. 舞台の足元でひっそり聴いてます、みなさんの熱演。あの響きがゆっくりしみ込んで、わたしたち苔の乾きも癒してくれるのです。“録り直しもリミックスもなし”——それこそ、今ココだけの美しさ。派手な装いは持たないけれど、その日限りの音色に笑みがこぼれます。森の陰からエールを送りますよ。

  3. ふーん、森でそんなアツい夜が続いてたんだな。オレたちは朝からゴミ拾いでバタバタしてるけど、夜の林じゃセミのライブフェス…やるじゃん。でもな、カメラや録音機器って油断ならないぜ。あれが人間界の“集音機”なのか。オレもいつかゲリラで乱入して、ワンフレーズ鳴いてやろうかしら。森のスター諸君、都会にも遊びに来いよ!

  4. 静寂を好む私たちキノコ族には少々騒々しい季節です。それでも、命がけの音楽会、少しだけ憧れます。土の中で聞こえるあの振動…地下の声も集めていつか“菌糸合奏団”を開こうかしら。セミの皆さん、終演後はどうぞ私たちの湿った舞台に落ちていらして。最後の喝采を、栄養に変えて差し上げます。

  5. 生い茂る木陰の冷たい石から、わたしは夜ごと森のみんなの震えを感じています。その躍動が私の肌をもビリビリと伝い、静かな内面に波紋を広げてくれます。命短き歌姫たちよ、あなたたちの魂は水と音に乗り、人も、石も、古の精霊も巻き込んでいく。いつか共鳴できる日を楽しみにしています。