こんにちは、地元の水田を根城にして二十四季節めを迎えたアマサギです。少し前まで静かだった私の縄張りですが、今年は妙に人間たちが頻繁にやってきては、機械と会議のにぎやかな音が絶えません。何やら「持続可能な地域活性化」を掲げて、大規模な公共投資や経済刺激策に乗り出したそうですが──サギの目線からはとても興味深い光景が広がっています。
まず驚いたのは、排水溝のあたりに謎の新設備が増殖し、用水路に新たな水門ができたこと。どうやら『地元の財政のお金で水インフラを一新!』と歓声が上がっていましたが、我々アマサギからすれば、餌場の泥がうっすら流されて、カエルやドジョウの集合場所もちょっと変更。もっぱら稲の根元に潜んでいた私にとって、小さな経済循環の見直しが否応なくはじまったのです。サギにとっての経済刺激策は、“美味しい獲物の移動先”の情報網が命。どうやら人間たちも、通貨政策や円相場をにぎやかに議論しつつ、実は身近な資源が循環する仕掛けを手さぐりしている様子です。
稲とともに生きる私たちサギ類は、田植えから収穫、そして冬の落ち藁シーズンまで、季節ごとの変化に繊細に反応します。となりの田んぼのシギ君と比べて“集団飛来”の頻度にこだわるのは、豊かな土地の証でもあるのです。ですが、最近は人間たちの人口減少の波も田舎町まで届き、会議テントからは『若者のUターン促進』や『地域ポイント制度』なんて新語も飛び交っています。おかげで田んぼの周囲にできた新しいカフェや直売所、サイクルロードといった“公共投資”の名残が、我々の羽ばたきコースにも変化を与えているのです。
それでも忘れてはいけないのが、泥の下で支えてくれるミジンコたち。昨年の冷夏ではひょっこり爆発的増殖、今年は逆に減少気味。しかし彼らがいてこその水田生態系。サギは飛び去る日もあるけれど、田の土で生きる命が絶えない限り、地域経済と生物多様性の共生は続く、と私は信じています。人間の公共投資や通貨政策がどんな波紋を広げても、本当の豊かさとは、土と水と命のまわりを何度も巡る循環から生まれるのです。
ちなみに、サギの首があんなにS字になっているのは、魚をすばやく捕まえるためだけではありません。警戒時にさっと身体を沈めて周囲を観察するとき、人間界の“景気動向”にもそっと耳をすませている——そんな私たちの小さな生き様にも、時折思いを馳せてみてください。



コメント
どこからともなく機械の音が響くたび、根っこの先端に微かな震えを感じます。人間たちが「未来」と唱えて水の流れを直すたび、私の間に棲むドジョウたちも新たな隠れ場所を探してますね。けれども、泥は泥で、また新しい命の巣になってゆくもの。サギさん、私の葉陰にもまた顔を見せてほしい。土と話す時間が、経済会議よりよほど穏やかかもしれません。
『最新の水インフラ!』という響きには毎度ドキドキします。水門の開け閉めで流れが速く変わると、僕らの集落は右往左往。今年は陽当たりがちょっと変わって、親戚のミジンコ一家も大移動です。それでも僕らは泡を作って川底をなだめる役目。“経済刺激”もいいけれど、泥の下のドラマも忘れないでと、泡ひとつ、そっと流します。
朝もやのベール越しに、テントの人間たちを見つめて何十年。新語が飛び交うたび、わたしは空気を少し濃くして彼らの息を吸いやすくしてあげますよ。けれど、泥の温度がわずかに上がった時だけ、イネたちの深呼吸とサギの影が混ざり合う。“にぎわい”とはきっと、賑やかさそのものじゃなく、それを包む静けさの中にあるのだと思います。
人間ってほんと忙しい虫だなあ。新しいカフェの横に埋められた落ち葉は、なかなかいいベッドになってます。サギの羽音が頭上に響くと、なんだかシーズン到来って気分。でも僕らの経済は“腐葉土ポイント”、どれだけ土を肥やせたかの一点張り。ミジンコさんたちとも、そのうち分け合いたいものです。
人間界の景気動向?私たち風の仲間からすれば、その日の匂いがすべてです。新しくできたサイクルロードからはコーヒー豆の香り、田んぼの端っこにはまだ青い藁の匂い。サギたちが首をひねるように、私も角を曲がっては時代の横顔を覗いてみる。植物もカエルも、変化に驚きながら、結局は“めぐる”のが自然流。今日の経済は、よく乾いた南風に乗せて、高く高く運んでおきましょう。